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闇に轟く禍々しき49本の実話怪談!シリーズ第10作目『怪談四十九夜 病蛍』(黒木あるじ編著)まえがき無料公開
10名の手練れたちが集い書き下ろす!
闇に轟く禍々しき49本の実話怪談
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黒木あるじの元に集う怪談の猛者たちが、その腕を振るう人気シリーズ第10弾!
仕事で訪れた屋敷で少女に見せられた奇妙な物「阿弥陀さんでしょ」(朱雀門出)、
出張先のホテルの夜、誰かが名前を呼ぶのだが…「だりさわ」(我妻俊樹)
――ほか、小田イ輔、鷲羽大介。
そして、新たな書き手として注目を集める鈴木捧・大谷雪菜、
巧みな筆致で怪異を綴る講談師の旭堂南湖、
『出雲怪談』で頭角を現した古川創一郎、
人気怪談朗読YouTuberのりっきぃ、
―と今回も初参加の書き手5名が大胆に登場!
今宵49話の妖しい蛍火が奈落への道を灯す。
まえがき無料公開
まえがき
黒木あるじ
死と苦になぞらえた四十九話の怪談を、少壮有為の新星から練達の士まで十名の猛者が書き記す当シリーズも、いよいよ十巻目。前作「地獄蝶」に続き、本作も昆虫が副題に冠されました。病蛍とは、秋に舞う蛍を指した季語なのだそうです。夏に産えつけられた卵から生まれてくるため身体がちいさく、発光も弱々しいとされています。
季節はずれの消え入りそうな蛍火、病人の呼吸に見立てたのでしょうか。葬送にちなむ題が添えられた当シリーズに相応しい、なんとも不穏な名前です。
蛍は死者の魂である──かつて日本ではそのように信じられていたのだとか。
『伊勢物語』の第四十五段「ゆく蛍」には、飛び交う蛍を死者の霊魂に見立てるくだりがあり、『後拾遺和歌集』では和泉式部が「物思へば沢の蛍も我が身よりあくがれ出づる魂かとぞ見る」と歌に詠んでいます。恋焦がれて我が身を離れた霊魂が、蛍となって夜空を飛び交っている──そのように解釈したのですね。歌の詠まれた場所が丑の刻参りで有名な貴船神社という点も、なかなか興味深いものがあります。
おなじく京都では、平家に敗れて非業の死を遂げた武将・源頼政の霊が蛍になったとの言い伝えがあり、宇治川にゲンジボタルが舞うさまを「蛍合戦」と呼んでいるそうです。
死の影が漂う蛍ですが、いっぽうで艶かしく燃える生の炎にも喩えられました「髪長き 蛍もあらむ夜はふけぬ」は泉鏡花の句です。夜の底で情交を結び、息もたえだえな長髪の女性を、弱々しく明滅をくりかえす蛍火と重ねたのでしょうか。闇に響く喘ぎが、薄灯に浮かぶ影が、真実に生きている者のそれとは限らないのですが。
そう、蛍は死者の怨念であり、生者の執念なのです。生と死のはざまに浮かびあがる、彼岸と此岸を分かつ妖光なのです。
先に述べたとおり、今宵の蛍は四十と九匹。
はたしてその鈍い灯りは妖しくも艶かしい生の火か、それとも心根病みついた者が吐く呪詛の炎か、はたまた死者がいざなう幽玄の焔なのか。
その答えは、是非みなさまの目で確かめていただきたく存じます。おっと、くれぐれも自身が蛍にならぬようご注意のほどを。それでは、こちらへ。
夜があなたをお待ちです。
―了―
朗読動画
3/26 18時公開予定
著者プロフィール
黒木あるじ (くろき・あるじ)
『怪談実話 震』で単著デビュー。「黒木魔奇録」「無惨百物語」各シリーズ、『怪談実話傑作選 弔』『怪談実話傑作選 磔』『怪談売買録 拝み猫』『怪談売買録 嗤い猿』など。共著には「FKB饗宴」「怪談五色」「ふたり怪談」「怪談四十九夜」「瞬殺怪談」各シリーズ、『奥羽怪談』『未成仏百物語』『実録怪談 最恐事故物件』『黄泉つなぎ百物語』など。小田イ輔やムラシタショウイチなど新たな書き手の発掘にも精力的だ。他に小説『掃除屋 プロレス始末伝』『葬儀屋 プロレス刺客伝』『小説 ノイズ【noise】』など。
我妻俊樹 (あがつま・としき)
『実話怪談覚書 忌之刻』にて単著デビュー。「実話怪談覚書」「奇々耳草紙」各シリーズ、「忌印恐怖譚」シリーズ『くちけむり』『めくらまし』『みみざんげ』『くびはらい』など。共著に「FKB饗宴」「てのひら怪談」「ふたり怪談」「怪談五色」「怪談四十九夜」「瞬殺怪談」各シリーズ、『猫怪談』など。
大谷雪菜 (おおたに・ゆきな)
第三回『幽』怪談実話コンテスト優秀賞入選。ウェブを中心にライターとして活動中。共著に『実録怪談 最恐事故物件』『世にも怖い実話怪談』『奥羽怪談』など。
小田イ輔 (おだ・いすけ)
「実話コレクション」「怪談奇聞」各シリーズ、共著に「怪談四十九夜」「瞬殺怪談」各シリーズ、『奥羽怪談』『未成仏百物語』など。原作コミック『厭怪談 なにかがいる』(画・柏屋コッコ)もある。
旭堂南湖 (きょくどう・なんこ)
講談師。「十三で十三日の怪談会」主催。東大阪てのひら怪談優秀賞受賞。「怪談最恐戦2019」ファイナリスト。著書に『旭堂南湖 講談全集』など。
朱雀門出 (すざくもん・いづる)
二〇〇九年「今昔奇怪録」で第十六回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。実話怪談では『第六脳釘怪談』をはじめとする「脳釘怪談」シリーズほか。共著に「怪談五色」シリーズ、『京都怪談 神隠し』など。
鈴木 捧 (すずき・ささぐ)
【怪談マンスリーコンテスト】において、最恐賞と佳作をそれぞれ3度受賞。著書に『実話怪談 花筐』『実話怪談 蜃気楼』。趣味は山登りと映画鑑賞。
古川創一郎 (ふるかわ・そういちろう)
島根県松江市在住。カフェcappary店主。怪談奇談都市伝説の個人蒐集家。怪談関係含め様々なイベントを店で開催している。共著として『出雲怪談』。
りっきぃ
「季節を詠む怪談朗読」として動画チャンネル「りっきぃの夜話」で人気を博すオカルト系Youtuber。共著に「Horror Horic School 怪奇な図書室」シリーズ。
鷲羽大介 (わしゅう・だいすけ)
「せんだい文学塾」代表。共著に「江戸怪談を読む」シリーズ『猫の怪』『更屋敷 幽霊お菊と皿と井戸』、『奥羽怪談』『瞬殺怪談 罰』など。
シリーズ好評既刊
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