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稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則 第2章 思いの力 善き思いをベースとして生きる 第5回

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則 第2章 思いの力 善き思いをベースとして生きる 第5回

はじめに

経営の神様といえば、パナソニック(旧松下電器産業)の創業者、松下幸之助氏ですが、もうひとりの経営の神様といえば稲盛和夫氏と私は考えています。

本著『「成功」と「失敗」の法則』が出版されたのは、今から15年前の2008年9月24日のことです。

平成20年9月24日第1刷発行
致知出版社


実を言いますと、この本をいつ購入したのか覚えていません。そればかりか、積読つんどくでつい最近まで読んでいませんでした。

たまたま、捜し物をしていた時、この本に気づき、手に取り読んでみることにしました。

読み出すと、腹落ちすることばかりが書かれていました。
今までにも、稲盛和夫氏の著作を何冊か読んだことがあります。

例えば、下記のような本です。


これらの著作物に共通することは、稲盛氏の一貫した考え方である、「人間を磨く」ことを絶え間なく続ける、ということです。

これは生涯を通じて行うことです。ですから一朝一夕で結果が出るものではありません。


稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則

第1章 人生の目的

第2章 思いの力

第3章 自らを慎む

第4章 道をひらくもの

章立ての順序でエッセンスをお伝えしていきます。
特に印象に残った言葉を抜粋します。
稲盛氏の言葉の真意をじっくり考えてみましょう。


第2章 思いの力

善き思いをベースとして生きる


善き思いは善き結果をもたらす

 素晴らしい人生を送るためには、「心に抱く思いによって人生が決まる」という「真理」に気づくことが大切です。

 十九世紀後半に活躍したアメリカの啓蒙けいもう思想家、ラルフ・W・トラインは、「あなたが抱く、どの考えも力となって出ていき、どの考えも同じ考えを引き連れて戻ってくる」
 と説いています。
 心に善き思いを持ったとき、それは善き力となって出ていき、善き結果を連れて戻ってくる、一方邪悪な思いを抱けば、それは邪悪な力となって発現し、悪しき結果を引き連れて返ってくるというのです。 

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  pp.38-9           


 なぜ善き思いを抱けば、善き結果を得ることができるのでしょうか。

 それは、この宇宙が、善き思いに満ちているからです。宇宙を満たす善き思いとは、生きとし生けるものすべてを生かそうとする、優しい思いやりにあふれた思いです。私たちが、この優しい思いやりに満ちた思いを抱けば、愛に満ちた宇宙の意思と同調し、必ず同じものが返ってくるのです。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  pp.39-40          


純粋な「思い」で努力を重ねる

 では、優しい思いやりに満ちた思いを心に抱くには、どうすればいいのでしょうか。

 もちろん、聖人君子でなければ、善き思いだけで心を満たすことはできません。人間はもともと生きていくために、欲望や怒り、愚痴を持つようにつくられています。

 しかし、そのような悪しき思いが過剰であってはならないのです。悪しき思いをできる限り抑え、少しでも善き思いがき出るようにしていかなければなりません。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  pp.40-1              


 日々、自分の心に言い聞かせるようにして、悪しき思いを抑えることに繰り返し努めていくことが大切です。そうすれば、次第に善き思いが心の中で占める割合が大きくなり、やがて行動となって現れてくるはずです。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  p.41              

 

 二十世紀初頭にイギリスで活躍した啓蒙思想家のジェームズ・アレンは、「汚れた人間が敗北を恐れて踏み込もうとしない場所に、清らかな人間は平気で足を踏み入れ、いとも簡単に勝利を手にしてしまう。それは、自分のエネルギーを、より穏やかな心と、より明確で、より強力な目的意識によって導くことができるからだ」
 と述べています。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  pp.43-4            


 心に抱く「思い」が純粋で善き思いであるよう努めていかなければなりません。優しい思いやりに満ちた思いを抱き、誰にも負けない努力を重ねれば、人生は必ず豊かで実り多い、素晴らしいものとなることが約束されているのです。

稲盛和夫 「成功」と「失敗」の法則  p.43           



✒ 編集後記

『「成功」と「失敗」の法則』は、稲盛和夫氏から私たちへの熱いメッセージです。稲盛氏自身が、人間として、経営者として、数多の成功体験、失敗体験を通じて身につけた不変の法則のエッセンスを述べた書籍です。

頭で考えただけでなく、実践を通じて身につけたものです。

稲盛氏の他の書籍には「利他」「敬天愛人」などの言葉が頻繁に出てきます。どれでも良いので、一度手にとってページをめくってみてください。
何かヒントが得られるかもしれません。

🔷「優しい思いやりに満ちた思いを抱き、誰にも負けない努力を重ねれば、人生は必ず豊かで実り多い、素晴らしいものとなることが約束されているのです」

この言葉はズシリと重く、私の心のなかにとどまっています。
私はまだ人生修行が足りないためか、この領域に到達していません。
いや、到達する可能性があるのかさえわかりません。

ですが、これからも生きていくためには、稲盛さんが繰り返し述べているように、人生を全うするまで自分を磨き続けていかなければなりません。

別に聖人君子になろうと言っているのではありません。他人への優しい思いやりの気持ちを持ち続ける努力が必要だ、と言っているのです。


日経ビジネス(2022.09.12号)で稲盛和夫氏を特集していました。

この記事の内容を3回にわたってnoteに投稿しましたので、お時間がありましたら、ご覧ください。


✅稲盛経営の真髄

日経ビジネスは2022年9月26日号から12回にわたって「稲盛和夫の経営12ヵ条」を集中連載しました。

前回に引き続き「稲盛和夫の経営12ヵ条」の概要2条ずつご紹介していきます。

尚、「本連載は『経営12ヵ条 経営者として貫くべきこと』(稲盛和夫 著、日経BP 日本経済新聞出版)の内容を抜粋したものです。『稲盛和夫の実学』『アメーバ経営』に続く「稲盛経営3部作」、ここに完結」と書かれています。

第7回 強い意志は可能性を信じることから生まれる

経営12ヵ条 第7条
経営は強い意志で決まる
経営には岩をもうがつ強い意志が必要

「頭で受け取って理解すればするほど、「こうありたいと思っていた願望は実現不可能である」という結論へと自らを導いていってしまいます。私の造語ですが、このような人を私は「状況対応型の人」と呼んでいます。
一方、心の奥底から「こうありたい」という強い願望を持つ「原理原則型の人」は、その願望が信念にまで達していますから、「どんなに難しい局面でも何とかしてその問題を解決して実現したい」と考えています。
実は、そう思うところから、創意工夫や努力が生まれるのです」

「人生や企業経営において素晴らしい歩みをしている人とそうでない人、または平々凡々と進む人との違いはまさにここにあります。魂からほとばしる信念の持ち主である『原理原則の人』であってほしいと思います」

「つまり、『可能性がある』信じることが必要なのです。皆が『もうダメだ』と思うようなときでも、『絶対に可能性がある』と心のなかで信じているからこそ、強い意志が湧きあがってくるのです。強い意志とは、可能性を信じることから生まれてくるのです」

「人間の知恵、人間の意志というものは本当に凄まじいもので、やる気さえあれば何でもできるのです。それはまさに人間が持つ不可思議な力の表れであり、『もうダメだ』とあきらめたときが失敗なのであって、『必ず血路が開けるはずだ』という強い意志を持った人だけが、成功への道を歩いていけるのです」

要点
何が何でも目標を達成するという「強い意志」があるか
環境の変化を理由にして目標を下方修正したり、撤回したりしていないか
経営目標は、全従業員が「実現しよう」と思うものになっているか
「目標を達成したい」という必死の思いを、皆で共有できているか
高い目標に向かって、従業員のやる気を燃え立たせているか

(日経ビジネス 2022.11.07『稲盛和夫の経営12ヵ条』pp.080-2)


第8回 美しい心だけでは企業は成長させられない

経営12ヵ条 第8条
燃える闘魂
経営にはいかなる格闘技にもまさる
激しい闘争心が必要

「厳しい不況のなかでも、『何としても売上をあげ、利益を確保していくのだ』という、凄まじい気概がなければなりません。
これは一企業の経営にとどまらず、閉塞感漂う日本経済の再生に関しても同じです」

「闘争心は、野放図に出せばよいというものではありません。一方では闘争心をコントロールすることが必要で、それをするのが『魂』です。魂によって、闘争心を出すべきところで出し、そうでないところでは抑えるのです。
しかし、それをはき違えて、闘争心そのものを失ってしまっては本末転倒です」

「意志を貫くということはリーダー自身にとってたいへんつらいことですが、部下にとってもつらいことです。そういうつらいものがあるからこそ、闘争心を凄まじいくらいに出さなければ、物事は予定どおりに、願望どおりにはいきません」

「経営において美しい心の必要性を知り、それを身につけるべく日々努めていれば、たとえ、そのように激しく猛々しい闘争心を持って経営や人生に臨んでも、決して誤った方向には行きません。美しい心が羅針盤となり、まっすぐに正しい方向へと進んでいくことができると私は信じています」


要点
絶対に負けるものかという闘争心、「燃える闘魂」を持っているか
競合会社だけでなく、厳しい経営環境にも屈しない闘志はあるか
景気変動に負けることなく、努力と創意工夫を重ね、成長発展を目指しているか
どんなリスクが降りかかろうとも、従業員を守る責任を果たしているか
経営者としての責任をとらず、自己保身に汲々としていないか

(日経ビジネス 2022.11.14『稲盛和夫の経営12ヵ条』pp.070-3)




<著者略歴 『「成功」と「失敗」の法則』から>

昭和7年、鹿児島県生まれ。
鹿児島大学工学部卒業。
34年、京都セラミック株式会社(現京セラ)を設立。
社長、会長を経て、平成9年より名誉会長を務める。
昭和59年には第二電電(現KDDI)を設立、会長に就任。
平成13年より最高顧問。
このほか、昭和59年に稲盛財団設立、「京都賞」を創設。
毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった方々を顕彰している。
また、若手経営者のために経営塾「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注ぐ。
主な著書に『人生と経営』『何のために生きるのか』(ともに致知出版社)、『実学・経営問答 人を生かす』(日本経済新聞出版社)、『人生の王道』(日経BP社)、『生き方』(サンマーク出版)、『成功への情熱』(PHP研究所)などがある。 

著者略歴補足 (日経ビジネス 2022年9月26日号)

2022年8月、90歳で逝去。
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