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●オリムピックこぼれ話●~その陸~

★1964年10月20日の朝日新聞…忘れられた博物館
今でこそ日本のアニメであるとか日本家電のクオリティであるとか、「日本の文化」というものについて一定の評価は得られているが、1964年当時、日本にやってくる外国の選手団からはきちんとした食事をとることができるのか心配していたり、文化レベルが高くはない国だと思われていたりしたようである。

そのような日本のイメージを払拭したいと思い、「文化レベルの高さ」を、新幹線や高速道路や都市開発など、インフラ先行で1964年の東京オリンピックに間に合わせたわけである。それは文化というものを「先進性・発展性」の側面で見たときに考えられた方策であったといえる。

また、昨今「日本の文化」として注目されるアニメにしても家電にしても、それが文化の一つであることは間違いのないことである。しかし、積み重ねられてきた歴史の重みや荘厳さといったものを纏った文化と、先進性・発展性に立脚したインフラやアニメ・家電などのような文化とを、並列に扱うことはできない。前者の文化は「伝統文化」と呼べるものであり、後者の文化についてあえて名づけるならば「モダン文化」ということになるだろうか。

そして博物館というものは、その国の歴史や地理など、その国に生きてきた人々の営みや自然観といったものを国自身がどこまで認識できているかを客観的に示したものであって、その国の「伝統文化のレベル」が如実に表れる、ごまかしが利かない部分ではないだろうか。

見た目にも分かりやすいハコモノに着目し、そこで先進性・発展性を派手に上塗りして、文化レベルの高さをアピールしたとしても、それがその国の本質の部分・根幹の部分と結びつきの足りない不自然なものだったとしたら、本質・根幹はそれを異物として拒絶し、まさにメッキの如く剥がれ落ちてしまう。

さて、夏に開催された東京オリンピックで日本が示したかったものは、本質・根幹が拒絶するメッキだったのか、それらと親和性の高いものだったのか。本質・根幹に歩み寄ってそれっぽく着飾った場合にも、本質・根幹はその浅はかさを見事に見抜き、結びつくことのない気持ち悪さだけが目立ってしまうことだろう。ぜひとも、博物館などが関わる本質・根幹と結びつく文化の継承や再評価をしてほしいものである。

★1964年10月20日の朝日新聞…英新内閣の主要閣僚、影の内閣が中心
二大政党制はダイナミックな政権交代が行われ、政治の新陳代謝が行われる制度である。しかしそのような大きな変化は、国民生活にも大きな影響を与えることになるため、その政権交代が国民生活を改善することこそあれ、逆に改悪となってしまっては元も子もないわけである。

そこで、イギリスでは政権を担当している与党に対抗する形で、野党が「影の内閣(シャドー・キャビネット)」を組織しており、すぐに政権交代が起こったとしても、内閣を担当する予定のメンバーが準備をしているため、政権交代で浮足立ち国民生活に混乱を及ぼさないような仕組みがとられている。この影の内閣のトップである野党党首には国から給料も支払われており、正式な仕組みなのである。

このような影の内閣の考え方は、民主主義が政治の根本・主目的であることを教えてくれてはいないだろうか。日本国憲法第97条の中にある「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」という文言は、基本的人権に対して付与されている表現であるが、これは民主主義に対しても同様に関連するものだと思う。そのため、政治というものはあくまでも手段であり、政治は何のために存在しているのか、政治に関わる側も、政治の影響を受ける側も、その根本・主目的を見失ってはいけないのである。

日本でもイギリスに倣って、これまで何度か野党が影の内閣を組織した例はあるが、日本は二大政党制ではなく、政権交代という新陳代謝がほとんど行われていない現実があり、影の内閣の意義は大きくはないといえる。

しかし新陳代謝のない身体が不健全であるのと同じように、新陳代謝のない政治もまた不健全であり、それがないことの利点と弊害を冷静に見つめる必要があるかもしれない。

★1964年10月20日の朝日新聞…不耕式栽培で成功、さよならカアチャン農業
戦後復興を遂げ、高度経済成長期に入った日本では、主に都市部での工場などで男性が農業以外の仕事で働く機会が拡大した。その結果、それまで農家の主要な働き手・担い手であった若い男性の「とうちゃん」が都市部へ出稼ぎに出てしまい、農作業に携わるのは、実家に残された「じいちゃん・ばあちゃん・かあちゃん」となり、このような農業実態は「三ちゃん農業」と呼ばれた。

この言葉は当時の社会を象徴するものとして、国会などで繰り返し使用されたことから、1963年の流行語にもなっている。

高度経済成長期は、農家内部における働き手・担い手の変化だけでなく、農家そのものの性質の変化も引き起こし、専業農家の減少、兼業農家の増加となっていた。その後、都市部への人口流出の傾向は進み、地方では働き手・担い手の高齢化が進み、後継者不足が農家減少にもつながっていったのである。

最近、色々な場面で使われる「地方創生」であるが、それが花火のような一過性のものでは不十分である。そして単にハコモノを用意すれば解決するわけでもない。人々の生活の底上げや循環が担保されたものでなければならないだろう。その意味では、これも「持続可能な発展・開発」の一つであるといえる。

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