見出し画像

兄貴が部屋へやって来る!

どうも、いつもありがとうごぜぇやす。いや、ございます。
この挨拶は僕がある日銀行へ行った際、係員の綺麗なお姉さんが実に綺麗な声で

「ありがとうごぜぇやした!」

と無意識に発した一言にたまらず一人で爆笑してしまった事を思い出したからだ。凄く綺麗な声だったので、本当に面白かった。

noteをまともに書き始めて一ヶ月ちょいになるけど、最近は暗い話しが多かったのでたまにはアホみたいな誰の役にも立たない本来のクソエッセイでも書こうかな、と思った訳なのです。エッセイ下手だからね、僕は。倒置法イェイ。

さっそく、表題の件を話そう。
僕には兄が二人居るが、一人は親が離婚する際に別れた父方に残ったので籍が異なっている。色々事情があって、今後の人生でもう二度と会うことはない。
もう一人の兄は長男で昔から「俺はナウシカと結婚するんだ」と大真面目に語るほどの大オタクではあるのだが、この兄も二年前に「二十一!」も下の相手と再婚をして、婿に入ったので籍を抜けている。
つまり、僕は上に兄が二人もいたのにこの二年で自然と繰り上げ長男になってしまったのだ。

けれど僕は結婚をする気はおろか、恋人を作ることもない。
なんなら恋のキッカケになりそうな事自体全力で避けているし、趣味はなんですか? と女の子にルンルンな声で聞かれたら

「こげん僕は、週末ば暗い部屋に引きこもって、ゴッドファーザーの馬の首ばっか一晩中描いてるったいね! どわっはっはっは!」

と答えてしまいそうなくらい、とにかく避けまくっている。
なので僕の代で一族の名は滅びるんだけれど、元々の戸籍ではないのでまぁ許してニャン☆という気分でいるし、親兄弟もすっかり諦めてくれている。

で、このナウシカ兄が中々ぶっ飛んでいる人間なのである。
詳しい事はキリがないのでピンポイントで話そう。

高校二年の頃、僕が兄と出かけているとコンビニで僕の中学の頃の同級生の女子とバッタリ会った。久しぶりだったので番号を交換して別れると、兄は異常なまでにその女子の事を僕に尋ねてきた。あぁ、これは一目ぼれをしたな。
そう思ったがムリムリ、と思い僕は兄を放置していた。
しかしだ、僕は成人式の日にその子からこんな事を言われたのだ。

「私さ、高校二年の時タケちゃん(僕のあだ名です)の兄ちゃんとデートしたんだよね」

僕はビールを噴出した。噴出した勢いで天井に頭をぶつけ、気絶しそうになった。

「どどどどどどどど、どういう事!?」
「えー、なんか大晦日の夜中に電話もらってさぁ」
「電話!? なんで兄貴がおまえの番号知ってんだよ!?」
「岳の携帯電話から番号盗みましたって言ってたよ。デートしたけど兄ちゃん全然喋らなくってスッゲーつまんなかった! あははー!」
「ズコーーーーーーー!!!!」

その年の大晦日、確かに僕は新年を迎える前に未成年飲酒をしこたまして部屋で眠りこけていた。兄は眠っている僕から携帯電話を奪い、番号を盗み、知らない間にデートにこぎつけ、いつの間にかフラれていたのだ。

そんなの知らなかったよ!

そう言う事が他にも多々ある。一度目の結婚の際も、いつの間にか付き合っていた「くるり」のファンの人と婚約していて、相手の両親から猛反対された為に自分のアパートに未来の嫁さんを軟禁して軽く警察沙汰になったり。

数年前はある日突然大量の荷物と共に実家に現れ

「今日から住むから、よろしく!」

と言い出したと思えば知らない間に家を出て行ってたり。
基本的に自分の本能にとことん忠実な兄なのである。

そんな兄のおかげで大変な目に遭った事を最後に書こう。

高校三年の夏休み。兄が泊まりに来ていた晩の事だった。
酒に強い兄はウィスキーを一瓶まるまる空け、珍しくヘベレケになっていた。僕は変な巻き添えを食らいたくなかったので、一人で部屋に篭っていた。
すると、兄が「追いウィスキー」を手に部屋にやって来た。

「おい、何で岩竹さんは俺に振り向いてくれないんだよぉぉぉぉ!」
「うわっ! 酒くせぇ! あと、誰それ?」
「ヤオコーの店員さんだよぉおおお! かっわいいんだよぉおおお!」

激烈惚れっぽい兄の無謀な恋バナを、僕は一方的に聞かされ続けた。
あーそう、大変だー、がんばれー、あーそう、大変だー、がんばれー
と言う適当な相槌も五周を過ぎた頃、僕は急に便意をもよおした。お腹がグルグルと鳴り出し、冷や汗も出てきた。すぐさまスクランブル警報が発令された。

「ちょ、ちょ、岩竹さんは分かったからトイレ行って来る」
「待てぇよ! うんこなんかいつでも出来るだろ! この恋は今しかないんだよ!」

兄よ、あなたの猛烈な恋心と同じく、私のこの猛烈な便意は明日には持って行けないのです。だからどうか、道を開けて下さいませ。
そんな風な事を僕は兄に伝えて立ち上がろうとしたが、兄は僕の肩をグググググ! っと力を込めて押さえつけ、強制的に座らせた。
僕の腸内ではもう時限爆弾のカウントが始まっていた。

「も、もういい? あの、岩竹さんの事は分かったから、多分上手く行くよ、大丈夫だからウンコさせて」
「分かってねぇんだよー! 可愛さが伝わってないんだなぁー! あのな、おまえが思ってる五十倍は可愛いんだから! まずだな」

嗚呼----!嗚呼ーーーー!!嗚呼ーーーーー!!!

地獄の底の責め苦を受けるような気分で兄の「岩竹さんがいかに可愛いか論」を遣り過ごそうとしている内に、僕の肛門にブルース・リーが宿り始めた。
意識は朦朧とし始め、手のひらも汗ばんでいる。
兄はおかまいなしで話した事もない恋の相手の話を延々僕に聞かせ続けている。
身体が無意識にブルブルと震え出し、肛門のブルース・リーは涙目で叫び出す。

嗚呼、これは自室で漏らしてしまうかもしれない……。

そう思った瞬間、兄は立ち上がって何かを喚きながら部屋から出て行った。
話したい事を話したいだけ話してスッキリしたらしかった。

よし! トイレに直行だ!
そう思って立ち上がった瞬間、感情に飲み込まれてアチコチが過敏症になった肛門ブルース・リーがぶち切れ、真夜中に叫び声を上げてしまった。

「ドントフィーーーーーー! ティンクッ!!」

アチョーーーーーー!!
ホワチャアアアアアアアアアア!!!!
ブリブリブリブリブリブリブリブリ!!!!

ツエエエエエエエエエン…………!!!!(泣いている)

僕は中腰の状態になったまま、燃え尽きた。

闘いに負けたトランクスをコンビニのレジ袋に入れ、そっと真夜中に家を抜け出した。
月が輝く夏の夜。僕は室伏みたいにレジ袋をグルグルとぶん回し、涙を流しながら小林さん家の竹薮の中へ向かって放り投げた。

後にも先にも、自室で盛大に漏らしたのはあれが最後だった。

あと、小林さん。もしもレジ袋を見つけていてビックリした記憶があったならごめんなさい。あれは僕ですが、元凶は僕の兄です。
そんな僕の兄は今、長野県で農家の婿として幸せに暮らしています。
だから……

許してニャン☆

サポート頂けると書く力がもっと湧きます! 頂いたサポート代金は資料の購入、読み物の購入に使わせて頂きます。