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❖「白」は単なる「色」に非ず、存在を守る「城」なり❖ まいに知・あらび基・おもいつ記(2022年1月8日)

(長さも中身もバラバラ、日々スマホメモに綴る単なる素材、支離滅裂もご容赦を)

◆「白」は単なる「色」に非ず、存在を守る「城」なり◆
先日の大雪は、東京では4年ぶりらしい。確かに、去年など足元を気にしながら歩いた記憶はなかったので、降雪で終わらず、あそこまでしっかりとした積雪は久しぶりだったわけである。

雪の白色は綺麗だが、白という色は、例えば絵の具において、白色は他の色に混ぜて使われるのが一般的であり、主張や主体性がない色のように感じる。白色はなぜそんな扱われ方や捉えられ方をしているのだろうか。

新品のノートで、まだ文字などが書かれていないものは、大抵が白色である。パソコンのワードやエクセルで、何も記入されていないスペースやセルも白色である。だから物事がリセットされ、何もない状態であることを「白紙に戻す」とか「白紙撤回」などと表現する。キャンバスも白色である。穢れや後ろめたさのない状態を「潔白」という。白を自立した色として扱うのは、黒板の白チョークくらいか。しかしそれも黒板の色が濃く暗いので、たまたま白が使われているように思える。黒板では大抵、特徴的ではない表記は白チョークで書かれ、注目してほしい表記には黄色や赤色のチョークが使われる。これはスポーツのコートの境界を示すものとして白色は使われるのと同じかもしれない。境界を示すためには線が必要だが、認識されなければ線の意味をなさない。だから仕方なく白を使っている。白は色としてというよりも、線の存在を示す役割が主であるように思える。

イギリス経験論の思想家ジョン・ロックは、まだ何も刻まれていない人間の認識の初期状態を「タブラ・ラサ(白紙)」と呼んだ。

このように世の中の様々な白を見てみると、白はその着色によって、色という濃淡を伴うメッセージ、すなわち「質的情報」を示すものというよりも、初期空間であることを示したり、空間の境界を示したりといった存在の有無のみに関わる「量的情報」ということが分かってきた。

だから、鮮やかさや彩りのメッセージとして扱われたり捉えられたりする他の色に比べ、白は色という扱われ方や捉えられ方ではないから、ややもすると、主張や主体性がないどころか、「無」として扱い捉えられてしまうのである。

しかし雪が積もった木々、雪が積もった家、雪が積もった街並みはどうだろう。雪によって味つけされて雰囲気が変わって、普段は素通りの木々や家や街並みが気になって、見入ったり写真に収めたりすることがあるだろう。それは雪の持つ白さが、決して主張なしでも主体性なしでも、ましてや「無」などではないことを明確に示している。

私が好きな漫画の一つに『家栽の人』がある。この漫画はテレビドラマにもなった作品である。主人公は家庭裁判所の判事だが、タイトルには「裁判所の『裁』」の文字が使われていない。これは、まだ大人になっていない少年を、周囲の支援により成長する植物に重ね合わせ、少年が裁判所や社会の支援により成長するものなので、少年審判は「裁くもの」ではなく、植物と同様に「育てるもの」であるとの思いから「栽培の『栽』」が使われているのである。この漫画は毎回のエピソードが植物の名前になっている。

今日のメモを見ていて、あるエピソードを思い出した。「スノードロップ」というエピソードである。そこでは、天地が創造されたとき雪には色がなかったというドイツの伝説が出てくる。伝説の話は次のように続く。神が色を他の花から分けてもらうように言うので、お願いに回るも、どの花も色を分けてくれなかった。しかし唯一、スノードロップという白い花だけが色を分けてくれた。雪はその感謝の思いから、寒さの厳しい冬の間、スノードロップの球根が眠る地面に降り積り地面を温めている。

主人公の判事は、暴走族での行為で少年院に入っていた少年に会ったとき、少年にこの伝説の話をする。彼は将来医師になりたいという夢があるものの、更生の活動と勉強の両立を諦めかけていた。判事は、雪が欲しかったのは、本当は色というよりも、「自分の存在の証」だったのではないかと少年に話し、そのあと「夢は捨てちゃいけない」と伝えるのである。

医師というのは職業の一つで、別にそれだけしか職業がないわけではない。しかし少年にとって「医師を目指すこと」は、鮮やかや彩りのある憧れというよりも、「生き甲斐」であって、目指すこと自体が「自分の存在の証」になっていることを、判事は見抜いていたといえる。だから、夢と存在の証は同一のもので、判事は自分を大切にしながら成長することを応援したわけである。

つまり、雪の白さは単なる色ではなく、存在そのものといえる。表面的な鮮やかや彩りに頼らず惑わされないからこそ、白には重みがあり、それ自体に価値がある。それが「白が持つ唯一無二の魅力」なのだろう。
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