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自由研究ってまだやってんの? 【エッセイ】

暑い暑いと言っているうちに、夏の日は過ぎて行く。
子供の頃を思い出して夏休みは何をしていただろうと思い出すと、山に住んでた頃の遊びはいつも川や沢だった。 

毎日ザリガニや沢蟹を釣ってはキャーキャーはしゃいでいたのだけれど、よくもまぁあんなの毎年やって飽きなかったもんだ。山の子供の遊び方はすごい。

中学生の頃になると、いよいよ僕は人との感性のズレを感じ始めていた。
中三の頃なんて僕らのグループは陰で「変態倶楽部」と呼ばれていたほどだ。確かに、その通りだった。

中学の夏休み。僕はクーラーの付いてない部屋に一人引きこもり、朝をひたすら掻くのを我慢するという苦行を自らに強いていた。理由は涼しい部屋へ行くと涼しいのがより涼しくなるからだ。単純明快。
そんな苦行を行っていると、涼しい部屋で再放送のタッチを観ていた妹達がドアから顔を覗かせ、

「うわー! バカじゃない!?」

と毎度叫んでいたのだが、事実、バカなのだった。
物凄く何かを考えていそうなツラをしながら、実際何も考えていない時もある。

ちなみに、その苦行が後に功を奏した試しもなく、大人になって熱中症で二度も運ばれる始末。
基本的に頭が能天気過ぎる中学生だったので、授業はテストの為にあるものではなく自己の知的欲求を満たすものだと信じて授業だけは真面目に聞いていた。

しかし、知的欲求の為だけに授業を受けていたので年間遅刻数100、欠席30の体たらくだった。本当に何も考えて無かったのだと思う。

そんな考えてなさすぎの僕が三年間で唯一まともにやった「自由研究」の題材がこんなテーマだった。

・人間は5分をどう感じるか?

時計を見ながらの5分、空を見ながらの5分、テレビを観ながらの5分……それぞれの5分を研究し、何が一番苦痛か、楽しいかをまとめあげた。
これを思いついた瞬間、僕は

「埼玉の片田舎に大天才少年あらわる!!」

とニュースにされる自分を想像してワクワクしたものだ。

発表当日。鼻息荒く僕は研究の全てを堂々と発表した。
クラス中に咲いたのは完全にポカン顔の生徒達。眉を顰める女の子。何故か爆笑する男子もいた。
しかし、僕はめげることなく発表を最後まで終え、先生にこう尋ねた。

「先生!この発表、どうですか!?」

実に面白い!と何処かの福山ばりの返事を期待していたのだが、実際に先生から帰って来た返事は

「おまえ、それは理科じゃなくて哲学だろ」

だった。しかも真顔だった。
ガーン!と落ち込み、理科に対してのヤル気も削がれ、その期末の成績は5段階中最低の1だったのは言うまでもない。

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