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メモ 中国軍の戦力をデータで把握する(2022年版)

大学の授業で中国の軍事力に関するトピックを取り上げたときに、2022年版の『ミリタリー・バランス』から中国軍の戦力に関する基礎的なデータを使ったので、それを記事にまとめて公開しておきます。今の中国軍の能力を考える上で参考になると思います。

2022年に出版された公刊物のデータであるため、測定の時期が2021年である点に注意してください。中国の軍拡は今も進行中であることから、かなりの項目でデータの更新が必要な状況ですが、現時点で確定値を個別に示すことが難しいため、そのままにしています。また、『ミリタリー・バランス』それ自体の信頼性を保証するわけではないこともご了承ください。

軍事学では戦略次元で適用されるネットアセスメントの方法、あるいは作戦次元で適用される戦役分析の方法で使用できる程度の粗さのデータをまとめました。装備品の内訳に関しては省略したので、個別の装備品の性能を考慮に入れる必要がある戦術次元の運用解析には適していないと思います。

戦闘支援、後方支援の装備品は相当省略しました。正規軍のデータに限定し、準軍隊である人民武装警察部隊(500,000名)と中国海警局(524隻など)の装備も省いています。戦時に動員される海上民兵に関しては量的データが記載されていません。これらの限界があることを踏まえた上で、参照してください。

基礎国力

人口 1,405,791,350人
国内総生産 16兆9000億米ドル(113兆人民元)
一人当たり国内総生産 11,891ドル

人員

現役兵員 2,035,000名
 陸軍 965,000名
 海軍 260,000名(海軍陸戦隊 約35,000名)
 空軍 395,000名(空挺旅団6個)
 戦略ロケット軍 120,000名
 戦略支援部隊 145,000名
 その他 150,000名
 準軍隊 500,000名
予備役兵員 約510,000名

装備

戦略ロケット軍
 大陸間弾道ミサイル 116基
 中距離弾道ミサイル 110基+
 準中距離弾道ミサイル 194基
 短距離弾道ミサイル 189基
 地上発射巡航ミサイル 108基
海軍(核戦力)
 原子力潜水艦 6隻
その他
 人工衛星 161基

陸軍
 主力戦車5,400両
 水陸両用装甲車両 750両
 装甲戦闘車 1,000両
 歩兵戦闘車 7,200両
 装甲兵員輸送車 4,350両
 自走砲 2910両
 牽引砲 1,234門
 自走迫撃砲 1,250両
 多連装ロケット 1,640基+
 迫撃砲 2,800門
 上陸用舟艇 255隻
 攻撃ヘリコプター 300機+
 多用途ヘリコプター 208機
 地対空ミサイル 614基+
 対空火砲 7,396両/門

海軍
 潜水艦59隻
  原子力潜水艦 6隻(戦略ミサイル軍既述)
  攻撃型潜水艦 46隻
  弾道ミサイル潜水艦 1隻
 水上艦艇 86隻
  航空母艦 2隻
  巡洋艦 3隻
  駆逐艦 36隻
  フリゲート 45隻
 哨戒艦艇・沿岸戦闘艦艇 約196隻
 機雷敷設艦艇・掃海艦艇 57隻
 強襲揚陸艦 9隻
 揚陸艦 49隻
 上陸用舟艇 60隻
 海軍航空機 446機

空軍
 爆撃機 176機
 戦闘機 517機
 戦闘機/攻撃機 972機+
 攻撃機 140機
 電子戦機 21機
 地対空ミサイル 832基+

データの内容は以上の通りです。注目すべきは、その規模の大きさでしょう。人員単位で比較すれば中国軍の規模はアジアで1位であり、インド軍(2位)の1,460,350名、北朝鮮軍(3位)の1,280,000名、パキスタン軍(4位)の651,800名、韓国(5位)の555,000名を大きく上回っています。

これだけの軍事力を維持できているのは、中国の経済成長によるところが大きいといえます。中国の国防支出はアジア全体の42.5%を占めており、しかも支出の規模は2020年から2021年にかけて10%以上増加しています。現在、中国では防衛産業基盤が急拡大している点にも注目する必要があり、党が主導する形で防衛関連企業の改革が進められているところで、これは2023年に完了が予定されています。

出典

International Institute for Strategic Studies. (2022). The Military Balance 2022, Routledge.

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