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【読書感想】熊谷達也『七夕しぐれ』

2017.07.16、読了。
熊谷達也『七夕しぐれ』

小学5年生の和也が引っ越した土地で感じた違和感や疑問を発端に、心を許せる友達と出会い成長していく物語。著者本人の自伝的小説なのかなと思うところが多々ある。自伝的でなければこんなに少年の心の機微を描けるかなと思うくらい細かい揺れを捉えている。

被差別部落、いじめ、現代ではなく昭和というところが生々しくも懐かしくもあった。昔は、確かに先生はもっと権力があって、絶対的だった。その絶対的存在を初めは認識していた主人公だが、ある出来事を切欠に、教師よりも自分の正義を貫いていくようになる。主人公の和也に「正義」を教えたのはストリッパーの安子で、その安子のような人間に出会えたことも和也の人生の分岐点となっていたように思う。

この作品は、昭和を通った大人に読んでもらいたいなと思う。和也は苛められてはいるが、イジメを俯瞰に見て分析している。大人の和也が語ってるので真理を突く表現もあって、読み応えがあった。個人的に1番なるほどと唸った一部を以下に引用する。 

『いじめと差別とは、現象的に似たような場合でも、まったくの別物で、差別にはそれを容認する社会的な背景や力学が働いている。(中略) 差別される側には差別される理由を解消する手立てがふつうはない、というより、最初から取り上げられているのだから、ある意味、どうしようもない』

いじめも差別もなくなることはないだろう。敢えて戦う必要もないのかもしれない。ただ、和也のように自分の正義に従って行動した結果、目に見える物は変わらなくても人間は変わる。

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