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君はアイドル

#2000字のドラマ

2000字かなり超えてしまいましたが😇

リンリンのモデルは、TravisJapanのゲンゲンこと松田元太くんです。

トラジャは箱推しで、みんな可愛くて大好きなのですが、一番性欲強いのはゲンゲンだと思ってて、こんな感じで年上の女性と軽率に遊んでたらやべえなあ、ショックだけどしてて欲しいっていう意味分からない感情と妄想を殴り書きしました。笑

こちらがゲンゲンです。彼の顔に置き換えて読んでみてください。ぐふふ…


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絶対にリンリンだ。どう考えてもそうだ。今日会ったら、私が気づいていると伝えよう。彼のためにも。

「まきちゃんお願い、他に語れる人がおらんのよ」
そう言って同期の東ゆりえは推しへの愛を会うたびに私に語ってきた。
「はい出た、またリンリン」
「そんなこと言わんといてー。リンリンの動画今回もえげつないから見てほしいのよ」
リモートワーク終了後に私たちはちょくちょくオンラインで軽く酒を飲み交わす。東は勝手に画面共有にしてリンリンの動画を見せつけてくる。
「先輩、疲れてませんか。ハイ、これよかったら飲んでください」
栄養ドリンクのプロモーション企画動画にて、リンリンこと須崎凛人が所属するアイドルグループ「トワイエ」が「栄養ドリンクでキュンキュン選手権」と題し、メンバーそれぞれが栄養ドリンクにまつわるキュンキュンするシチュエーションを動画にして発表していた。
「先輩、いつも本当に、仕事できるし、この前も僕助けてもらって、すごいなって。憧れてます。でも、さっきトイレの前で、なんか寂しそうな顔で携帯見てて‥気になっちゃって。それで、これ飲んだら元気出るかなって」
リンリンが笑顔でカメラに目線を向けてくる。可愛いだけでなく、目元のちょっとキリッとした感じが男の子っぽい。魅力は理解できる。
「それと‥おこがましいかもしれないけど、僕でよかったら話し聞くので、先輩を元気付けられたらいいなって」
照れたようにリンリンが笑う。こっちまで恥ずかしくなる。
「ほらーーー見てよもうリンリンが尊いよ!!見るたんびに悶えてる!!」
東が画面共有を終了し、ひっくり返ってソファでバタバタしている様子が映る。元気で何よりだ。
リンリンの良さには私も共感するけれど、所詮はアイドルである。作られたキャラクターなのだ。プライベートも窮屈で、自分らしくいられる時間などあるだろうか。二十歳そこらの男の子なんて、遊びたい盛りだろうに。などと現実的なことばかり考えてしまうタチで、のめり込めないのでアイドルにハマったことはなかった。


そんな私が、まさかリンリンと交流を持つことになろうとは。

「この漫画好きなんですか?」
漫画や小説の感想を呟くことをメインにしているSNSのアカウントに、突然メッセージが飛んできた。そのアカウントは「ユウ」と名乗り、同じように漫画や小説が好きなようであった。作品や作者にまつわる記事にイイネを付けるなどしていて、時折自分の感想を述べたりもしていた。サブカル界隈にありがちな自己顕示の様子も見られず、どんな人物なのか透けて見えてこなかったが、まあ楽しく暇つぶしができればどんな相手でもよかった。殺されたり傷付けられたり、妊娠させられたりしない限り、他はまあどうってことはないので、軽率に会ってみることにした。
性別すら分からなかったが、わざわざメッセージを送ってきている時点で多分異性だろうとは思っていた。その他年齢や見た目も何も情報がなかったが、相手も事前にそれをこちらに聞いてこなかった。ただ、カフェで夕方会って話そうよ、と。指定してきた場所が珍しいと思った。各駅しか止まらない小さな駅だったからだ。幸い同じ沿線だったから、本当に興味本位で会いに行った。このご時世もあって夕方のカフェならば危険はないだろうし。
待ち合わせ場所のカフェの、店内右奥のテーブル席にはすでにユウと見られる人物がいた。黒いキャップを深くかぶっていて、ラフなTシャツ姿だった。
「あ‥ユウさんですか」
私は声をかける。ユウはやはり男だった。20代前半くらいだろうか。
「あ、まきさん! 嬉しい。来てくれてありがとうございます」
礼儀正しいし、声も表情も明るかった。というか、全くお洒落っ気がないから最初は分からなかったけれど、目の雰囲気がすごい。ぱっちり二重とか、すごく大きいとかではないのだけれど、ずっと見ているのは危険だと感じた。自分の中の何かが盗まれてしまいそうだった。
「えーびっくり。こんな好青年がわざわざSNSにいる私なんかに会うことを提案してくれるなんて。多分年齢も全然違うよ」
「あの漫画について語れる同世代、周りにいないんですよ。だから嬉しくて!でもまきさん見た目若いから、大して変わらないように見えるけど。僕は21です」
「まじで。私27だよ。ごめん、ガッカリでしょ」
私が苦笑いをすると、
「何言ってるんすか!ヤバイ、一番好きっす」
とか何とか言い出して、ユウは口を両手で押さえていた。慣れてるなあ。
「まきさん、好きな芸能人とかいますか」
「うーん、芸能系疎いんだよね」
「そうなんすね。アーティストとかどの辺り好きですか?」
「音楽だとロック系かな」
「アイドルとかは、分かる人いますか?」
今思えばその日一番真剣な顔をしてユウは聞いてきた。
「私は全然分かんないや。韓国のアイドルはもちろん、国内のも、有名なグループ名くらいしか。メンバーまでは分からない」
「そっか!」
その後再度ユウは朗らかな表情に戻り、お互い好き放題漫画や小説の話しをした。

同じようなことをきっと繰り返しているだろうし、同じように受け入れてしまう女の子もたくさんいるだろうと思ったけど、いいやと思った。やっぱり彼はうちに来たがって、私の部屋で一緒に缶のお酒を飲み、早い段階で触れ合った。吐息の奥のほうに、女性からは絶対しない、ああ男の子だなと感じる匂いがした。口臭とは違う、多分フェロモンとかホルモンとかそういうの。
気付いたらお互い服が脱げていて、ユウがギュッと密着してきた。
「ふへへへ、まきさんあったかい」
今思えば、どうしてそのタイミングでようやく気づいたのだろう。カフェで話している時点で何も思わなかった自分にびっくりする。
その時見せたユウの照れ笑いを見て、私は東に見せられたあのリンリンの動画を思い出したのだ。架空の先輩に見せた照れ笑いと、全く同じ顔‥
髪もセットしていないし、多分普段は少し化粧をしていて今がノーメイクだから、というのもあるけど、それにしても私は薄ぼんやりとしすぎではないか。だって考えてみれば声も、年齢も一緒だ。何なら、キャラまで同じだ。人懐っこい。まさか、アイドルの姿と、普段?の様子というか、今の様子が同じとは思わなかった。

結局その日は最後まで何も言えなかった。どうせ今日限りだし、私の胸にしまっておけば、この彼のプライベートが外に漏れることはない。なのに、
「まきさんの部屋、また来たい。ていうか来る」
終電にギリギリ間に合う時間、去り際に彼はそう言って私の肩に顔を乗せた。自分が拒絶されることを想定しないのは、彼の外見が優れているからで、だからこそ人懐っこくいられるのだろう。
そう頭で理解していても、私は絆されて力なく頷き、彼の再来を一週間心待ちにしながら、リンリンの動画を繰り返し見て、やっぱりダメだと自制心が走る。でも会いたい、だって可愛い。リンリンでいなくていい時間を、のびのび過ごしてほしい。大してキャラのギャップはなかったけれど。でも、この出入りがどこかで撮られていたら。自分のせいで彼がこれから活躍する道を阻んではいけない。
ぐるぐる考え続けていて、当日が来てしまった。
リンリン、いや、ユウくん。何でもいいや。とりあえず、雑誌に書いてあった、彼の好物であるというカレーパンを買いに行くことにした。

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