カスタマーサクセスの基礎。顧客ロイヤルティを高める顧客対応の「い・ろ・は」
こんにちは!CS楽しんでいますか?
イタンジ株式会社の竹谷(たけたに)と申しますヘ(^o^)/
当社は、不動産会社向けのクラウドサービスを提供している会社で、私は
不動産会社向けの顧客管理&営業支援システム「ノマドクラウド」というサービスのCSの責任者をやらせてもらっています。
本記事は「カスタマーサクセス Advent Calendar 2019」の21日目の記事となります。ニートン岩崎( @neeton_iwasaki )さん、企画ありがとうございます。
📆 カスタマーサクセス アドベントカレンダー 2019 📆
本記事で書いてあること
・守りは大丈夫?基本的な顧客対応の質の重要性
・顧客ロイヤルティを高めるコミュニケーションのポイント
・CSなら覚えておきたい、顧客心理に関する3つのこと
・オンボーディングから契約更新までの間の顧客対応で、顧客ロイヤルティを高める具体的な方法
21日目のキーワードは、顧客ロイヤルティと顧客心理
さて、アドベントカレンダーの21日目のタイトル🎉は、
カスタマーサクセスの基礎。顧客ロイヤルティを高める顧客対応の「い・ろ・は」
です。
カスタマーサクセスのアドベントカレンダーなのに、なのに!?
なぜ、このタイトルで1本書こうと思ったのか。
それは、いくら素晴らしいオンボーディングプロセス、フォローの仕組み、ヘルススコアを監視できるような基盤を作っても、基礎となる基本的な顧客対応がきちんとできていなければ、顧客と成果に向かって走れず、それらの仕組みは効果を発揮しないと感じたためです。
(自社はまだそんなに完璧な仕組みはありませんが....すみませんw)
むしろ、基礎がまだまだの状態で「カスタマーサクセスじゃー!」と、格好良さそうなことをやり始めるのは過去の経験から逆効果だと思っています。
逆効果とはどういう意味かというと、逆に顧客ロイヤルティを下げてしまうということです。
「顧客ロイヤルティ」とは、顧客(ユーザー)が自社商品やサービス、企業のブランディングなどに対して持つ信頼や愛着、リピート利用などを総合的に言い表した言葉です。顧客ロイヤルティが高ければ高いほど、商品やサービスなどを長きに渡って使用(購入)してもらえるようになります。
Ferret https://ferret-plus.com/9400 より引用
顧客との信頼関係が構築出来ていない状態で、成功に向かって顧客と一緒に走れるのか?
顧客との円滑なコミュニケーションとスムーズな導入、そして、導入後の問合せ対応などをまずはきちんと行い、信頼関係が出来て、そこからがカスタマーサクセスのスタート(よりプロアクティブな動きに舵を切るタイミング)だと僕は考えています。
私自身、基本的な顧客対応が出来ておらず、これまでに何度も顧客に迷惑をかけて、たくさん怒られてきました。(今でもゼロにはできていませんが)
ただ、明らかに以前より減りましたし、顧客との良好な信頼関係が築ける場合が増えてきました。そして、それはカスタマーサクセスにも大きく寄与しています。
では、顧客対応で何を変えたのか、何を意識し始めたのか?
大別すると、以下の3点を意識して顧客対応(コミュニケーション)しています。
1)顧客心理をくみ取り、理解に努め、寄り添う
2)不安に感じさせない
3)顧客に手間をかけさせない、努力させない
(連絡させない、連絡回数を減らす、先回りして情報を伝える等)
自分のプライベートの経験、仕事での実務の経験、本での情報(詳細は後述)から、上記を念頭において顧客対応することで、一定以上の顧客ロイヤルティは、担保できると考えています。
そこで今回は、僕が顧客とコミュニケーションを取る際に意識している点等をシーン毎に詳しく紹介していきます!
信頼関係がとれていないと自分も楽しくないし、お客様も嫌な気持ちになりますよね。
関係者の皆が少しでもハッピーになることを願っています!
CSなら覚えておきたい、顧客心理に関する3つのこと
【1】 「自分の感覚」と「他人の感覚」の違い
まず、顧客対応する際に覚えて頂きたいことがあります。
それは、「自分の感覚」と「他人の感覚」の違いです。
この違いを必ず認識しておかないといけません。これを知らずに顧客対応するときっと痛い目に遭います。
「え?なんで顧客が怒っているの?私なら全然平気なのに...」みたいな。
あとは、私生活でもあるかもしれません。
「なんで私のこと分かってくれないの!?」みたいなw
人間は、自分の考えや意見、行動は普通で、みんなが自分と同じ考えや意見を持っていると思ってしまいがち。
これは心理学では、「フォールス・コンセンサス」と呼ばれています。
自分の感覚で顧客対応することの危険性を認識しておきましょう。
あと、関連する人間心理に関することとして、「バーナム効果」と呼ばれているものがあります。
これは、自分にとって都合の意見や情報を信じてしまうことです。
自分が正解だと思っていることを、たまたま数人から聞いた場合に過大評価してしまうことはありませんか?僕はありますw
ついつい主観的になりがちですが、CSは様々な面で客観的な視点が重要になります。
【2】顧客ロイヤルティの平均点を上げるためには、「顧客の期待を下回る」対応をしないこと
本章は、主に以下の本に関することです。
CS業務を行っている中で感じていたことがまさに書かれていました。
「CSのXさん、本当にいつも良く対応してくれて助かっています!前は、こんなことまでやってくれましたよね。」
CSをやっていれば、一度はこのようなことを言われることがあるでしょう。「CSをやっててよかったなぁ〜♪」と思える瞬間ですね。
そうすると、次はもっともっと良い対応をしよう!と思いますよね。
僕も思いますw
ただ、これが罠です。
一般的には、サービスを手厚くすればするほど、顧客満足度が上がると思われています。
出典 おもてなし幻想 42ページ
カスタマーサービスがロイヤルティに与える影響についての企業の認識
一方で、おもてなし幻想の本では、以下のデータも併せて載っています。
顧客対応の手厚さと顧客ロイヤルティの関係です。
出典 おもてなし幻想 42ページ
カスタマーサービスがロイヤルティに与える影響。認識と実際の行動の比較
なかなか衝撃的な結果で、まさに「おもてなし幻想」です。
上記の図から言えることは、2点あります。
[a] 一定レベル以上の手厚い対応は重要だが、過度な対応はあまりメリットがない
[b] 顧客ロイヤルティの平均点を上げるためには、「顧客の期待を下回る」対応をしないこと
特に重要なのが(b)です。過去の成功体験があると(a)を追求してしまいがちですが、平均点を上げるためには(b)の方が重要と言えます。
これは、過去の経験から僕自身もそう思います。顧客対応を当たり前のように行うこと。当たり前の「質」をあげること。これだけで、顧客ロイヤルティは十分に上がります。
一方で、信頼関係が崩壊するのは一瞬なこと、一度ヒビが入ると修復がどれほど難しいことなのかは、CSなら理解していることだと思います。
CSで何か新しい取り組みを行う際には、「攻めの施策だが、守りは十分か?」と、一度よく考えましょう。
【3】「顧客がどう感じたか」が最も重要。あなたの努力は関係ない
「私はこれだけ対応したのに、顧客の評価が低い。。WHY(?_?)」
CSで顧客対応していると実際に経験することだと思います。
それもそのはず。
顧客がカスタマーサービスを評価するときは、顧客の主観になります。
もちろん、「あなた頑張ってくれたものね!」と一定の評価はしてくれるでしょう。ただ、そんなことはほんの一部です。
顧客ロイヤルティと大きく関係しているものの1つとして、「顧客努力」があります。
努力とは、すごいざっくり言うと、
・顧客がどれだけ自分で動いたか
・顧客にどれだけ手を煩わせたか
です。
この顧客努力の多さが、顧客ロイヤルティに大きく関係しています。
以下の図は、おもてなし幻想に載っていたデータです。カスタマーサポートに問合せした際のロイヤルティを押し上げる要因、下げる要因が明確に載っています。
僕のCSでの経験やエンドユーザーとして他社のサポート受けたときにも同じ感情を抱きますので、ほぼ間違いないと思っています。
出典 おもてなし幻想 61ページ
ロイヤルティおよびディスロイヤルティを促進するカスタマーサービス要因
上記の結果は、カスタマーサービスにおける調査結果ですが、顧客対応全般において意識すべき内容ですね。
【顧客ロイヤルティを高めるコミュニケーションのコツ】
いくつかコミュニケーションのコツを紹介します。詳細は、シーン毎の顧客対応のポイントで。
まずは、おもてなし幻想の本に書かれていた内容です。
・アドボカシー
顧客の立場に立っていることを明確に示し、積極的な方法で支援する
・肯定的な言葉遣い
「いいえ」あるいは「できない」など、有益な結果が得られないというニュアンスを伝える言葉の使用を極力避ける
・アンカリング
特定の結果を、有益性や望ましさが劣る別の選択肢と比較することで、その結果がより有益で望ましいものであると位置づける。
出典 おもてなし幻想 186 - 187 ページ
第4章:できることが何もないように思えてもできることは必ずある
これ、めちゃめちゃ重要です。これだけでも意識していると、顧客を不快にさせることはかなり減ると思います。
その他、僕の場合は以下のことを意識しています。
・専門用語/隠語は使わない。顧客が理解可能な言語レベルまでかみ砕く
→回答に対する追加質問を無くし、顧客の手間を省く
・質問の回答に付随する問題は、先回りして、補足説明する
→回答に対する追加質問を無くし、顧客の手間を省く
・引き継ぎ発生する場合、きちんと引き継ぐ。そして、保存しておく
→顧客に何度も同じ情報を繰り替え説明させない
自分の感情や想いは、顧客に想像以上に伝わっています。
オンボーディングから契約更新までの間の顧客対応で、顧客ロイヤルティを高める具体的な方法
それでは最後に実務で使える内容です。これまで説明した内容を基に、シーン毎の顧客対応のポイントをまとめました。
【全てシーンで意識が必要!アタナは会社の看板を背負っている】
シーン毎の顧客対応のポイントの解説前に重要なことを1つ。
それは、顧客はあなたを個人として見ていません。
あなたを会社として見ています。
もしあなたが、自分のことだと思って、顧客ロイヤルティを下げる対応を行った場合、顧客は、「アナタの会社はそういう会社なのね」と判断します。
また、何か1つ良くないことをしてしまうと、自然と別のことに関しても、「あ〜あそこの会社は...」のようにまるで全てが悪いように判断されます。
これは、心理学では「ハロー(Halo)効果」と呼ばれております。人は、1つの特徴に引っ張られて対象を歪めて見てしまう生き物です。
たった1つの顧客ロイヤルティを落とす対応が、大きな影響を及ぼすことを念頭においておきましょう。
【営業からの引き継ぎは、形に拘らず行う】
めちゃくちゃ当たり前のことなんですが、営業さんからはきちんと引き継ぎを受けましょう。同じ事をCSから聞くことはできる限り避けるべきです。
顧客と話すときは、あくまで確認という位置づけに。
実は以前に同じ事を3〜4回ほど顧客に説明させてしまった時がありました。その際、顧客を本気で怒らせてしまい、声がかすれるほど「申し訳ございません。」を言ったことがあります。。
(幸い、今ではその顧客とかなり良い関係になっています。)
セールスフォース等の営業支援ツールの有無にかかわらず、何でも良いので引き継ぐことが重要です。
会社の信頼自体が揺らぐことにもなりますので、注意しましょう。
【初回連絡時は、まず、利用開始までの流れを話す】
顧客は、いつ頃からサービスを始められるかな?と不安になっています。
また、導入サービスの運用開始時期が社内で決まっていることもありますし、今後の見通しを上長に報告する必要があります。
ですので、初回連絡時は、今後の流れと開始時期をザックリ説明すると安心頂けると思います。
【初回訪問(初対面)は、とにかく慎重に】
初回訪問で気を付けるべきは、以下3点です。
1)遅刻
2)身だしなみ
3)事前準備
どれもすごい当たり前ですが、当たり前にやることが重要!初対面の印象はとにかく重要で、第一印象で「その人」のイメージが決まります。
第一印象でイメージが決まることは、心理学では「初頭効果」と呼ばれています。
最初は特に慎重に対応していきましょう。
アナタの言い訳は、顧客にとっては、どうでも良いことですw
【初回訪問(初対面)でミスったら、挽回に全力投球せよ】
1回目の打合せなどで何かしらミスって心象を悪くしてしまうこともあるでしょう。でも、過去の経験から1回ならまだ挽回可能だと思います。
仮に遅刻してしまっても、身だしなみも良く、準備もきちんと行っており、「最後」の印象が良ければ顧客ロイヤルティは大幅に低下しないと思っています。
過去に何度か営業からの引き継ぎに失敗して、顧客との関係が悪化したことがありますが、その後きちんと対応していれば関係は復活します。
また、心理学では、「親近効果」というものがあります。
親近効果とは、最後に提示された情報や印象が強く記憶に残ったり、判断の直前にだされた情報に強く影響されることを言います。
もし、ミスっても連続でミスらなければ大丈夫。その後、誠意を持って対応しましょう!
【導入準備では、常にボールは自分にあると思ってタスク管理する】
いざ導入準備が始まると顧客とのキャッチボールが続きます。
このときに気を付けておくことは、顧客のタスク完了待ちであっても、投げっぱなしにしないことです。期限を決めて顧客に依頼し、完了日までに連絡が無かったら顧客に連絡できるように進捗(タスク)管理します。
実は何かの問題で躓いていたり、顧客自身はボールが自分にあると思っていない場合もあります。
きちんと進捗確認を行うことで、顧客努力を減らす何かをお手伝いできるかもしれません。(※顧客が通常運用時に行うことまでやってしまうのは、後々逆効果になるので要注意!)
自分がプロジェクトマネージャーという意識を持って、スムーズに導入できるように進めて行きましょう。
【お問合せ対応では「連絡」が重要。顧客は回答より連絡を待っている】
問合せ対応で、ついついやってしまいがちな対応があります。
それは「質問に対する回答の準備ができたら連絡する」というパターンです。ただ、これはとても良くない対応です。
問合せ対応だけじゃなく顧客対応全ての言えることですが、顧客を不安にさせてはいけません。
この場合、顧客が感じられる不安とは、以下2点が挙げられます。
・きちんと届いているのか?
・きちんと調査してくれているのか?(放置されていないか?)
人間は、先が見えないと不安になり、ここから怒りの感情に発展します。
ですので、調べないと回答できないお問合せは、「調査します。XX日のXX時間までには連絡します。」と一言だけでも返すようにしましょう。
そうすることで、顧客から連絡する必要がなくなりますし、連絡時期が明確になっているため、待つことによる不安が無くなります。
これだけでかなり心象は違ってきます。
【トラブル時は、進捗、復旧目処、次回連絡時期を明確に】
障害対応や何かの問題調査では解決時期が不透明な場合があります。その際に重要なのが、進捗、復旧目処、次回連絡時期を明確にすることです。
上記の問合せ対応と似ていますが、トラブルの場合は、
・解決に向けて進んでいること
・次の連絡時期
を必ず連絡するようにしましょう。
電車などの交通機関が止まった際に、いつ復旧するか気になりませんか?それでイライラしませんか?
顧客の立場に立って、行動しましょう。
【接触回数は、ある程度は増やした方が良い(アフターフォロー)】
ヘルススコアを監視して、異常があったら連絡するようなことももちろん重要ですが、数値では見えないこともあります。また、いつの間にか社内の体制や方針、担当者が変わっていることもあります。
そのときに有効なのが顧客への定期連絡です。
定期的にフォローすることで、サービス継続に関する問題が何か発生しても、早めに対処することが可能です。
また、定期連絡は、顧客ロイヤルティ向上にも有効だと考えています。
人間は、接触回数が増えるにつれて、その人や企業に対しての親近感や印象が上がっていきます。心理学では、「ザイオンス効果」と呼ばれています。
なお、僕が担当しているサービス(ノマドクラウド)では、3ヶ月に一度は必ず連絡して、社内の状況や成果を確認するフローにしています。
何もなければ電話一本で終わり!これだけで、「わざわざ連絡してくれてありがとう」と言われることもありますので、顧客ロイヤルティの向上にある程度の効果はあると思っています。
基礎を固めてからカスタマーサクセスへ
顧客と信頼関係ができれば、顧客との距離が近くなり(伴走しやすくなり)、結果的にカスタマーサクセス面にも好影響が出てきます。
まわりをみれば、「他社のCSはすごいことばかりやっているな・・・」と思ってしまいますが、重要なのは自社の環境、自社の顧客と向き合って、今何が必要か考えて、実行することが重要だと考えています。
最後に参考にさせて頂いた本をご紹介して終わります。
最後まで読んで頂きありがとうございました!
ぜひ、他の記事もご覧になって下さいね(・∀・)!
📆 カスタマーサクセス アドベントカレンダー 2019 📆
📕 - 参考にさせて頂いた本の紹介 - 📕
・おもてなし幻想
とても良い本です!自分の中で、思っていたことが確信に変わった本です。
「手厚いサービスをやればやるほど、顧客ロイヤルティは向上し続ける」というのは幻想である、というのをデータから説明しています。なかなか分厚い本ですが、顧客対応する際の重要なポイントなどが書かれています。
・ウェブ心理学
とある有名アフィリエイターさんが推奨していた本です。ウェブサイト制作に関する本なのですが、CSでの実務に置き換えながら読むことで、参考になることが沢山ありました!人間はこういう心理が働くので、こうしましょうみたいなことが書いてあります。
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