見出し画像

可能性を秘めた蔵の姿 〜喜多方ワーケーション日記 ♯3〜


蔵を知れば見えてくる?

喜多方の蔵についてもう少し。

蔵には大きくいくつかの用途で分けられる。
倉庫や貯蔵庫として以外に、代表的なものは店舗としての蔵(店蔵)、住まいとしての蔵(蔵座敷)、喜多方の伝統工芸でもある漆器職人の作業場としての蔵(塗り蔵)などがある。

現在ある4千棟余ある蔵のうち、32棟が登録有形文化財となっている。
喜多方の蔵の町並みは、一ヶ所に集中して連なっているのではなく、大きく2ヶ所(それ以外にも点在しているが)ある。

喜多方の蔵の代表格である旧甲斐家蔵住宅(現在は改修のため休館)
店蔵と座敷蔵が合わさった、喜多方では珍しい黒漆喰の蔵

現在の中心地であるふれあい通り(中央通り)のある小荒井地区、そしてもともとの中心部だった小田付(おたづき)地区である。
後者の小田付地区が2018年に全国で118番目の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に指定されたそうだ。(ちなみに前回紹介した山中煎餅さんがオープンさせた宿泊施設の蔵は、この両エリアでは無いところにあった倉庫蔵をリフォームして作られた)

この小田付地区は、近世から酒や味噌、醤油の醸造業が盛んになり、店蔵など多様な土蔵等が建ち並ぶ他、蔵座敷もいくつか点在しており、町並みは、在郷町・醸造町としての特徴的な歴史的風致を形成しているので、このおたづき蔵通りは何とも言えない景観があるのだ。

だがこの景観を作っている蔵全てが現役バリバリの蔵ではないと言うことを目の当たりにする。

全く使われていない立派な蔵座敷がいくつか見受けられた。
こんなにも蔵座敷があるのになぜこれを活かした宿泊施設やレストランなどがないのか。(カフェはひとつあった)
先に紹介した山中煎餅さんの蔵一棟貸し宿泊施設が、喜多方では初めて蔵に泊まれる施設だと聞いて、実は内心は驚いていたのだ。

これは喜多方市が抱える観光客の滞在時間の短さ、観光消費額単価が低いという課題にもつながることだと思った。
そもそもなのだが、この喜多方市内には宿泊施設がホテルや旅館を含め数えるほどしかない。受け皿が小さいなと正直思ったのだ。

情緒ある景観だが、使われていない蔵座敷の姿も目立つ小田付地区
TOP画像の蔵座敷も以前は宿泊施設だったそうだ、立派な松の木が泣いていた

ただこれは聞く話によると、宿泊施設での雇用が難しい(足りない)という問題や、年間を通して安定した観光客の維持(夏は暑い、冬は寒い)が難しいという問題もあり、先のコロナ禍でも老舗旅館が廃業に追い込まれたりなどの様々な背景があるようだ。

受け皿が小さいからなのか、観光客が少ないからなのか、どちらが先に来る問題なのかはわからないが、一つ言えることはこの最大の資産である蔵をまだまだ活かしきれていないのが現状というのは数日滞在したこの僕でもわかったことだ。何かしらのテコ入れや課題解決の方法があるんじゃないかと思った。

ただこのエリアは2018年に重伝建に指定されたばかりであり、このエリアの蔵を利用した新規事業に対しての補助金もあるようで、少し前からこの通り沿いにオープンした店舗も少しずつ増えてきているようだ。

今回喜多方市さんのワーケーション拠点もこの通り沿いにあり、なかなか趣のある蔵をコワーキングエリアとしていた。最初は寒い蔵の中だが、気密性のおかげかストーブをつけると一気に温まる。(エアコンではなくストーブというのがまたいいのだ)
ここで初めて蔵の洗礼を受けたのだが、今年一番と行っていいぐらいに思いっきり柱におでこを音がするぐらい(いやした)ぶつけてしまった。。。

喜多方ワーケーションの中心拠点ととしている、ワーケーションHUB「醸し場」
いわゆる蔵のコワーキングスペースだ、頭上にはご注意を。。。
レンガ造りも合わさった「醸し場」の外観

“醸し”のまち喜多方

この日の夜には素敵なワイン会にご招待頂いた。
ここでもひとつ新しい蔵の用途に出会った。
和飲蔵(わいんぐら)だ。

二階建て構造になっており、一階はワインショップ、二階は天井が低く屋根裏部屋みたいな構造になっており、何とも言えないプライベート感があって大人の秘密基地のような雰囲気だった。

ここで毎月ワインテイスティングを兼ねた食事会を開催しているらしい。
素敵すぎる。。。
昼間に思いっきりおでこをぶつけたせいか、本能的にかがむような姿勢が身についていることに驚いた。人間はやはり痛い目に遭うとそこから何かを学ぶらしい笑

明治初期に建てられた呉服店の蔵を改装
蔵は温度・湿度の管理がしやすく、ワインの貯蔵にも適している

今回は漆器職人の「塗り蔵」にはお邪魔できなかったが、初日にオリエンを受けた場所は、その「塗り蔵」を改装したカフェだった。蔵には何というか物作りをする人間が好む雰囲気を纏っていると思った。
この蔵というのは職人でなくともデザイナーやアーティストにも最適なんじゃないかと正直思った。蔵という作業場を言い換えてみると、これは立派なSTUDIOなんじゃないかと思った。

この空が広がり落ち着いた街並みや人口の数、澄んだ空気と綺麗な水、体にも優しい醸造の数々、何かに集中する、神経を落ち着かせるには最高な場所なんじゃないかと思った。(この後に寄った会津若松は完全な街、東京郊外の駅がある街とさほど変わらないのだ)

醸造蔵で日本酒やワインを飲むのは最高な気分になれると思ったし、
これは喜多方の蔵であるからこそできることではないかと思った。

ワインに舌鼓しながら、重伝建の小田付きエリアに素敵なレストランやカフェ、ショップやSTUDIO、そしてランドマークになるような宿泊施設があるイメージを想像してみるとワクワクした。それぐらいにポテンシャルはまだまだ秘めているのは間違いない。

こんな素敵なところで毎月開催していたら参加してしまう。。。

煎餅体験のようにブワッと一気に膨らむのは難しいが、一つ一つの点が少しづつ面になるよう醸成されていくはずだ。まさに「“醸し”のまち喜多方」であることには間違いないし、さらに醸されていくことを期待して止まない。

#4へつづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?