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『ザ・プロフェッショナル』(31)

『ザ・プロフェッショナル』
21世紀をいかに生き抜くか
ダイヤモンド社 2005年9月29日 第1刷発行

<目次>

はじめに 予言は自己実現する

第1章「プロフェッショナリズム」の定義

第2章 先見する力

第3章 構想する力

第4章 議論する力

第5章 矛盾に適応する力


第3章 構想する力

大前研一氏はメルマガ「大前研一 ニュースの視点」(2022/10/21 #954)の中で、「新しい資本主義 『人への投資』」を3本柱で推進」と題する内容で、次のように語っています。

少し長いですが、とても重要なことを語っていますので、省略せずに掲載します。

▼「人への投資」に必要な2つが欠けている
岸田首相は12日、
5年間で1兆円を投じる
「人への投資」について、
3本柱で進める方針を示しました。

これは転職者や副業をする人を
受け入れる企業への支援制度を
新設することや、
働き手のリスキリング(学び直し)に
取り組む企業への助成を
拡大することなどを
打ち出したものです。

労働移動の円滑化により、
賃金とやりがいを高めて
生産性を向上させ、
さらなる賃金上昇に繋げる考えです。

この施策が功を奏するためには
2つのことが必要なのですが、
どうも理解されていないように
思います。

ひとつは、
労働移動に政府が責任を持つことです。


企業が本気で生産性を改善したら、
労働力が余るのは必然ですから、
余剰人員の責任は
政府が持たなければ、
企業は本気で取り組んでくれません。

ドイツのシュレーダー首相が行った
アジェンダ2010という改革は、
就業意識向上や雇用の柔軟化など
労働制改革も目指したものです。

日本は企業に
雇用の維持を押し付けたままで、
企業の中で
リスキリングをさせようとするので、
企業の生産性向上も人材の開発も
うまくいかないでしょう。

もうひとつは、
21世紀に通用するスキルを
身につけさせることです


ハローワークの公的な職業訓練では、
溶接や左官、板金など、
いまだに明治時代と変わらない労働者像で
用意しているとしか思えないメニューが
そろっています。

また、
経済雑誌が提案するような
リスキリングの内容も、
20世紀後半から進歩していません。

当時はプロフェッショナルが
必要とされた時代
で、
「学び直す」と言えば
建築士や司法書士などの
「資格を取る」ということでした。

ですが、21世紀はAIの時代です。

資格を持った人材の価値は、
法律を知っていて
正しく判断、適用できることですが、
このような正解がある仕事は
どんどんAIに
置き換えられつつあります


既に宅建などは
資格を所持していても
月給が数千円上がるだけの価値に
暴落しています。

努力して取った資格が
二束三文の価値しかないのなら、
リスキリングは失敗と
言わざるを得ません。

政府が人材の放出に
責任を持つこと、
21世紀に必要とされるスキルを
学ばせること。


この二つが
成功のカギとなるわけですが、
そこで問題になるのが
「何が21世紀に必要とされるのか」
という点です。


このメルマガの中で特に重要なのは、「21世紀はAIの時代」であり、「正解がある仕事はどんどんAIに置き換えられつつあ」ることです。

そのためにどうすべきかといえば「政府が人材の放出に責任を持つこと、21世紀に必要とされるスキルを学ばせること」だということです。

問題は「何が21世紀に必要とされるのか」ということですが、残念ながらメルマガでは語っていません。

「BBT大学はまさにそのようなスキルを学ぶための大学です」

と語っているだけです。

「まず、自分の頭を使って考えなさい!」と大前氏が叱咤激励しているように感じました。

どうしても答えが見つからなければBBT大学で学びましょう、ということなのですね。



大ざっぱにいえば、現在のコア事業に三分の一、基礎的なR&Dに三分の一、残る三分の一を新大陸のルールで発想できるニュー・タイプの人材、言い換えれば、過去の成功体験や現状を「過去形」で語ることができる、とらわれない才能に投資すべきだと私は考えています

ジャングルを切り拓く構想力を育てることは、組織の遺伝子を組み換えることにほかならず、そのためには大胆な投資を意思決定しなければなりません。ただしこの投資は、必ずしも見返りが得られるとは限らないことを、あらかじめ理解しておくべきでしょう。

大ざっぱにいえば、現在のコア事業に三分の一、基礎的なR&Dに三分の一、残る三分の一を新大陸のルールで発想できるニュー・タイプの人材、言い換えれば、過去の成功体験や現状を「過去形」で語ることができる、とらわれない才能に投資すべきだと私は考えています

『ザ・プロフェッショナル』 大前研一の名言 1 〈667〉            


すべてが大きく変わっていく世の中で、変化に耐えうるには、いつも自分を客観的に見て、自分自身を変えていかなければなりません

すべてが大きく変わっていく世の中で、変化に耐えうるには、いつも自分を客観的に見て、自分自身を変えていかなければなりません。限界なき自己改革は、先見と構想のプロセスをたえず回し続けることで実現します。

 『ザ・プロフェッショナル』 大前研一の名言 2 〈668〉             
                        
           

  

激流のなかの本当に重要な力が何かを見抜いて、それを外挿して事業の構想を練るという作業が、いま最も価値の高いものであると考えられています

現在進行形の事象・変化には、必ず何らかの力が働いています。これをマッキンゼーではFAW(force at work:作用する力)と呼びますが、まさにこの激流のなかの本当に重要な力が何かを見抜いて、それを外挿して事業の構想を練るという作業が、いま最も価値の高いものであると考えられています

たくさんのシナリオをつくってはいけません。たくさんのシナリオから成功への必要十分条件を満たしているもの一つを選択し、タイミングよく実行することが必要なのです。

『ザ・プロフェッショナル』 大前研一の名言 3 〈669〉            

外挿:ある既知の数値データを基にして、そのデータの範囲の外側で予想される数値を求めること。 外挿 Wikipediaから





地震発生から1週間 福島原発事故の現状と今後
(大前研一ライブ579) 2011/3/19収録





大前研一 × 堀江貴文 「日本のテクノロジー」対談(完全版) 2013/12/18

       


➳ 編集後記

『ザ・プロフェッショナル』という本について

『ザ・プロフェッショナル』 はプロフェッショナルとは何か、プロフェッショナルになるために必要な考え方や行動の仕方、さらに何を身に着けなければならないかについて書かれた本です。

一言でプロフェッショナルと言っても、業界や職種によって求められる資質は異なるかもしれませんが、そこには共通点があるはずです。

そのあたりにも着目してご覧ください。

🔴「すべてが大きく変わっていく世の中で、変化に耐えうるには、いつも自分を客観的に見て、自分自身を変えていかなければなりません」

大前研一氏のメルマガの一部をご紹介しましたが、「21世紀はAIの時代」という記述を思い出してください。

「経済雑誌が提案するようなリスキリングの内容も、20世紀後半から進歩していません。
当時はプロフェッショナルが必要とされた時代」と書いています。

この本のタイトルは『ザ・プロフェッショナル』です。
21世紀はAIの時代で、プロフェッショナルが必要とされた時代ではないと言っているように聞こえます。

この本とメルマガでは異なる見解を語っていると考えられますが、この本が出版されたのは2005年9月29日です。一方、メルマガは2022年10月21日です。17年の歳月が経過しています。

この長年月のうちに大前氏が「すべてが大きく変わっていく世の中で、変化に耐えうるには、いつも自分を客観的に見て、自分自身を変えていかなければなりません」と『ザ・プロフェッショナル』の中で記しています。

大前氏の考え方に変化が生じたと捉えることができます。
ですが、答えのない問題には、やはりプロフェッショナルでないと解決できないと私は考えています。

AIは大量のデータを集積し、それを分析して答えを出します。言い換えればデータのないものから答えを出すことはできません。

人間は五感を駆使して、場合には第六感を使い、仮説を設定したり、新たな発見をしたりすることができます。真のプロフェッショナルであれば、そのレベルが高次であると捉えることができます。



大前氏はプロフェッショナルの中のプロフェッショナルと断言できます。



✅ 大前氏は『ザ・プロフェッショナル』の中でプロフェッショナルという言葉が安易に使われていることに対する警鐘を鳴らしています。

プロ中のプロの大前氏の言葉だけに非常に説得力があります。

世間一般では、本業としてカネをを稼いでいる人がプロで、本業としてでなく、カネを稼ぐことが目的でない人がアマという分け方がありますが、大前氏の考え方ではそういうことではない、ということになります。

道なき道、ルールのない世界でも「洞察」と「判断」をもって組織を動かしていけるのがプロフェッショナルです。

『ザ・プロフェッショナル』                         

大前氏は、パスファインダー(pathfinder=探検者、開拓者)という言葉をよく使います。

次回以降も大前氏の考える「プロフェッショナル」の概念とプロフェッショナルを育成することの必要性等をお伝えしていきます。

下記に掲載した書籍も知的刺激を受ける名著です。
『大前研一 新・経済原論 世界経済は新しい舞台へ』

本書は2005年3月に米国で出版された The Next Global Stage ----- Challenges and Opportunities in Our Borderless World (Wharton School Publishingより刊行) の日本語への翻訳である。発売以来ドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガル、中国、韓国、トルコ、アラビア、インドネシア、オランダなど世界の主要言語に訳されており、日本語版が最後となった。

大前研一 新・経済原論 世界経済は新しい舞台へ  吉良直人[訳]         
日本版へのまえがき p.v    

という本です。ページ数は全503ページという大書です。
ですが、濃い内容を平易な言葉で書き、具体例を豊富に掲載していますので、読みやすく理解しやすくなっています。訳者の力量も寄与していると思います。

大前氏のどの本でも知的刺激を受けますよ。
いずれの日にかこの本を取り上げることになるでしょう。

奥付を見ますと、次のようになっています。

2006年9月14日 第1刷発行
2006年11月1日 第3刷発行
東洋経済新報社
今読んでも全く古さを感じません。大前氏の考え方が先行し、時代が後からついてくると考えるのが、相応しいと思っています。




世界のメディアは大前研一氏を高く評価しています。

英国エコノミスト誌現代世界の思想的リーダーとしてアメリカにはピーター・ドラッカーやトム・ピータースが、アジアには大前研一がいるが、 ヨーロッパ大陸にはそれに匹敵するグールー(思想的指導者)がいない、と書いた。
同誌の1993年のグールー特集では世界のグールー17人の一人に、また1994年の特集では5人の中の一人として選ばれている。
2005年の<Thinkers50>でも、アジア人として唯一、 トップに名を連ねている。

大前研一 ニュースの視点Blog  大前研一について               


              



私が考える大前研一氏の考え方

🔶 大前氏は自分で考え出したことを自ら実践し、検証しています。仮説と検証を繰り返す行動の人です。

Think before you leap.(翔ぶ前に考えよ)という諺がありますが、Leap before you think.(考える前に翔べ)もあります。

あれこれ考えて、難しそうだからとか面倒くさそうだからやめようでは成長しません。
まず、やってみるという姿勢が大切です。


大前研一氏は、常に物事の本質を述べています。洞察力が素晴らしいと思います
私は、ハウツーものは、その内容がすぐに陳腐化するので読みません。


➔ 大前氏の言葉は、いつでも私たちが忘れがちな重要なことに気づかせてくれます。


🔶 大前研一氏と私は年齢がちょうど一回り(12歳)離れています。

しかし、その年齢以上に遥かに頭の中身と行動力に差がある、と大前氏の著作を読むたびに痛感します。

構想力、コンサルタント力、提案力、実行力……。

どれをとっても私が及ぶようなものは何一つありません。

それでも、いや、だからこそ大前氏の著作やメルマガを通じ、大前氏の考え方を素直に受け入れることにしているのです。

時には、かなり厳しい表現も見受けられますが、それは大前氏がそれだけ真剣に物事を考え、モノマネではなくオリジナルな提案をし、自ら実行しているからです。

そうした姿勢をいつも背中から見ていて、頼もしく感じ、(勝手に)この人に師事し、グールー(思想的指導者)と仰いでいるのです



🔶 大前研一氏と私とは年齢が一回り違います。大前氏は1943年2月21日生まれで、私は1955年6月30日生まれです。
大前氏は、私にとってはメンター(師匠)でもあります。もちろん私が勝手にそう思っているだけです。


🔶 大前氏は評論家ではありません。言うだけで自分では何もしない人ではありません。大前氏は行動する人です。だから大前氏の提言は説得力があるのです。


大前研一オフィシャルウェブ

このウェブサイトを見ると、大前氏の出版物一覧を見ることができます。
私は、大前氏の全出版物の半分も読んでいませんが、今後も読んでいくつもりです。
⭐ 出典元: 大前研一 オフィシャルウェブ



大前氏は1995年の都知事選に敗戦後、『大前研一 敗戦記』を上梓しました。




🖊 大前氏の著作を読むと、いつも知的刺激を受けます。
数十年前に出版された本であっても、大前氏の先見の明や慧眼に驚かされます。

『企業参謀』(1985/10/8 講談社という本に出会ったとき、日本にもこんなに凄い人がいるのか、と驚嘆、感嘆したものです。

それ以降、大前氏の著作を数多く読みました。

『企業参謀』が好評であったため、『続・企業参謀』(‎ 1986/2/7 講談社が出版され、その後合本版『企業参謀―戦略的思考とはなにか』(1999/11/9 プレジデント社)も出版されました。




🔶 大前氏は経営コンサルタントとしても超一流でしたが、アドバイスするだけの人ではありませんでした。自ら実践する人です。有言実行の人です。起業し、東京証券取引所に上場しています。現在は代表取締役会長です。


大前氏の本には、ものの見方、考え方を理解する上で重要な部分が多くあります。大前氏の真意を深く考えなくてはなりませんね。

⭐お知らせ⭐

前回の『ザ・プロフェッショナル』(28)までの元記事は7年前(2015.06.23)まではFC2ブログに投稿していました。

ところが、前回の編集後記で書きましたように、2015年6月に妻が体調不良になり同年8月にこの世を去りました。

そのため、深い悲しみが全身を覆い、心身ともに疲弊し、ブログを更新することができなくなりました。

というわけで、『ザ・プロフェッショナル』(29)からの投稿は書き下ろしになります。


✑ 大前研一氏の略歴

大前 研一(おおまえ けんいち、1943年2月21日 - )は、日本経営コンサルタント起業家マサチューセッツ工科大学博士マッキンゼー日本支社長を経て、カリフォルニア大学ロサンゼルス校公共政策大学院教授やスタンフォード大学経営大学院客員教授を歴任。
現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長、韓国梨花女子大学国際大学院名誉教授、高麗大学名誉客員教授、(株)大前・アンド・アソシエーツ創業者兼取締役、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長等を務める。 (Wikipedia から)


大前研一氏の略歴補足

大前氏は日立製作所に勤務時、高速増殖炉もんじゅの設計を担当していましたが、原発の危険性を強く感じていたそうです。

その後、世界一の経営コンサルティングファームのマッキンゼーに転職。
マッキンゼー本社の常務、マッキンゼー・ジャパン代表を歴任。

都知事選に出馬しましたが、まったく選挙活動をしなかった青島幸男氏に敗れたことを機に、政治の世界で活躍することをキッパリ諦め、社会人のための教育機関を立ち上げました。BBT(ビジネス・ブレークスルー)を東京証券取引所に上場させました。

大前氏の書籍は、日本語と英語で出版されていて、米国の大学でテキストとして使われている書籍もあるそうです。



⭐今までご紹介してきた書籍です。

















⭐私のマガジン (2022.11.06現在)

























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