代表就任からの一年を振り返る
2019年6月28日にDATUM STUDIOの代表に就任してから早いもので一年が経ちました。未経験領域でのチャレンジであったため本当に自分に務まるのか不安でしたが、周りのメンバーに助けていただき何とかやってこれました。これからの一年をまた有意義なものにしていくために、これまでの一年を振り返ってみようと思います。
先輩からいただいた金言
就任の直前まで、僕はDATUM STUDIOの親会社であるSupershipホールディングスで人事の仕事に従事していました。ある日突然の辞令であったため、何も準備することができないまま就任当日を迎えることになりましたが、その日にメンバーの前で挨拶した時のことは、話した内容はもちろんですが、目の前に広がった風景やメンバーの表情、流れる空気の匂いまで、よく覚えています。この内容は「社長就任の挨拶」の中で詳しく書いていますので、ご興味のある方は読んでみてください。
1週間後の7月8日の朝、僕は新富町にある島津清彦さんのオフィスにいました。島津さんはピタットハウスの社長を務められた後、独立され「禅×経営」というユニークな切り口で経営コンサルティング業を中心に幅広く活躍されている大先輩です。最近は禅の叡知とテクノロジーを掛け合わせたソリューションを提供するZENTechを立ち上げられ、ますます精力的に活動を展開されています。
この日のアポイントは就任の内示を受けた翌日に入れさせていただいたもので、いつも通りの笑顔で島津さんは迎えてくださいました。2時間ほどの面談の中で多くのアドバイスをいただき、それを必死でメモしました。この時のメモが、その後の社長業の大きな指針となっていきます。メモの最後はこう綴られています。「まずは傾聴。本質を見極められるまで、観ること、聴くことに徹する」
まずは傾聴する
代表就任後、最初に取り組んだのは全メンバー100名との面談でした。開始3人目の面談で、あるメンバーから開口一言「あなたについていくつもりはない」と言い放たれました。親会社からの突然の移籍であったため、そういう反応も十分あり得ると覚悟して臨んではいましたが、その時は流石に心が折れそうになり、前途多難なスタートとなりました。ですが、この全メンバー面談は実施して正解でした。
面談では会社のいいところと正すべき課題とをヒアリングしました。この時必ずいいところから尋ねるようにしました。人は自らが発したポジティブなフレーミングによって、その後の対話をポジティブなものにしていく傾向があります。面談の冒頭、多くのメンバーは2つか3つの会社のいいところを伝えてくれました。僕はすかさず「もう1つ上げてみて」とお願いしました。するとほとんどのメンバーがもう1つ、会社のいいところを上げてくれました。この面談を1日に3~4人行ったのですが、結果として毎日10〜15個ずつ会社のいいところをメンバーから直接聞き続けることになりました。半月が過ぎたころ、会社のことが大好きになっていました。
面談のもう一つの成果は、このヒアリングから会社が取り組むべき課題が明らかになったことです。VISION・事業戦略の明示(64%)、情報やナレッジ共有の強化(60%)、案件獲得力の強化(51%)、この3つが喫緊に取り組むべき経営課題として浮き彫りになりました。
VISIONを創る
明らかになった経営課題のうち、VISION策定は会社の方向性を示すものであり、組織をアラインしていく上で非常に重要な要素でした。「VISIONはトップダウンで決めるべき」との意見もありましたが、目指すべきゴールに対してメンバー一人ひとりの共感や納得感がないとそれ自体が形骸化するか、もしくはVISIONの実現が困難になると考え、遠回りかもしれないですが全てのメンバーに策定プロセスに参画してもらいました。プロセス参画の詳細については「VISIONを共創する」の中で詳しく書きましたので、そちらをご参照ください。
10月4日、メンバーと共に策定したVISIONとそれに到達するための戦略を、全社ミーティングで発表しました。リーダーの最大の役割はメンバーに対して進べき方向性を示しそれに向けてチームを整えていくことだと思いますが、就任から100日後、ようやくDATUM STUDIOのリーダーとしての一歩を歩み出すことができました。
案件獲得力を高める
VISIONと戦略を提示し、会社の進べき方向性を打ち出すことはできましたが、まだ解決せねばならない大きな経営課題が2つ残っていました。1つ目の経営課題は案件獲得力の強化です。われわれのビジネスはクライアント様の事業課題をデータ分析、データ利活用を通じて解決するコンサルティングビジネスで、案件ごとにPJチームを組成して業務にあたります。就任当時、この案件稼働数が非常に低調で、社内にはアサイン待ちで待機するデータサイエンティストが一定数いました。収益を改善するには稼働率を高めることが必須で、そのためには組織の案件獲得力を高める必要がありました。
この課題を解決するために2つのことを推進しました。1つはセールス人員の増強です。グループ会社に応援要請し、10月には2名のメンバーに出向してもらい体制強化を図りました。またリファラルを強化し、その後のセールス部門の軸となる人材3名の採用を矢継ぎ早に進めました。そういえば、12月30日の朝に渋谷のカフェで行った採用面談が2019年の仕事納めでしたが、その彼が3人目の入社者でした。このように半年間で最低限の人員増強がかない、DATUM STUDIOのビジネス成長を支える人的基盤が形成されていきました。
人員の増強と並行して進めたもう1つの取り組みがセールスプロセスの可視化です。先述したVISIONと事業戦略を策定していた8月のある日、サポートしてくれていた取締役が一冊の書籍を紹介してくれました。「The Model」というその書籍にはSalesforce社で取り組むセールスプロセスについて紹介されていました。非常に示唆に富む内容でその日のうちに一気に読了し、次の日にはDATUM STUDIOでもこれに似たプロセスマネジメントできないかをディスカッションしました。そしてインフラとしてSalesforceの導入を進め、10月下旬には第1フェーズの運用を開始しました。その後もメンバーの不断の努力でプロセスもUIもアップデートされ、精度の高いパイプラインマネジメントが実現できるようになりました。
情報やナレッジをオープンに共有する
2つ目の経営課題は情報共有の強化でした。就任当時、多くの経営情報はメンバーに共有されていませんでした。収益性を大きく崩していた事実もほとんど知られていませんでした。そこで月に一度開催される全社ミーティングで、経営数値の報告を行うようにしました。売上、営業利益に加え、重要経営指標に掲げている社員エンゲージメントサーベイの結果について共有しました。また、サーベイに寄せられたメンバーからのコメントに対しても全件返答するようにしました。寄せられるコメントの中には厳しい意見もありますが、僕はこれをメンバーからのラブレターだと思ってなるべく丁寧に返答しています。批判や反論含めて安心して意見することができることはオープンな組織文化を作る上で欠くことのできない要素だと考えています。そして、寄せられたコメント一つひとつに対して誠意を持って丁寧に返答することはメンバーとの信頼関係の土壌だと考え、愚直にこれを続けています。
また、プロジェクトワークを効果的に進める上でナレッジをオープンに共有することが極めて重要な要素となりますが、これも未整備であったため、情報共有インフラであるConfluenceを導入し、プロジェクトやチームのナレッジがしっかりと蓄積され、必要な時に必要な人に共有される仕組みにしました。さらに、4月からはサイエンティスト組織を15の技術別チームに再編し、それぞれの領域毎にナレッジが蓄積される形態に組織編成しました。
有事の経営判断
これらの取り組みを通じてようやく組織が整いつつあった3月、コロナ禍の猛威がわれわれのビジネスにも襲いかかることとなります。見込んでいた案件が延期、凍結になる中、オフラインで実施して好評であったハンズオン研修をオンラインに仕立て直すなど、現場主導で今できることを率先して行ってくれました。
一番頭を悩ませたのは、クライアント様のオフィスに常駐する案件におけるリモートシフトでした。受託案件として自社オフィスで対応していた業務については早期にリモートワークへ切り替えてたのですが、クライアント先に常駐する案件についてはこちらの意向だけでは如何ともし難く、一つひとつクライアント様に上申し、賛意を得る必要がありました。中にはクライアント様も苦渋の判断の中でオンサイトでの業務の継続をされるケースもあり、調整は難航する局面もありましたが、結果として緊急事態宣言発令期間中には全ての案件をリモートワークシフトもしくは自宅待機の状態にすることがかないました。
売上が減少する中、クライアント様の賛同が得られなければビジネスをさらに悪化させる可能性が十分にあったため、この時の意思決定は過去に下したどれよりも難しいものになりました。ただ、多くのメンバーがこの判断に賛同してくれたことと、マネジメントコミットメントに掲げた「従業員の幸せの追求」の言葉が大きく背中を押してくれました。マネジメントコミットメントは今から2年前に当時のSupershipホールディングスのボードメンバーで策定したもので平時はほとんど意識する機会はなかったですが、有事においては大いに判断の拠り所となりました。
コロナ禍の影響は大きくまだまだ復調には遠いですが、今少しずつですが回復の兆しが見え始めてきています。今こそ1年間の組織成長の真価が問われる時だと思います。メンバー一同力を合わせ、この難局を乗り越えていきたく思っています。
さいごに
代表就任からの一年を振り返り、周囲の人に支えてもらってここまで来れたのだとあらためて思いました。深く感謝しております。
これからもDATUM STUDIOでの旅は続きますが、周囲に対する感謝の念を忘れることなく、メンバーと共によりよい未来を創っていきたいと思います。引き続き、よろしくお願いします。
Carpe diem. Seize the day, boys.
Make your lives extraordinary.
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?