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小説

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レビューが難しいなら小説を書けばいいじゃない ライブから生まれた小説
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2022年7月の記事一覧

陽向子

陽向子

「!おねえさん誰ですか?」
 晩ごはんのあとにアイス食べたからか、目が覚めてトイレ行って部屋にもどってきたら、知らない女の人がベッドに腰かけていた。明日から夏休み。時計は夜中の1時すぎ。
「!わかった!イマジナリーフレンドだ!」
白い半袖のブラウスに紺色のフレアースカート。黒のパンプス。ゆるくウェーブのかかったボブの髪は落ち着いたカラーリング。アラサーOLさんて感じかな?
「そう…なのかな?そう…

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遼太 その2

遼太 その2

俺はダシに使われたんだ。信じてるからだって?俺うまいこと丸め込まれてんじゃん!
暑い…のどがカラカラだ。
目についた自販機でスポーツドリンクを買って飲む。
帰ろ。
塾に引き返して自転車で家に帰る。何も考えたくない。イヤホンして好きなバンドのプレイリストを流す。ちょっとだけ気持ちが軽くなった。

玄関の鍵を開けて家に入る。よかった、まだ誰も帰ってきてない。制服を脱ぐ。シャツは洗濯カゴに、ズボンはハン

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遼太

遼太

「多田!よかったー!まだいた!」
塾行く前に自転車置き場でラーメンか牛丼かどっち食おうか考えてたら彼女が走ってきた。
「LINEしてくれたらいいのに」
「でも校内ではスマホ禁止だから…」
真面目か!でもそんなところが好きなんだけど。
「で?何か用?」
「あ、あのさ!多田ってS予備行ってるんだよね?」
「うん。今日も今から行くけど」
「あたし夏期講習受けようかと思ってて。見学とかできるのかな?」

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さやか

あ、チャーハンの人。
家庭教師のアルバイトの帰り。いつもは自転車だけど今日は雨だから電車。かてきょ先の中2の優奈ちゃんの家から5分ほどの私鉄の駅。優奈ちゃんのお母さんに晩ごはんをすすめられたけど明日提出の課題が残っているので泣く泣く断った。ピーマンの肉詰めおいしそうでかなり後ろ髪ひかれたけど、彼に会えた。
彼は駅前の広場の屋根のない場所で、傘をさして駅のほうを見ている。誰かを待っているみたい。

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暁子

暁子

行きつけの角打ちのテラス席(とわたしは呼んでいる、ビールケースの椅子とでっかい糸巻きみたいなやつが置いてあるだけ)に彼はいた。日サロ焼けとも、夏休みの小学生とも違う肌の色。お世辞にもきれいとは言えない服装。足元に大きなバックパック。あきらかにどこか海外、おそらく東南アジア帰りのバックパッカー。彼があんまりおいしそうに缶ビールを飲んでいるので、思わず声をかけた。
「ねえ、おごるから一杯つきあってよ。

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彗

僕はお母さんにインターネットを禁止されているのでYouTubeとか TikTokのことがまったくわからない。
クラスのみんなが何のことを話しているのかわからないから休み時間は図書室かうさぎ小屋の前ですごす。
図書委員の山内さんとは面白い本をすすめあっているし、うさぎ小屋前でよくいっしょになる渡辺くんとは複雑な家庭の事情も話せる仲だ。
僕にはお父さんがいない。もちろん僕はお母さんがひとりで僕のことを

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