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【映画レビュー】外国人を乗せただけなのに【映画「タクシー運転手」】

たった40年前の日本というと、どのようなイメージでしょうか。

当時はオイルショックから立ち直り安定成長の道を歩んでいた頃で、映像などを見ると、今とそれほど雰囲気も変わらない感じです。

しかし隣の韓国はというと、本当に隣国なのかというレベルで騒然としていた時代です。

時の朴大統領が暗殺され、それまで抑えられてきた民主化運動が活発化。と思いきや軍部がクーデターを起こして再び民主活動家を拘束…といった「革命前夜」のような状況でした。

中でも韓国南部の光州市は、民主化運動の弾圧に抗議する市民と治安維持のため派遣された軍隊とで大規模な衝突となりました。

今回ご紹介する「タクシー運転手」という映画では、当時の状況下で、主人公のタクシー運転手が外国人記者を、騒乱の起こっていた光州市に送り届ける物語です。

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1980年5月。ソウルでタクシー運転手をしていたキム・マンソプは、妻に先立たれ11歳の娘と二人暮らし。親友が大家の貸し家に住んでいるものの、思うように稼げず家賃の滞納を繰り返している日々でした。そんな中市街地で民主化のデモ隊とも遭遇し、「学校で勉強もせずに呑気なやつらだ」とマンソプは思います。
一方、東京でドイツマスコミの駐在員をしていたピーターは、BBCの特派員に「韓国で不穏なことが起こっている」と教えられます。
特に大事件に巻き込まれたような経験もなく東京で特派員をしていたピーターはそれに興味を持ち、韓国に渡ろうと思い立ちます。
職業を神父と偽り、韓国ではタクシー経由で光州へ行くことに。
ちょうどその頃、マンソプは食堂で昼食を取っていると、隣の席で「10万ウォンの仕事」を話す別の運転手がいました。
10万ウォンあれば家賃も払えるー。
そう思ったマンソプは、その運転手より先回りして到着します。10万ウォンの話の依頼人は、ピーターでした。
早速光州まで向かう一行。しかしマンソプは、かつてサウジで出稼ぎに行った経験こそありましたが英語は片言。ピーターとも満足に意思の疎通ができません。
光州のすぐ前まで来た二人でしたが、軍が検問しており入れません。
「そんな馬鹿な…」と思いつつ、田舎道を使うなどしてなんとか光州へ入ります。そこで二人が見た光景とは…

というあらすじです。
「前半ほのぼの、後半地獄」と評価していた方がいましたが、確かにコミカルさとシリアスさのシーンで全く違う印象を受けます。

個人的には、主演のソン・ガンホさんの演技が印象的でした。
彼は特別イケメンでも派手でもないですが、味のある演技に定評があると言われています。作中でも心情の変化や揺れ動き、表情といったものに引き込まれる要素があります。
「外国人」「ソウル市民」の立場である二人が現地の光州市民と心を通わせる点、「ドイツ人」と「韓国人」という違う人種の二人の距離がなくなり心を通わせる点もまた色々と感じさせる要素でした。

皆さんもぜひご覧ください。

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