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論文紹介 自民党の派閥政治は閣僚人事にどのような影響を及ぼしているのか?

内閣とは、首長である総理大臣と、その他の国務大臣などで組織された合議体であり、国の行政に関する職務を処理する権限を持っています。

内閣の閣僚を任命する方法は政治制度によって異なります。例えば、米国のような大統領制では国民から選挙で直接的に選ばれた大統領が閣僚を任命できますが、英国のような議院内閣制では議会で過半数の議席を得た政党(あるいは複数の政党)の党首でなければ、首相として閣僚を任命することができません。

日本は議院内閣制なので、議会で過半数を制する政党の党首でなければ閣僚を任命することはできない仕組みになっています。議院内閣制が政治的に興味深いのは、閣僚の人事が議会の状況によって左右されやすいことです。例えば政治学では、複数の政党で議会の過半数を制し、連立を組む場合、議席保有率に比例して各党に閣僚ポストが分配されるという仮説があり、その妥当性をめぐってさまざまな議論が重ねられています(ガムソンの法則)。

日本のケースだと長年にわたって自民党と公明党が連立を組みながら政権を維持していますので、閣僚ポストは自民党と公明党の議員に分配されてきました。しかし、自民党は一枚岩の政党ではありません。自民党は単一の政党というよりも派閥の連合のような政党であり、閣僚ポストの分配は党内の派閥政治の影響も受けることが分かっています。

今回は、自民党の派閥政治が閣僚人事に与える影響を分析した研究論文を取り上げ、その研究成果を紹介してみたいと思います。日本政治を理解する上で自民党の派閥政治がどれほど重要な意味を持っているのかがよく分かる内容ではないかと思います。

Ono, Y. (2012). Portfolio Allocation as Leadership Strategy: Intraparty Bargaining in Japan. American Journal of Political Science, 56(3), 553–567. doi:10.1111/j.1540-5907.2012.00586.x

閣僚ポストの分配をめぐる自民党内の駆け引き

日本では長年にわたって自民党の党首、つまり総裁になることは、日本の総理大臣に就任することを意味してきました。しかし、総理大臣になれたからといって、閣僚を任命する人事権を自由自在に使えるわけではありません。

これは自民党の総裁という地位を維持するためには、党内の総裁選挙で当選する必要があるためであり、有力な派閥の票がどうしても必要になるためです。つまり、政治的な駆け引きとして、自分が総裁になることに賛成する派閥に対しては、支持の見返りとして閣僚ポストを分配することが必要なのです。

著者は1960年から2007年までの間に自民党の総裁が属した派閥にどれほどの閣僚ポストが分配されているのかを調査しました。すると、ガムソンの法則をそのまま適用できないパターンがあることが分かりました。

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