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「夜が明ける」を読んで虚無感に襲われた話

西加奈子作の小説「夜が明ける」を読みました。

主人公がテレビの制作会社に就職する、その仕事内容の書き方がとてもリアルで

ディレクター歴40年の父曰く
「めちゃくちゃちゃんと取材してる。読んだら?懐かしいんじゃない?」
とのことでした。

メインの題材は、「日本の貧困問題」
かなり社会派な小説です。

読みましたところ

暗い。

非常〜〜〜〜に暗い。

家庭の貧困、子供の貧困、若者の貧困、シングルマザー、パワハラ、セクハラ

あらゆる社会問題を提起している小説でした。

小説としては面白く、一気に読みましたが、非常に暗い読み物でございました。

そして制作会社の実情を書いたその箇所箇所が、
あまりにリアルで色々と思い出しました。

編集所をハコと呼び、
ロケ場所の下見をロケハンと呼び、
ロケを収録したデータは命よりも大事だと教わり、
ADが体を張ってロケハンをし、
ロケが想定通りに進まなければADのせいにされる

超リアル

また小説のテーマ的にも明るい書き方ではないので
読み終わった後のわだかまりも大きく、
正直、読んだことを後悔さえしました。

会社を辞めて半年も経ち、毎日これでもかというほどのんびり生活しています。

贅沢な人生の使い方だなと満足しています。

今となっては理解不能なレベルで仕事ばかりしていた4年間は、
私の中でもはや青春の1ページ、ならぬ100ページくらいには濃く、
キラキラしている日々として存在していました。

が、

「夜が明ける」では
働き詰めの主人公は体を壊し、精神を病み、仕事を辞めざるを得ず、生活保護を受ける

なんともハッピーエンドとは言い難い終わり方で。

私は、言いようのない虚しさに襲われました。

私が必死にしがみついていたものは何だったんだろう?
時に暴言を吐かれ、時代的に暴力はなかったものの、
なんの嫌がらせかと思うような仕事を、眠い目をこすって裁き続け、
時に眠さで立ったまま寝落ち、トイレで寝落ち、
座ったら寝るので立ったままキーボードを叩き

この4年間で何人の先輩や同僚が、心を病んで辞めていったか、
何人が飛ぶように辞め、私は何人分の穴を埋めて来たのか

辞めなかったらすごいのか?勝ちなのか?
志半ばに会社を辞めた私は負けたのか?

会社を辞める前の数ヶ月、頭痛で吐きながら仕事をしていた私は
でも、きっとあれが限界だった
当時番組異動して、徹夜も少なくなっていたはずなのに、
ずっと体調が悪かったし
すごい勢いで痩せていってた

辞めて正解だったはずだけど、
なんで今更虚しくなるのか、わからない

読んだ直後から頭痛と涙が止まらない

原因がわからない

私がプライドを持ってやってきた仕事の世界は、
こうして客観的に見てみると、
こんなにも屈折していたのかと
思った、のか、

青春のようにキラキラフォルダに保存されていたものに
黒い墨を落とされたような気持ち
なのか、

誰かにわかって欲しいとか共感して欲しいとか思うわけじゃない
そもそも分かって欲しいとか思うにはおこがましい程
言葉にできない

虚無感?

私はきっと感受性が強いんだな
小説読んだだけでこんなになるなんて、
いいのか悪いのか
考えなくてもいいことを考え始めてしまった気がしてます

「夜が明ける」は元気な時に読むのをおすすめします



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