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サクラノ草紙@西湘納言

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書き散らしたエッセーやコラムをまとめました
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#コラム

音楽の贈りもの

音楽の贈りもの

Fleetwood Mac そして誰かに贈られたものについて。

ロックが多くの分岐点を経て個性ごとのジャンル名が発生し始めたころの話を書いたことがある。
どのジャンルも好きで、なんかこう芸術的?な曲、キャッチーな曲、やかましいなコレ的な曲までわりと分け隔てなく聴いていた。つもりだが洋楽に傾きがちだったかなと今振り返るとそう思う。

というわけで(どういうわけで?)
音楽はすてき。
ありがとうフリ

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ツバメのいた夏・4

ツバメのいた夏・4

四羽のヒナが無事に巣立ち、勝手口周辺は静かになった。
ペアの初来訪が五月の上旬。抱卵開始はおそらく六月に入ってすぐのころ。ヒナの顔を確認したのが六月半ばで、巣立ち完了が六月末である。おおむね二ヶ月のつきあいだった。
勝手口外の掃除をして、営巣中に散ったと思われる落とし物などを片付ける。不要物を一時保管しておくコンテナと壁の隙間から、孵卵一号のカラと思われる白い破片が出てきたりした。この期に及んで欠

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ツバメのいた夏・3

ツバメのいた夏・3

——野生のいきものとヒト。両者のあいだに、『通いあう心』もしくは『相互理解』はあると思いますか——

我が家で育雛中のツバメペア、危険警報を出して、「人間がすぐにドアから出てくるかどうか?」をテストした可能性について、半信半疑のまま二日ほど経過した。
ペアが育雛開始してから巣の観察は遠慮していたけれど、ドアを開けてわたしが巣を見ていても、親鳥はまったく気にしていない。加えて、ヒナもべつだん怖がった

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ツバメのいた夏・2

ツバメのいた夏・2

巣作りを終えてすぐに産卵抱卵かというと、そんなことはないらしい。

けっこう長い期間、ツバメペアは飛んだり巣に戻ってきたり、フェンスに止まったり鳴き交わしたり追いかけっこしたりしていた。朝から晩まで遊んでばかりいるのである。でもたぶん、遊びながら、周辺の環境——育雛に必要な食料がじゅうぶん得られるか、危険はないか、雨風の際の飛行ルートをどうするか、などなど——を、確認していたのだろう。

毎日見て

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ツバメのいた夏・1

ツバメのいた夏・1

今年、梅雨入りのすこし前に、ツバメがきて軒下に巣をかけた。

この壁際にツバメが営巣するのは久しぶりだった。何年か前に巣をかけたペアの子孫だろうかと思いつつ、すこしく複雑な思いでいた。

懸念があった。
我が家はここ数年、ツバメの営巣には不向きな物件になっていたからだ。
ひとつは、我が家と燐家の庭はマダムミケこと、TNR猫のテリトリーであること。燐家では丁寧に世話してくれているが、マダムミケは半ノ

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笑うお見合い

笑うお見合い

*歴史物だと思って読んでください。

昭和のころのお話。

母と父は私を見合いで結婚させようと考えていたらしい。

条件はたったひとつ、『資産家であること』。
彼らのお金に対する情熱はなかなかのものだった。

親の意向をうけてわたしは二回、お見合いしましたが。

どちらも、不成立でした。今思うとけっこう面白かったので、書いてみますね。

で、さわりといっちゃなんですが。

 中3の冬、父がわたしを

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あのころ庭で

あのころ庭で



ぬこの保護みたいなことは細々と、もう三十年ほどやってきましたが…

長年ひとりで活動してきて、べつにたいしたことはなくて、怪我したぬこや弱ったぬこを病院へ運び込んで、治ったらもといた地域に返すとか、たまたま居着いちゃったので飼いますかねとか、まあゆるゆるっとしたぬこづきあい、そんなもんでした。

が、介護戦が一段落した数年前の荒れ果てた庭で(介護中は庭どころじゃなくてぼろぼろに荒れ放題)、今年

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約束

約束

 出かける=散歩。という生活をしている。遠くへは行けない。体調のよいとき、天気のよいとき、時間の都合がつくときを選んで、近隣を歩き回っている。

 わたしの住まいから、歩いて十分ほどのところに稲荷神社がある。小さいながら地域の鎮守でもあり、夏祭りのときはここから子ども御輿が出発する、いわば祭主だ。その稲荷社の、十坪あるかないかという小さな境内に、銀杏(いちょう)の切り株がある。写真の銀杏は切り株か

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