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遼太 その2

俺はダシに使われたんだ。信じてるからだって?俺うまいこと丸め込まれてんじゃん!
暑い…のどがカラカラだ。
目についた自販機でスポーツドリンクを買って飲む。
帰ろ。
塾に引き返して自転車で家に帰る。何も考えたくない。イヤホンして好きなバンドのプレイリストを流す。ちょっとだけ気持ちが軽くなった。

玄関の鍵を開けて家に入る。よかった、まだ誰も帰ってきてない。制服を脱ぐ。シャツは洗濯カゴに、ズボンはハンガーに。靴下も脱いでパンイチでベッドに倒れこむ。なんか、とっても、疲れt…

いつの間にか眠っていた。LINEの通知音で目が覚めた。小山からだ。

「多田、今日はありがとう。そしてごめん。何が何だかわけわからんくなってると思うから、説明させて下さい。うまく説明できるか自信ないけど、頑張って書くので読んで下さい。

六花と両角先輩は内緒で付き合っています。校内で知ってるのはわたしだけだと思う。最近六花が先輩の様子が少しおかしい気がするって言って、頼まれてもいないけど、少し調べてみたくて。調べてみて何でもなくて、六花の取り越し苦労ならそれでいいし、もしよくない何かが起こっているならその時考えようと思って。
先輩がS予備行ってるのも、多田が中学でバスケ部の後輩だったことも知ってて、利用しました。ごめんなさい。

そして、わたしが好きな人は六花です。
昨年の冬、駐輪場で泣いていた日、部室で着替えていた時、ある先輩が同性愛者に対する差別的な発言をしたの。ネット上では目にしていたけど、実際に生身の人間の口から出てきた言葉がとてもショックで、とてもじゃないけど耐えられなくて逃げ出して、その時いたのが多田だった。何もきかないでくれて、誰にも言わないでくれて感謝してる。

重い話でごめん。本当に多田のこと信じてるから思い切ってカミングアウトしました。これからも仲良くしてくれるとうれしいです。」

父さん母さんごめん。明日俺は学校休みます。

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