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マーケティングは仕組み作りである……らしいのでまずは社内から小さなDXを、の話

記事中に僕が参考にした書籍のリンクを貼っておきますので、よければご活用ください。

昨年、新卒二年目で早くも異動となり、新設されたマーケティングの部署でどうやったら本を売ることができるかを考えた一年でした。

そしてその一年は、新コロのせいで(或いはおかげで)テレワーク/リモートワークへの移行が進んだ一年でもあり、働きやすくなるのと同時にどこででも仕事ができるような環境を作らねばならない一年でもありました。

マーケティングの部署とはいってもメンバーは四人、しかも役員、部長、副部長とペーペーの僕という布陣で、要は販売セクションの何でも屋、遊撃隊、特命係……。そんなわけでいわゆるデジタルネイティブ世代の僕に、デジタル環境の構築というミッションが与えられるのは当然の成り行きだったのでしょう。しかもガジェット好きな部長の下とあってはなおのこと、です。

情報共有フロー整理と課題の洗い出し

僕が初めに手をつけたのはパブリシティ情報の共有フローでした。僕の会社は毎月の刊行点数が大変に多く(新刊比率の増加と経営、現場での作業の増大等の話はまたいつかどこかで)、そのそれぞれがテレビや新聞や雑誌やら様々な媒体に取り上げてもらったり、或いは自ずからどこかに広告を出稿したりするのでこうした情報を整備し直し、活用することができればと考えたわけです。

まずは現状の把握ということで、それらの情報がどのように流れているのかを調査したところ、パブリシティ情報活用のためフローというのは五つのアクションになることがわかりました。すなわち、収集・整理・共有・実行・検証です。

収集とは文字通りパブリシティ・広告関連の情報を広い集めることです。どこかの媒体で取り上げられるパブリシティに関する情報はそれぞれの書籍やムックの担当編集が第一に把握していることが多く、各編集部ごとに情報を取りまとめて販売セクションの担当していそうな人を宛先やらCcに入れたメールが定期的に送られてくるという状況でした。

ところがメールを誰に送るのかというルールが整備されておらず、送る側はとりあえず関係しそうな人を次から次へとCcにぶっ込み、送られてくる側の情報が氾濫したり、或いは枯渇したりという問題がありました。

整理とは編集側から送られてきたパブ情報を販売セクションの中で整備して溜め込んでいく作業です。

当時よくよく現状を調査しているとPRを担当する僕の同期がほぼ一人で、送られてくるメールからパブ情報を抜き出してエクセルに整理する作業をしており、かなり業務量に負荷がかかっていることが明らかになりました。

共有とは整理されたパブ情報を販売セクションの中で共有するアクションです。

前述した通り編集からダイレクトに送られてくるメールにアクセスできる人と、なぜか送られてこなかったり大量のCcに埋もれてしまう人との間に情報の格差が生まれてしまうため、それを解消する必要があります。また重要なパブ情報に関しては改めて周知徹底することも必要でした。毎週火曜に大きな会議室で販売セクションの全体連絡会を行っており、その場で直近のパブリシティ情報リストがA3用紙裏表に細かな文字で印刷され、配布される形で共有するという、今思えばかなりアナログな方法がとられていたものです。

実行は共有されたパブリシティ情報を元に取次営業担当・書店営業担当が具体的なアクションを実施するフェーズです。「○月○日△△新聞に取り上げられます」的な情報を盛り込んだ注文書を書店に一斉FAXするというのが主なアクションでした。

最後の検証は本が媒体に取り上げられた結果、どれくらい売り上げに影響があったのか、実施したアクションは的確だったのか、を省みる段階です。

個人が各々やっていたものの、それらが具体的な数字を伴い全体で共有されていないというのが当時の現状でした。

こうして五つのフェーズそれぞれに問題があることが分かり、またフェーズがバラバラに行われている感があったため、一つの場所で一気通貫して管理することを志向しました。その際に管理する場所として選んだのがGoogleスプレッドシートです。

スプレッドシートを使った情報共有と改善

皆さんご存知の通り、スプレッドシートはオンライン上で共同編集・共有が可能なGoogle版のエクセルのようなものです。

「パブ・出稿管理表」というスプレッドシートを一つ作り、そこに情報を蓄積することで業務効率が上がるのではないかと考えていました。

そこで収集のフェースでは編集側から送られてくるパブ情報のメールに必ずPR担当の三名を入れてもらうようにし、整理の段階ではこの三人が分担して送られてきたパブ情報をスプレッドシートに入力するという流れにしました。

また共有の段階では全部員にGmailアカウントを取得してもらうことでスプレッドシートへの全員のアクセスを可能にし、そもそもの販売セクションの全体会議もzoomを用いたリアル×オンラインの会議へ形態を変え、zoomによる画面共有で資料を映すことにより印刷資料の必要性がなくなりました。

アクションの段階で主にできることが一斉FAXなのはあまり変わりませんでしたが、一斉メール配信の環境も整えることにより、希望する書店・書店員さんに文字ベースで情報を発信することも可能にしました。そして蓄積されたパブ情報に検証の欄を用意することで、パブが発生した後から効果測定をすることも可能にしました。

当初作っていた管理表のプロトタイプのリンクを貼っておきます。ダウンロードして中を見たり活用してくださいませ。

見ていただくとわかるのですが、優先度の星をつけるとその行の「状況」という項目が「未対応」に、対応を記入すると「実行中」と表示させたり、データベースから直近二週間・過去二週間の分だけ抜き出して別タブに表示させたりとかなり凝った作りをしています笑(これもどこかのページを参考にしてつくったものです)

おかげで表自体が重くPCによっては読み込みに時間がかかりすぎたり、項目が右に伸びすぎて一画面に収まりきらないというような問題が発生することになります。

また衝撃的だったのがこれらの情報を手作業でカレンダーにして見ていた人がいたことです。何を言っているんだという方は上のリンクの表の出稿カレンダーというタブを見ていただきたいのですが、要はスプレッドシートの枠をアレコレしてカレンダーのようなマス目を作りそこに入力し直している人がいたのです。これが神エクセル()の使い手か……!と当時は思ったものですがパブリシティのような情報はやはりカレンダー形式で見られるのがもっとも視認性に優れているということなのでしょう。データベース的なものはPCにとっては管理が楽ですが、人間の目には優しくないのです。

ということで今度はスプレッドシートに入力された情報をカレンダー形式で出力させてあげようということになりました。ここで活躍するのがGoogleカレンダーとGoogle Apps Scriptです。

スプレッドシートからカレンダーへの連携

上述したように表自体が重たくなっていたので無駄に凝った項目はバッサリ削除(検証の部分も同じ表の中で表現するのは難しいということで削除しています)し、データベースそのものを簡素化しました。

その上で、GAS(Google Apps Script)を使って情報をGoogleカレンダーに表示するということをしてみました。GASというのはエクセルでいうマクロや簡単なプログロミングのようなもので、スプレッドシートの拡張機能です。(スプレッドシートのツールからスクリプトエディタを開くとGASを編集できます)

作ったコードが動かないと頭が痛くなってくるのですが、正常に作動すると「エウレカ!!」と叫ぶほど快感です。(『インターステラー』を参照)

とは言ってもマクロやプログラミングなどほとんどやったことのない僕にはハードルが高く、Google先生が教えてくれたいくつかのサイトで紹介されていたスクリプトを切り貼りしてカスタムしました。

参考にしたサイトの一部をここでもご紹介しておきます。

さらにスクリプトエディタのトリガーのところから、スプレッドシートに入力があった場合は自動でカレンダーに吐き出されるように設定し、パブ情報をカレンダーで表示できる設定が完了しました。

特にネット書店担当は在庫管理のために日々のパブ情報を掴んでおく必要性が高く、その役にも立ったかと思います。

Slackとの連携によるプッシュ式通知のススメ

こうしてパブ情報の整備は一定のところまで来たのですが更に便利になったのがSlackとの連携です。

一年前の販売セクションではまだまだメールでのやりとりが主流でした。ところがリモートで仕事をする人が増えた結果、自宅のPCやケータイでも手軽に連絡が取れるようにということでGoogleのチャットツールであるハングアウトをまずはセクション全体に導入しました。

おかげでチャットツールへの抵抗感は少なくなったものの、ハングアウトでは物足りない点が出てきました。UIの問題なのかどうしても個人同士のクローズなやりとりが多くなってしまうのです。またハングアウトがサービス終了するという話も聞こえてきていました。

すでにファイル管理にGoogleドライブを使っていることもあるので、Gsuiteの有料版に全員で加入し、チャットツールも整備しようと考えたのですが、そのためには会社のメールアドレスを登録してどうこうする必要があり、社内の情報システムを管轄する部署から反対されてしまったため断念。

チャットツールだけは別のシステムを使わざるをえなくなったためSlackの導入に踏み切りました。

既にハングアウトでチャット自体には慣れている人が多かったものの、より自由度の高いSlackに戸惑う人や自分のPCの設定に手こずる人も多く、営業セクションの各部から若手をSlack推進委員に任命してフォローしてもらうと同時に、KADOKAWAさんでは使い方やマニュアルに漫画を作って配布したという事例を目にし、僕の場合は動画だ!!と思い立って実写の使い方動画を3本作成したりしました。

(なぜか会社にあったパンダの被りものを被り、マニュアル動画を作成した僕の動画サムネ。長すぎたせいか再生数が伸び悩む)

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最近ではほぼ全員がSlackにも慣れ、勝手に自作スタンプを登録する人が現れて盛り上がったりという素敵な流れも生まれています。(ちなみに最近はプイプイモルカーのスタンプが登録されていました笑)

ちなみにこのスタンプ、出版社の営業セクションでは書籍のPOPを作成することも多いと思うのですが、その際の素材のイラストをスタンプ化すると盛り上がるのでオススメです。僕の場合は『チーズはどこへ消えた』のチーズやネズミ、『殿様は明治をどう生きたのか』のPOPに使った先輩社員による殿様のイラストなどをスタンプ化しています。

と、若干話がそれてしまいましたがSlackは外部のアプリケーションとのコラボが本当に自由自在で、それはGoogleカレンダーとの連携も例外ではありません。

先ほどカレンダーに吐き出すようにしたパブ情報をSlack内の特定のチャンネルにも表示させることができるのです。この辺りはガジェット大好きメガネ部長が設定してくれ、現在は週の初めに一週間分のパブが、平日の朝にその日のパブが、それぞれプッシュ通知のように送られてくるため見逃し防止に役立っています。

小さなDXの積み重ねがいつか全社のDXに繋がってくれるといい

というようなことをやっていたらあっという間に一年タイムアップ。文字に起こすとこんなことにどれだけの時間をかけていたんだと思われるでしょうが(僕もそう思います)実際に社内で色んな人に話を通したり、デジタルに抵抗がある人たちを丁寧にフォローアップしているとこれだけで精一杯でした。

とはいえ環境をある程度整備したことで、一人の悩みが実は他の人の悩みでもあったことが可視化されるなどのメリットも多く、やってよかったなあと思えるお仕事でした。

ですがまだまだ改善できる点は残っています。特にチャットツールに関しては、Slackは部署ごとにそれぞれワークスペースを立てているだけではその真価を発揮できませんし、部署ごとに異なるチャットツールを使っているという頭の痛くなる状況も社内では発生しているので4月以降はその辺りの整備をできるようにしたいと思っています。

皆さんの会社でのデジタル環境もよければコメントなどで教えてください。ノウハウを共有して小さなDXを進めていきましょう。

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