お化け屋敷が大嫌い、というおはなし

こんばんわ。こんにちわ。おはようございます。
いつ誰が見ても大丈夫なこの多角的な挨拶! 幅広い視野! 繊細な心遣い! 日本人の見本のような挨拶。いや、愛・察。
嗚呼! なのに、何故、私は独身貧民なのか!
気付けば四十代も目前に迫っている! 迫ってるならいっそ正面衝突して死んでしまいたい! 嗚呼! はい、ここまで。
貧民なのは色々とやる気がないからです。はい。

本題。

皆さん嫌いなものありますか? え、無いって? 偉いねぇ(ニヤァ)。
まぁ生きてりゃ虫だの食い物だのプロレスラーだのオタクの一方通行な長話だの、苦手なもんのひとつくらいは出てきますよね。人間だもの。326(北島)。

だいぶすっちゃかめっちゃかな出だしですが、今回は僕の苦手なもんでも書いてみようと思います。
まず、人間全般! と言っちゃうと元も子もないので、身近な所から。
納豆が苦手です。
給食で残して「食べるまで帰さない」と先生に言われ、掃除の時間が終わっても納豆とにらめっこしていた小学校時代が懐かしいです。
結局食べずに「おまえはもう一生納豆食べるな!」と先生に言われたので、未だにその言い付けを守ってる良い児童が僕です。先生! 吉田先生、覚えてますか!?
先生、もう死んでっかな。

さて、表題の件ですが僕はお化け屋敷が死ぬほど苦手です。嫌いです。
心霊スポットの方がまだ耐えられるレベルです。
いやいや、逆じゃね? と頭にクエスチョンマークが浮かんで僕に全力で投げ付けたくなったと思いますけど、これにはれっきとした理由がある。

自然(ナチュラルおばけ・プレーン味)はたまたま出て来て写真に写ったり肩を重たくしたり、要は出るか出ないか不確定じゃないですか。
まぐれといえばまぐれ。何も感じない人は何も感じない。
だから「まぁ、今回は勘弁してやるよ」って気にもなる気がしてる。

かたや! あのお化け屋敷とかいう恐ろしい真っ暗な箱!
あれは何ですの!? 誰が考えたんですの!? 

あの箱に入ると絶対お化け(人工おばけ・味濃い目※パンチ味)出るじゃないですか。大体、入り口からしておっどろおどろしい造りしてるし。
小さな頃高崎市にあった「カッパピア」って遊園地で見たお化け屋敷がそれはそれはもう怖くって。
入り口に晒し首が並んでたりして「はい! 怖いです!」って雰囲気たっぷりだったのでね、入る勇気なんて無かったんですよ。
でもディズニーランドのホーンテッドマンションのお化けは大丈夫だった。
あっちのお化けは(おふざけお化け・駄菓子味)って感じだったので。
墓が倒れてゾンビが出て来てキャー!って何だよ。墓戻れよ! 寝てろ!
って心の中で突っ込める余裕はあったものね。

そんなこんなでお化け屋敷を避けて生きてきた私も、十八歳の時に当時付き合っていた彼女に誘われてついにデビュー戦を迎える訳です。
「はなやしき」でした。えぇ、忘れもしません。
入ってすぐに真っ暗なエレベーターに乗りましてね、そこからもうほとんど意識がありません。
彼女も怖さのレベルが想像以上のクオリティだったのか、チープな感じが逆に怖かったみたいで。お化け屋敷を出てから二人揃って過呼吸になりました。

お化けが出る箱は心の臓にとてもよろしくない。これはアカン。と思い知ったんですけどね、それから十年後ですよ。
その頃仲良くしてた女の子(カオリちゃんと称します)とお台場へ行った時、イベントでガチガチに怖いお化け屋敷が開催されてたんですよね。

「お願い! 入ろうよ! 楽しいよ!」
「やだいやだい! 俺はやだい! でっけー玉見てるから(フジテレビ)行って来ていいよぉ! やぁだぁ!」
「ほらぁ、せっかく来たんだからぁ!」

とカオリちゃんに無理やり腕を引っ張られ、「生徒全員が自殺した教室の、とある女の子の怨念が残された机へ向かう」という超ダイ・ハード級のお化け屋敷へ入ることになってしまったのです。
それはそれはもう怖そうで、非番のデカもマイアミにでも逃げ出すレベルでした。
カッパピアの人形の晒し首にビビッていた頃が懐かしいです。
入り口前であんまりにもゴネ過ぎて、周りにいた小学生に「アイツだせぇ」と言われました。それでも入りたくなかった。
でも身体は何故かお化け屋敷の入り口に入ろうとしてるんです。カオリちゃんに無理やり連れて行かれてますから。
何故か二人分のお金を払うという謎の超常現象まで起こり、不気味な不気味な真っ赤な薄暗い懐中電灯を入り口で渡された僕は震えながら係員に聞きました。

「ここ、すごく怖いみたいですけど、やっぱり怖いんですか?」

係員もプロなので「それっぽい」口調で答えてくれました。

「それはもちろん……この中は亡くなった生徒達の怨念が渦巻いています……その薄暗い懐中電灯だけが頼りです。彼女さんを守ってあげて……下さいね……何が起こっても……」
「彼女じゃないし違うしそれにこの懐中電灯、電池がないみたいなので交換してもらえませんか!? パナソニックの電池で凄いのあるじゃないですか! あと若干ですけど僕は心臓が右に傾いておりまして、いやはや、その影響なのか玉の方も若干右が」
「はーい、いってらっしゃーい」

逆らってみたものの、回転率を下げる客は死ね! おまえが化けろ! とばかりに問答無用で扉をバターン! と閉められ、廃墟となった校舎(という設定)の中へ。
こうなると僕はもうガキ使のヘイポーとなんら変わりません。
脇汗びっしょり、身体もガタガタ震えてまいります。
おまけに入り口から一歩も動かず本気でカオリちゃんにキレる始末。

「暗すぎて何も見えないじゃないか! 何がどうなってんの!? ちょっとこれ、何で!? て、て、て、て、て、停電なんじゃないのぉ!?」
「ちょっと、落ち着いてよ。ゆっくり行けば大丈夫だよ」
「こんな小さな灯りで!? カオリちゃん先行ってよ! どうせお化け出るんでしょー! もうやだぁー! 出してぇ!」
「お化け屋敷ってそれを楽しむんだよ」
「楽しめるもんか! おーい! 聞こえるか、お化けー! どうせ出るならもう一気にここで出ちゃってよ! はい、もう終わり終わり! アルバイトお疲れ様! もういいよー!」
「ほらぁ、行くよ!」

カオリちゃんは懐中電灯を持つ僕の腕を取って歩き出した。
恐怖によるパニックの前では、恋のドキドキなんてまるで無力である。
僕はカオリちゃんに怒鳴りまくった。

「ふざけんなテメー! お化け出たらどうしてくれんだよ! 勝手に進んでんじゃねーぞコラ!」
「入ってからまだ二mも進んでないよ。後ろの人来ちゃうよ!」
「そんなの知らない! 存じ上げない! あ、そうだ! 後ろの奴先に行かせて、驚いてる隙に走って追い越そう、それでまた先に行かせて……」
「あー、もう。ほら、歩いて。早く早く」

お化け屋敷をエンタメではなく生命の危機として感じていた僕はカオリちゃんに怨み節を延々と吐きながら重い足を何とか先へ伸ばし始めた。
ほぼ真っ暗な通路を進むと例の「生徒全員が自殺した教室」の前を通る。
それは戦時中のような古臭い造りで、窓からおどろおどろしい雰囲気の教室が見えてきた、と思った矢先であった。
窓際を通っているとガラスいっぱいに子供の手が現れ、ガラスをバン! と叩いたのだ。
僕はショックのあまり、理性を放棄した。

カオリちゃんを放置し、懐中電灯を持ったまま逆走し、その懐中電灯さえも放り投げ、壁を叩きまくった。

「出してぇ! ここから出してぇ! もういやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 
壁をバンバン叩いているとお化け役の係員が駆け付け、僕を誘導しようとした。

「ぎゃああああああああああ!」
「お客さん、こちらです、脱出通路はこちらですから」
「出たぁぁぁぁぁぁあああ! いやぁあああああああああ! 私に触らないでええええええ!」
「このままだと永遠に帰れないっすから、お願いですから言うこと聞いて下さいよ」
「ひゃああああああああ!」

こうして僕は無事、お化けに首根っこを掴まれながらお化け屋敷を出た。

カオリちゃんも係員も爆笑していたが、僕はそれから随分長いこと放心状態となっていた。
それから僕は一度もお化け屋敷へは行っていない。カオリちゃんとも結局付き合わないまま、当たり前のようにごく自然と連絡も着かなくなった。

今後、お化け屋敷には死ぬまで行かないと思うけど死後の世界があるなら、あんまり怖くない場所であることを願っている。



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