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新聞配達員の思い出

私は20代の頃もうつ病でまともな職につけなかった。
でも生活はしていかないといけないので無理なくやれそうな仕事、新聞配達員のバイトをすることにした。

現在34歳、思い返してみると色々なバイトをやったが新聞配達員の仕事が一番楽しかったかもしれない。

新聞配達員の朝は早い。っていうか夜中である。
私は毎日深夜1時に起きて、徒歩で新聞の営業所に向かった。
配達員のおっちゃんらと雑談をして過ごし、深夜2時頃新聞の束が運ばれてくる。
そこからは黙々と作業をする。
新聞の間にチラシを挟み込む。
ただひたすら機械のように。
ベテランのおっちゃんらは作業が早い。
深夜3時、私もカブに新聞を乗せ、出発する。
これもただひたすらに新聞を入れていく。
ただひたすらにひたすらに。
でもつまらなくはなかった。
ゲームをしているような感覚だった。
深夜誰もいない町中で淡々とこなしていくゲーム。

早朝5時半頃、すべての新聞を配り終えて営業所に戻る。
朝日が昇り始めて、空気が気持ちいい。

なによりうつ病の私にとって誰とも話さずに仕事ができるのがよかった。誰かの気を使ったりもない。
自分の持ち場でただひたすらに真面目に働く。
それって仕事の本質だよなと思う。
なんで世の中の多くの仕事は他人に気を使わないといけないんだろうか。

バイクを戻すとベテランのおっちゃんたちは先に帰宅していた。
社員の人たちはこれから吉野家で朝食を食べるという。
私は挨拶をして帰路についた。
収入は少なかったが、楽しい仕事だった。

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