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案ずるより横山やすし

私は妖怪を飼っている。
しかも妖怪はコンビだ。

街を歩いていると、
ときどき良さげなお店を見つけるが、
「えいヤァ!」と、
気軽に入れないお店がある。

裏路地にあって、
何だか面白そうだけれど、
ちょっと清潔感が気になる店とか。

すると、あいつが出てくる。
わたしが迷うと顔を出す、
大きな目玉の主、

妖怪:「きよし」

またの名を「躊躇」

「きよし」はしっかり者で、
あまり新しい冒険を好まない。
混乱が起きないように、
内部をいつもしっかり固めて、
キチンと清潔に暮らしている。

「何でも口に入れたらお腹を壊すやろ!」
が口癖。



でも「きよし」には、
妙な相方の妖怪
「やすし」がいる。
またの名を「冒険」

「やすし」の住む場所は、
内と外の間にある境界、
その線上に住んでいる。

だから、G線上の「やすし」

でも、
バッハのように、厳格で荘厳ではなく、
バッカみたいに、酒飲みでギャンブル好きだ。
清潔好きでなく冒険好き。

わたしが「やすし」を、
心の平和島に飼うようになってから、
聞いてみたことがある。

境界って、
内?

それとも
外?

どちらに属するの?

そんなん知るかいっ!
わしは、どっちも自由に行き来すんねん。
吉本も競艇場も行くんや!
過去も未来もフリーパスや!
と、まくってくる。


それ以上、
話にならなさそうなので、

わたしの内側に住む、
しっかり者の
「きよし」に聞いてみた。

「きよし」と「やすし」って、
どう言う関係なの?

せやなぁ、

お互いを必要としていて、
腐れ縁みたいなものだけど、
何だか離れがたい関係だから、

たとえば、

「体感」 と 「言葉」

みたいな関係かなぁ。



体感が「きよし」?

せやなぁ、

体感ってのは内部で起きるやろ?
食べたものを、
エネルギーに変えるのは内部やろ。
しっかり生活してるのは
「きよし」や。


じゃあ言葉は
「やすし」?

せやなぁ、

あいつは、境界に住んでいるから、
っていうか、
安住せず、フラフラしてんねんけどな。

「言葉」もカラダの周りで、
何だかフラフラしよるからなぁ。
「やすし」は、言葉やろなぁ。

でも言葉だけだと、生活が安定せんで、
わしの稼ぎで、ギャンブル行って、
よく借金作って、
わしが保証人になったりして、
苦労するんやけど、
たまに、大穴当てたりすんねん。

でも大穴ってのは、
競艇だけやなくて、新しい世界の事やねん。

あいつは、どこでも躊躇なく行くからなぁ。
清潔とか気にせず、何でも食うからなぁ。

わしは、それが苦手やねん、
お腹壊しそうでな。
ホンマ大丈夫か?と、
案じてまうんや。

でもな、
わしが二の足踏んで案じていると、
なぜか、あいつが帰って来よるんや。


二人はどこで会うの?

境界で会うんや、
カラダに例えると皮膚やな。

カラダの内と外を分けるのが皮膚やろ?
でも皮膚ってのはな、
二つの世界を隔てているようで、
そうでもないんや。

出したり、取り入れたりする、
小さな穴が、無数に空いとる、
どこでもドアみたいなもんやな。

だから、
皮膚感覚というのが重要なんや。


あんた、
街を歩いていると、良さげな店があって、
立ち止まるやろ。

そんで案ずるやろ?
それが、わし「きよし」や。

そんで、
案じていると、
「やすし」が出てきて言うんや、

案ずるより、横山やすし


皮膚感覚じゃ!
ほな、行こかぁ!

そうして店に入るんや。

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