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震災の個人的経験が、その後の正しい行動に結びつかないこともあるという話。

昨夜の首都圏の大きな地震。皆さんは大丈夫でしたか?

4ヶ月前まで、新宿区に住んでいたので、停電などの情報もびっくりしました。

今度書いてみたいと思いますが、私は20歳の時に阪神大震災を経験し、家は全壊、地元の友人も数名が亡くなりました。たまたま私は大学生で大阪で一人暮らしをしていましたが、神戸の実家は大変なことになりました。まあ、阪神大震災は僕の周囲の関西人なら大なり小なり影響を受けていますのでそれは何も特別なことではありません。今の会社は大阪にあるので、同僚たちは何らかの形で体験をした人がほとんどです。

善意によるアナウンスが正しいとは限らない。

2021年10月7日22時41分頃、千葉県を震源とする地震がありました。帰宅困難者もいらっしゃったようで、大変な様子が昨夜のニュースで流れてきました。ウチの東京在住および東京出張中のスタッフにも今朝連絡がとれ、全員の無事が確認されました。

そういうやりとりは、ウチの会社ではSlackを通じて行われます。

そこに一人の善意のスタッフの書き込みが。曰く、阪神大震災や東日本大震災を経験した人間として以下の3点について情報共有しておく、と。多分、東日本大震災の時は出張中だったのですよね。その3点がこれです。

(1)災害時は携帯や電話が繋がりにくいです。とりあえず安否を自宅や会社に知らせるだけなら、FAX が繋がりやすいです。

(2)コンビニやスーパーから、商品がすぐになくなります。出先であれば、最低限の食べ物と飲み物をまずは確保してください。他の人も必要としますので、最低限で。

(3)どうしても電話で連絡をとりたい場合、「混み合っている」ので切れてしまいます。それでも間髪入れず、すぐにかけ直してください。切れたらすぐにです。繰り返すうちに繋がります。30分くらいは続けてみる覚悟で。

これ、原文そのままです。(2)はいいんですよ。周囲への配慮も忘れないで行動しましょうね。

ところが・・・FAX? いや、まず我が家にはFAXないです。しかも、出先で災害にあった時に電話ボックスさえ減ってきたのに・・・FAX? コンビニに長蛇の列ができそうだ。

確かに、電話の場合には、例えば我が家であれば私と妻でお互いの安否を確認する際に、「私も妻に掛ける」「妻も私に掛ける」ということで、ちょっとしたタイミングのズレでうまく通話できない場合があります。マッチングがうまくいっていない場合です。その場合には、確かにFAXといういつでも受信できるものがあると便利でしょう。しかし・・・

問題は(3)ですよね。これ、やっちゃダメなNG行動ではないでしょうか?

そもそも、災害時は通信インフラが不具合を起こしていることが想定されます。その際には電話しても無駄です。復旧を待つしかありません。

また、通信会社は意図的に通信制限をします。これは、回線自体がパンクしてしまうと復旧作業に時間がかかるため、回線がパンクしない程度の利用に制限してしまうのです。医療関係や警察関係のために回線を確保しなければならない状況でパンクするわけにはいきませんからね。

阪神大震災で注目されたのは、電話が通じない時に、当時の「パソコン通信」で連絡がとれたと言うことでした。電話はつながらないけれどもインターネットは通じる。系統が異なるからですよね。

どうしても声を聞かなければならない状況であれば、LINE通話やMessengerの通話機能など、なるべく利用サービスや通信方法を分散して利用することで、一つのサービス・一つの通信がパンクすることを回避することができます。

今回、この方が紹介したのは「自分自身が過去に行った行動」ですが「正しい行動」とは言えないわけです。ところが、それなりに人望のある方なので、社内では「いいね!」が付いたりしちゃうんです。

友人が拡散した「信頼できる情報」

そういえば、東日本大震災の時にも似たようなことがありました。

私の友人からこんなメッセージが来たのです。『A君(共通の友達)からこんなメッセージが来た。だから拡散の協力をしてくれ』と。そのメッセージは、要約すると、「東日本に電力を送らなければならないので、関西の方は電力を極力使うな」と言うものでした。

これはチェーンメールの典型的なものでした。

この依頼を受けた時、「いや、東日本と西日本では電圧違うし、変電所経由でそれをカバーするにしてもキャパオーバーだろう」と思い、「これは根拠がないと思う」と返答しました。何より、こんなに大事なメッセージなら関西電力が発信するだろうと思ったからです。

その友人からの再返答:『君は、A君を信頼しないのか?』

A君・・・中華料理のコックさんだからね。

A君が関西電力で働いていてその中枢にいる人ならまだしも。A君自身がこのチェーンメールの内容について、「善意」で広めようと思っただけで。

問題は、信頼できるのは「内容」なのか「発信者の立場」なのか「発信者の人柄」なのか。そこを混同すると合理的な判断はできません。

実は教育で起こっている問題も同じ根っこかも知れない。

実は、この話を書いていて、教育でも同じような問題があるなあと改めて考えました。

『ウチは〜〜ということをしたら成績が上がった(合格した)』みたいな言説が時々囁かれます。実は、根拠なかったりするんですよね。

確かに、B家ではそのような取組みをしたかも知れない。そんな「〜〜」という行動(原因)が成績アップ(結果)を生み出したのかというとそうでもないことがある。実はそんな「〜〜」をしなくてもそもそも合格できる力があっただけかも知れない。「〜〜」という特別なことをしたからではなく、その効果というよりも、単純に学習量が増えたから成績が上がったのかも知れない。

つまり、繰り返しになりますが、「自分が過去行った行動」が「正しい行動」かどうかはそのままではわからないのです。それがたとえ「成功した」と評価されたとしてもです。他の要因もある。「正しさ」というのはそれらの専門家や有識者、少なくとも関係者たち、複数の視点で検証されて初めて「正しい」と評価されるものです。

災害時や教育などは、重要性が高いが故に、合理的な判断が普段よりしにくくなると思います。お互いに気をつけましょう。

『生兵法は大怪我の基』

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