人材逃避 アベノミクスの陰で進む危機 2013.7.8 #14 2014-02-09 16:46:52
【『日経ビジネス』の特集記事】 #14 初出 2014-02-09 16:46:52 <バックナンバー>
⭐『日経ビジネス』の特集記事から、私が特に関心を持った個所や重要と考えた個所を抜粋しました。
⭐ 当面は、Ameba(アメブロ)に投稿していた記事を再編集し、加筆修正し、新たな情報を加味し、「バックナンバー」と表示し投稿します。
⭐ 1つのテーマについて複数回投稿している場合(ほとんどが該当します)には、1つにまとめて投稿します。タイトルの後の日付は雑誌の発行日で、最後の日付は投稿日を表わしています。
⭐ 一方、新規で投稿した記事については、異なる壁紙を用意し、本文内に「タイトル」と「雑誌発行年月日」を表示します。
再投稿することにした経緯
再編集して再投稿することにした理由は、次のとおりです。
自分が当時どんな記事に興味があり、どのような考え方をしていたのかを知りたいと思ったからです。
当時の自分を振り返ることで、当時と現在で考え方は変わったか否か、あるいは成長しているかを確認したいと思いました。
記事データは当然古くなっていますが、本質的な部分は必ずあるはずで、しかも普遍性があります。その個所を再度学んでみたかったのです。
さらに言えば、『日経ビジネス』のバックナンバーをご紹介することで、この記事に目を通していただいたあなたに何らかの有益なヒントを提供することができるかもしれない、と考えたからです。
「私にとって、noteは大切なアーカイブ(記録保管場所)です。人生の一部と言い換えても良いもの」だからでもあります。
(プロフィールから)
2022年6月13日現在、週刊誌『日経ビジネス』を購読していませんが、新たに電子版セット(雑誌+電子版)を「らくらく購読コース」で今年の7月以降に定期購読する予定です。
日経ビジネスの特集記事 #14
人材逃避 アベノミクスの陰で進む危機 2013.7.8 1/3 2014-02-09 16:46:52
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忍び寄る人材流出危機
「『現場での仕事が大事なのは分かる。でも、少しでも早く世界で通用するスキルを身につけたい。 3年も店舗にいたら自分の市場価値がなくなる』」
こう語ったのは、20代前半の中国人女性、王静さん(仮名)です。
彼女は春先まで日本では知らぬ者はいない大手流通企業に勤めていました。
入社式での社長の 「多様な価値観が会社を成長させていく」 というメッセージを聞き、大きな希望を持って働いたそうです。
ところが現場は理想とはかけ離れたものでした。
鬱積した不満がこうした言葉になって現れたのです。
グローバル競争に勝ち抜くため日本企業は、優秀な外国人を積極的に採用する動きが活発化しています。
もはや日本人従業員だけではやっていけないところまできているのです。
しかしながら、王さんのように不満を抱えた外国人が日本企業に見切りをつけて、
他国の企業に就職するのは稀有なケースではないそうです。
一度日本企業に就職した外国人だけではなく、日本の大学で学んでいる外国人留学生は、日本企業に魅力を感じず、日本企業に就職する意思はないそうです。
「早稲田大学国際教養学部のアリャファル・サラさん(イラン人、24歳)は現在3年生で、国際マーケティングを専攻している。
今秋から就職活動を始めるが、日本企業は念頭にない。留学生の先輩などから日本企業の『悪評』を繰り返し聞かされているからだ。
曰く『仕事一辺倒でプライベートの時間が全く取れない』 『外国人に対していじめがある』 …」
サラさんは母国語のペルシャ語の他にアラビア語、英語、日本語に堪能ということで、その能力を活かしキャリアを積むために 「男女の区別なく昇進できる外資系企業への就職を希望している」 そうです。
翻って日本の学生で、サラさんのように明確な目的意識を持って就職活動をしようとする人はどれだけいるでしょうか。
「有名企業ならどこでもいい」 「どんな仕事でも就職できさえすればいい」 といった学生、そしてその親が多いような気がします。
たいへん重要な問題は、 「外国人の採用が困難になれば、日本企業は必要な人材の確保に一層苦労することになる」 だけでなく 、「日本人の流出さえ絵空事とは言えなくなっている」 ことです。
総務省の統計(2011年10月から2012年9月)によると、「日本人の入国者数は88万7670人。 出国者数は91万828人。差し引き、2万3158人のマイナスだ」
この現象は、この年だけのことではなく、「総務省がこの統計を開示し始めた2007年以降、流出超過傾向が続いている。 年代別に見ると、出超分の約8割を20~30代の若者が占める」。
実例を上げましょう。
「ウェブ会議システムを開発・販売するベンチャー企業『ブイキューブ』の間下直晃社長(35歳)も日本を後にした1人だ」
「同社はこの分野の国内シェアで2007年からトップを走り、2012年に顧客数を4000社まで増やした。数年内に上場することも検討している」
「本社は日本に残してあるが、間下社長自身はシンガポールを拠点に東南アジアを飛び回っている」
日本国内のシェアの大半を抑えた同社は、すでに東南アジア諸国を見据えて活動拠点をシンガポールに移しています。
日本ではなくシンガポールで上場を検討しているのかもしれません。
次回は、人材流出は日本だけではなくシリコンバレーでも起こっている実情と「チリコンパレー」(?)についてお伝えします。
日経ビジネスの特集記事 #14
人材逃避 アベノミクスの陰で進む危機 2013.7.8 2/3 2014-02-09 17:19:01
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悩めるシリコンバレー
前回は日本から人材が流出している実態をお伝えしました。
今回はシリコンバレーでも人材の確保が難しくなっている実態と「チリコンバレー」に
ついてお伝えしていきます。
日経ビジネスの現地取材による生のレポートです。
米国といえば、ITに強い「スタンフォード大学」や、常に世界の大学ランキングでトップグループにある「ハーバード大学」、「MIT(マサチューセッツ工科大学)」、2年連続でランキングで1位に輝いた「Caltech(カリフォルニア工科大学)」などがありますね。
彼らなら就職は容易ではないかと考えられますが、必ずしもそうではないようです。
「米国にはアイビーリーグを代表するハイレベルな大学・大学院があり、世界中から優秀な人材が集まる。 だが卒業した若者たちが必ずしも米国で働けるとは
限らない。 移民行政が硬直的、官僚的に運用されているからだ」
ビザを申請しても登録上限があり打ち切られることがあることと、ビザが取得できても有効期限は最長で6年間です。
米国で長期間働くにはグリーンカードが必須ですが、手間がかかりいつ認められるか予想できないそうです。
そのため「先が読めないことから米国を去る人材が後を絶たないのが実態だ」ということです。
採用する企業から不満の声が漏れてきます。
スマートフォン向けのアプリなどを開発している米バンジョーの創業者であるダミアン・ハットンCEO(最高経営責任者)は次のように憤っています。
「優秀なエンジニアを雇うのに、これまで最大で7万5000ドル(約732万円)を人材紹介会社に払った。 これだけでエンジニア1人分の年間給料になるじゃないか。 全くばかげた出費だ」
米国は人材流出の事態を深刻に受け止め、早速対策を講じ始めています。
「米国では『STEM人材の不足が課題』と長らく指摘されてきた。 STEMとは科学、技術、工学、数学の頭文字を取った造語だ。 オバマ政権はこの分野の大学教育を受けた卒業生を100万人増員するとしている。
STEM分野の教育を米国で受けた外国人を移民として受け入れる政策を見直す必要がある――」
チリコンバレー
シリコンバレーならぬチリコンバレーがあるそうです。
南米チリにある「シリコンバレー」で「チリコンバレー」と呼ばれているそうです。
南米チリの首都サンティアゴにある「チリコンバレー」。
ここでの公用語はスペイン語ではなく英語だそうです。
なにしろ50カ国を超える国から渡ってきた世界の起業家が働く職場だからです。
チリは米国のように世界の秀才が集まる教育機関があるわけではないので、チリ政府が音頭を取り、「2010年、チリ発のイノベーションを起こすための起業家プログラム『スタートアップチリ』 を開始した。
シリコンバレーを目指す若者たちの 『横取り』 も狙っている」そうです。
チリ政府の意気込みが伝わってきますね。
「スタートアップチリへの応募件数はこれまでに7200件以上、審査に通った案件は約700に上る。選ばれた案件のうちチリ人によるものは約2割にすぎない。
残りの8割はすべて海外からの案件だ」
ただコンテストをやるだけでは海外から人は集まらないため、チリに来てもらうためのインセンティブを用意しているそうです。
「まず無償資金として4万ドル(約390万円)を提供する。 さらに1年間の就労ビザを与える。共用オフィスを無料で利用できるようにもする。 加えてベンチャーキャピタルを紹介するほか、サンフランシスコで投資集めのイベントも開く」
その代わり、起業家には義務も課すことを忘れてはいません。
なかなか抜け目ないですね。
「起業家に課している義務は最低6ヵ月間、国内に滞在すること。 そして地元の起業家を相手に講演するなどして自分の経験をチリに 『還元』 することだ」。
最終回は、「脱『人材ガラパゴス』へ」をお伝えします。
日経ビジネスの特集記事 #14
人材逃避 アベノミクスの陰で進む危機 2013.7.8 3/3 2014-02-09 17:39:37
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脱「人材ガラパゴス」へ
前回は、シリコンバレーでも人材確保が難しくなっている現状と「チリコンバレー」についてお伝えしました。
最終回は、安倍政権の成長戦略の一環として外国人に活路を見出す考えがありますが、どのようにして実現するのかについて考えていくことにしましょう。
日経ビジネスが鋭く切り込みます。
参議院議員選挙が7月21日に迫っています。
現時点で、大勢は決しています。
自民党の圧勝、民社党の惨敗、維新の会の敗北……。
焦点は自民党単独で過半数の議席を確保できるかどうかでしょう。
参議院議員選挙で勝利を収め、衆参両院でのねじれ解消により、公明党との連立政権は盤石になります。
本当にこれでいいのでしょうか?
健全性を保つ2大政党制というものは終焉を迎えたのでしょうか?
日経ビジネスは、「(日本経済が)本格回復するには何が必要か。 究極のカギは人材にある」と断言しています。
日経ビジネスは、もう一歩踏み込んでこのように述べています。
「時代は変わりつつある。もはや過去の延長線上ではやっていけない。 激しい環境変化は、積極的に外国人人材を活用する 『脱・人材ガラパゴス』 を日本に求めている」
現在、日本の労働力人口は減少の一途を辿っています。
具体的な数字を見てみましょう。
「日本の労働力人口は1999年の6793万人をピークに減少に転じた。
労働政策研究・研修機構の 『慎重Bシナリオ』 は2030年には5900万人まで減少すると予測している。言うまでもなく少子高齢化の影響だ。
これは国内市場のサイズだけでなく人材供給源をも縮小させる」
そのような事態が想定されるならどうしたら良いのでしょうか?
「イノベーションを喚起するためにも外国人の頭脳を利用するべきだろう。
(中略)
世界をリードするイノベーションを生み出さなければ日本の存在感は低下するばかりだ」
外国人を企業が採用する際に問題となるのは、今まで日本人に適用されていた人事制度ではうまく機能しないことです。
「日本企業と外国企業ではキャリアパスが大きく異なる。個人の成長に重きを置く外国人は、自分の仕事内容が 『キャリアアップにつながらない』 と感じるとあっさり辞める。日本式のやり方に手を加えずに外国人を採用しても定着しない」
今後、人事面での取り扱い方によって日本人従業員と外国人従業員とで軋轢が生じることは、容易に想像できます。
このバランスをどのようにしてとるのかが、大きな課題となってくるでしょう。
日本の学生にとって、就活は日本人同士だけではなく、外国人との競争も加わり、さらに厳しい時代に入っていると言えそうです。
日経ビジネスは、次のように結論を述べています。
「日本経済を復活させるための最大の要因が人材であることは論をまたない。
世界の人材獲得競争は激化している。 『ガラパゴス』 のまま独自の道を歩むのか。
人が行き来する活力ある国になるのか。日本は岐路に立っている」
🔷編集後記
この元記事を投稿したのは8年前です。 当時と現在を比較してみても、状況は一向に改善していないと感じています。
たまたま、今年7月に参議委員議員選挙 (参院選) が行われます。 岸田政権の支持率が想像以上に高く、このままでは参院選は自民・公明両党の圧勝に終わりそうです。
ですが、本当にそれでいいのでしょうか?
ドル高円安、物価高、防衛費の大幅増額、重くのしかかる税金、一向に増えない給与……。
国内外から人材、人財を雇うには業界水準よりも高い給与を払う必要があります。
ですが、どれだけの企業が高い給与を払い続けられるでしょうか?
払い続けられないため、副業を認める企業が増えています。
ただし、副業が上手くいく人は良いですが、皆が皆うまくいくとは思えません。
国内でダメなら海外でと考える人は一部はいると思います。 その人たちにはエールを送りたいです。 数多の試練に立ち向かう姿勢は潔いです。
初回にお伝えしたブイキューブは、2013年12月10日に当時の東証マザーズに上場しています。
つまり、日経ビジネスがブイキューブに関する記事を掲載してから5カ月後に日本で上場しました。
現在では、東証プライムに市場変更しています。
人材流出を防ぐために取り組むべきことは? 原因と対策を詳しく解説
このウェブサイトを見ると、下記のように書かれています。
人材流出の原因 下記の3つが主な原因のようです。
✅ やりがいが感じられない
✅ 報酬が見合っていない
✅ 企業に将来性がない
人材流出を防止するために企業ができること
✅ 社員にとって納得感のある人事評価制度を整える
✅ 「働きやすさ」や「働きがい」を整える
⭐ 出典元: ENGAGE 採用ガイド 2022-05-13
しかし、制度の変更や働きやすい環境を整えるのは容易なことではありません。
時間も手間もコストもかかり、しかも一度できたからといってそれで終わりではなく、継続して改善していくことが不可欠だからです。
労使ともに忍耐強く取り組まなくてはなりません。