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【シン・ウルトラマン】なぜ「にせウルトラマン」は弱いのか。そこに共通する56年前からのメッセージ【1300字無料】

2022年5月13日より劇場公開を開始した「シン・ウルトラマン」。
本来ヒーローとにせものの戦いはほぼ互角でヒーローが競り勝つ場合が多いですが、「にせウルトラマン」はウルトラマンと比べると非常に弱く、ウルトラマンが圧勝します。
なぜ「にせウルトラマン」は圧倒的に弱いのか、考察していきます。
※画像はパブリックドメインで転載フリーのものを使用しています
※以下ネタバレパーティーです。

本来、「にせもの」はヒーローと互角のことが多い

ヒーローもののシリーズで中盤になると出てきやすいのが「にせもの」です。

ヒーローはたいていの敵はたやすく倒します。が、もし自分の性能を(少しでも)コピーしたものが現れるとどうなるのか。そんな視聴者の興味本位からヒーローそっくりのにせものを中盤で出すことはかなり多くなっています。

そして「にせもの」はヒーローの能力を何かしらコピーしていることから、ヒーローの能力を使ってヒーローを襲います。ヒーロー危うし。が、なんだかんだ(結局本質的なところで)何とかヒーローが競り勝ち、平和が訪れます。これはヒーローものではもはや定石です。

が、「にせウルトラマン」は1966年テレビ版ウルトラマンでも、2022年映画「シン・ウルトラマン」でもウルトラマンと比べてかなり弱い。これはファンの中でも有名な話です。

「にせウルトラマン」とメフィラスを比べる

ではなぜ「にせウルトラマン」は弱いのでしょうか?映画「シン・ウルトラマン」でにせウルトラマンに扮した異星人ザラブと、その後に出た異星人メフィラスを比べましょう。

まず後から出たメフィラスは人間社会を理解しており極めて社交的で、自らの意思・考えも矛盾なく理知的です。もっとも飲み屋では神永=ウルトラマンと仲たがいはしましたが、それぞれの意見があることをお互い広く認めています。

その後巨大戦に入り「かっこいいウルトラマン」と「みにくいメフィラス」が闘うわけですが、メフィラスやや優勢で光線戦もしとめる一歩手前まで行きます。もっともゾーフィを見つけたメフィラスにより理知的に停戦したわけですが、停戦判断も含めメフィラスがウルトラマンをやや上回っていたと言えるでしょう。

なおメフィラスは1966年テレビ版ではミミズクのようでかわいいですが、「シン・ウルトラマン」ではかなり醜い姿にしています。これもみにくくても理知的であれば、中身がきちんとしていればウルトラマンと互角以上に戦えることを示すためにあえて醜くしたのでしょう。

ではザラブはどうでしょうか。ザラブはウルトラマンに扮しますが、似ているのは外観だけで(映画「シン・ウルトラマン」ではかなりウルトラマンに似ていて見分けがつきにくい)、立ち振る舞いも異なりスペシウム光線も打てず、理知的さにも欠けています。

特に理知的さがかけているのが明瞭なのが、内閣に「ウルトラマンの秘密を教える」と来たにもかかわらず、光線がスペシウム131であるなどの知識を言っただけで大臣たちの「なぜウルトラマンが地球に来たのか」「なぜウルトラマンは人と一体化するのか」などの思考力を問う質問に答えられていなかったことに表れています。

つまりザラブを通して映画で言いたいのは、「理知的さは知識を覚えるだけでは習得できないこと、知識だけ覚えても弱いこと」を意味しています。これを体現する形として、ザラブが扮する「にせウルトラマン」は圧倒的に弱いのです。

もっとざっくりいうと、外見より中身がはるかに大事と言っているのです。

「にせウルトラマン」に込める56年前から続くメッセージ

2022年に公開した映画「シン・ウルトラマン」は、56年前に制作した1966年放送のテレビ版「ウルトラマン」の公式オマージュです。

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