【小説】 高架下にて 【ショートショート】
深夜一時。
繁華街で飲み歩き、北口から南口へ抜ける高架下に入る。
人の気配もない夜に、寒さを堪えて襟元のマフラーを掛け直す。
高架下半ばまで歩くと、向こうから怒肩で黒いジャージ姿の若者がやって来るのが分かる。
染め上げた髪の両脇を刈り上げていて、赫く血走った眼が一瞬こちらと合う。
何事もないように。
そう祈りながら、擦れ違う。
安堵を覚えながら、私は彼が襲い掛かって来るのではないかと思い、振り返ってみる。
終電間際の電車の通る音が響く高架下に、擦れ違ったばかりの彼の姿がないことに私は震駭する。
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