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「シン・ウルトラマン」に秘めた中だるみを防ぐコツ

映画「シン・ウルトラマン」の放映時間はテレビ版5話分で、5話分の禍威獣・外星人が登場しています。
とはいえ、ザラブ・メフィラス・ゼットンと理知的な話をずっと続けては、光る銀色の巨人の闘う姿を見に来た大多数の人たちにとってはつまらないものに他なりません。
が、映画「シン・ウルトラマン」ではこれを防ぐためにさまざまな対策を講じており、かなり中だるみを緩和しています。これについてお話ししましょう。
※以下ネタバレパーティーです。

名作だが中だるみで有名な「ターミネーター2」

実は中だるみは20世紀の映画作品では名作でもかなりありました。

業界で最も有名な中だるみは1993年放映の「ターミネーター2」です。名作なのは言うまでもないですが、戦闘から離れ乾燥地帯での親戚とのつかの間の休息からのダイソン家でのダイソン説得という休息にすぐ再突入しています。この休息2個分がかなり尺をとっており、観客が飽きやすいシーンのつながりで有名です。

もっとも広い意味での親族愛を描いた作品として30年も語り継がれる名作となるわけですが、それを描くにしても乾燥地帯での親戚とダイソン家のどちらかで良かったはずです。というか、この後作られた映画作品では中だるみして観客が飽きるくらいならどちらかで良いという発想で、このつかの間の休息シーンは1つに絞っています。

つまり休息を2つ連続でとると中だるみし飽きやすいのでつかの間の休息は1つまで、これは21世紀の映画業界の鉄則です

「シン・ウルトラマン」での中だるみ防止策

とはいえ、冒頭でお話しした通り「シン・ウルトラマン」はザラブ・メフィラス・ゼットンと理知的な話を続けています。が正直なところ、観客の90%以上を占める未熟な人たち(作品を尊重して「未熟」と記します)にとってはこれらの理知的な話は休息に映ってしまいます。

もっとも映画業界ではつかの間の休息は1作品1つまでという鉄則が不文律に設けられましたが、原作の1966年テレビ版ウルトラマンの本質である理知的な話を削ったらそれはウルトラマンではありません。

そこで脚本を手掛けた庵野秀明氏はこの休息1作品1つ原則の原義を調べたのです。それが先程述べた1993年「ターミネーター2」であり、そこで得られた知見はつかの間の休息を2つ連続で取ると中だるみになるが、1つずつ分けて間に「見どころ」を入れたら中だるみしないのではないかと考えたわけです

そこで映画「シン・ウルトラマン」では90%以上の観客が休息と感じる複数の理知的な話の合間合間に「見どころ」を設けることにより、中だるみを防いでいます。

「にせウルトラマン」の戦闘シーンに手を込んだ

そもそも2022年映画「シン・ウルトラマン」のザラブパートは、ほぼ1966年のテレビ版「ウルトラマン」とは変わりありません。ただ描写についてはかなり手を加えています。

実際に映画「シン・ウルトラマン」では、「にせウルトラマン」を弱くしたままホシノくん、いや浅見を遠くまで飛ばしたり、「にせウルトラマン」をスペシウム光線でその場に転がすのではなく横須賀から横浜みなとみらいのクイーンズスクエア?まではるか遠くまで吹っ飛ばしたり、移動での飛行でかっこいいウルトラマンを表現しています。

1966年テレビ版と比べ大幅に手の込んだ映像とすることで休息を2つ連続して取らせないようにしているのです。

極めつけは「巨大フジ隊員」

そして最大の見どころは「巨大フジ隊員」です。「巨大フジ隊員」を超えるインパクトを持つ怪獣(?)は56年経っても出ていなません。

結果、「シン・ウルトラマン」を飽きさせない最高の立役者は浅見=長澤まさみであると言えるでしょう。


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