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盛田昭夫 『21世紀へ』(001) 

盛田昭夫 『21世紀へ』(001)

技術者の井深大氏と営業の盛田昭夫氏は、二人三脚でソニーを育て上げたファウンダー(創業者)です。

盛田氏の『21世紀へ』は、21世紀への期待が込められた本です。
と同時に、20世紀末に不安を吐露している本でもあります。

「このままでは日本が危うい」と何度も指摘しています。

『21世紀へ』は、日本の将来に対する警世の書でもあります。

盛田氏は、21世紀の幕開けを見ることなく、1999年10月3日に
旅立ちました。

晩年、盛田氏は「21世紀を見たい」と強く願っていたそうです。

『21世紀へ』が出版されたのは、盛田氏が亡くなってから1年後の
2000年11月21日のことでした。

今回から盛田氏の言葉を紹介していきます。

あなたの人生に少しでもプラスになるヒントが見つかりましたら、
選者として大変光栄です。


『21世紀へ』 盛田昭夫
2000年11月21日 初版発行
ワック

目次
はじめに
第1章 経営の原則
第2章 人材の条件
第3章 マーケットの創造
第4章 国際化への試練
第5章 経済活性化の原理
第6章 日米関係への提言
第7章 変革への勇気
第8章 日本国家への期待
第9章 新世界経済秩序の構築
あとがき



第1章 経営の原則

「企業の本質は営利団体」(1964年)から


日米の比較

私流にいえば、向こう(アメリカ:注 藤巻隆)は社員の成績をエバリュエーション(評価)することが基礎になった経済体制であるのに対し、日本の多くの企業は社員の事なかれ主義を根底にした体制であり、極言すれば“社会保障団体”の観さえある。

アメリカでは、自由経済のなかの企業団体というものは「ギブ・アンド・テイク」の精神で、とにかくもらったものに値するものだけは返すんだ、というやり方が徹底している。

21世紀へ 盛田昭夫 001 pp.20-1



痛烈な皮肉

日本人は地位が高くなればなるほど働かなくなる、とよくいわれる。平社員から係長、課長、部長、取締役と位が上がっていくということは、だんだん神様に近づいていくんだ、という考え方だからである。

神様に近づくのだから次第に楽になるのが当たり前。会社にはゆっくりと出てきてよろしい、秘書が持ってくるコーヒーをソファでゆっくり飲む、昼間 からゴルフに行くというように、平社員のできないことが重役にできるのは神様に近づいたためである。

21世紀へ 盛田昭夫 002 p.22



「位」と「ポジション」

日本は「位」で会社が動き、アメリカでは「ポジション」で動くといってもよかろう。ポジションというのは、責任と権限の限界を示すもので、上のほうに行けば行くほど、当然大きな責任と権限があることになる。

21世紀へ 盛田昭夫 003 pp.22-3




盛田昭夫公式ウェブサイト



➳ 編集後記

『21世紀へ』を読み返して感じたこと

『21世紀へ』は、20世紀を全力で走り抜けてきた盛田氏が、このままでは日本がダメになるという危機感に、すべての日本人が気付いてほしいという気持ちがビンビンと伝わってくる本です。

盛田氏の「予言」はいみじくも当たってしまいました。
少なくとも現状においてですが。

この警世の書に書かれていることは多くが当たっています。
盛田氏の慧眼は本当に素晴らしいと思いました。

アマゾンや楽天でなくても、ブックオフ等で目にしましたら、ぜひ手に入れてください。なかなか見つからないかもしれませんが。

その内容の濃さと経験に裏打ちされた説得力のある文章に惹きつけられるでしょう。


🔴「ポジションというのは、責任と権限の限界を示すもので、上のほうに行けば行くほど、当然大きな責任と権限があることになる」

この意味を理解していない日本の政治家や経営者がいかに多いことかと嘆きます。

最近下火になってきた、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)による強制による莫大な寄付の問題や、東京五輪汚職問題などに元首相や多くの与党議員たちが深く関わってきたことは、「責任と権限」が十分に理解されていないからです。小さな責任と強大な権限では決してありません。

モラルハザード(倫理観の欠如)が甚だしいということです。
厚顔無恥と言っても良いでしょう。

犯罪を犯しても、権力者は無罪放免されると高をくくっているのです。
このようなことをしてきて、子どもたちが見てどう思うでしょうか?
「権力、カネ、名誉」を手にすれば、鬼に金棒?

人口減少に伴い、世界における日本の地位がどんどん低下しています。
これを何としても食い止めなければなりません。



盛田氏は、一点の曇りもなく、自分に正直で、言行一致した行動派の経営者でした。また、今ではなかなか見つからないダンディなジェントルマンです。表現がダサい? 古い?



⭐ソニーの現状 (ソニーグループの子会社)


ソニーを日本企業とは知らない人たちがいることに驚きました。
さらに、ここ数十年で業態を変えてきましたね。

ソニーは「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野」を扱う企業ということになりますが、半導体も生産していますし、得意な映像技術を深掘りしています。映画部門も持っていますね。

極論すれば、音と映像を2本柱にして、これらに関わる技術を開発し、横展開していると言えます。

ただし、ウォークマンが大ヒットしたあと、アップルの iPhone のようなスマートフォンがなぜ作れなかったのかと悔やまれます。技術力はあったはずです。目利きが及ばなかったのでしょう。

スマホがここまで世界中に受け入れられるとは想像していなかったのかもしれません。


⭐『21世紀へ』について

『21世紀へ』に関するブログを最初に投稿したのは、アメブロで8年前
(2014-06-14 22:30:07)のことでした。

note に再投稿するにあたって、大幅に加筆修正しました。

『21世紀へ』の「はじめに」の1行目から2行目にワック編集部による
この本の説明が書かれています。

本書は、井深大と並ぶソニー株式会社のファウンダー(創業者)盛田昭夫によって、1960年代から90年代にかけて執筆された論文の集大成である。

21世紀へ 盛田昭夫 p.1


今やソニーは日本を代表する世界的企業であることに異論はありません。



✑ 盛田昭夫氏の略歴

巻末の「著者紹介」から

盛田昭夫(もりた あきお)
ソニー創業者。1921年生まれ。大阪大学理学部卒業。
海軍技術中尉に任官し、井深大と出会う。
46年、井深とともにソニーの前身、東京通信工業を設立。
ソニー社長、会長を経て、ファウンダー・名誉会長。
この間、日米賢人会議メンバー、経団連副会長等を歴任。
海外の政財界にも幅広い人脈をもち、日本の顔として活躍した。
98年米タイム誌の「20世紀の20人」に日本人として唯一選ばれる。
99年死去、享年78。
著書に『学歴無用論』(朝日文庫)『新実力主義』(文藝春秋)
『MADE IN JAPAN』(共著、朝日文庫)『「NO」と言える日本』
(共著、光文社)等がある。


⭐出典元




⭐回想録


⭐プロフィール


⭐私のマガジン (2022.12.04現在)

























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