Takeshi Okahashi

自然やデザイン、ビジネスをテーマにリサーチ、取材、執筆、通訳、ワークショップ開発など雑…

Takeshi Okahashi

自然やデザイン、ビジネスをテーマにリサーチ、取材、執筆、通訳、ワークショップ開発など雑多に活動。

最近の記事

個人的な人生の意味を探せば、幸せになれるのか問題

「日々の生活のなかで、意義深さを感じる瞬間はどんな時か?」と聞かれたら、皆さんならどう答えるだろうか。 僕ならば、「本」に関わることをあげるだろう。より具体的には「本を買おうとする時」あるいは「本を勧める時」。前者は自分のため、後者は誰かのためなので、全く異なるシチュエーションだが、どちらにも共通しているのが「何かが生まれるかもしれない」という期待感だ。何か面白いことが知れるかもしれない、何か役に立つかもしれない、予期しないことが見えてくるかもしれない。そんな期待がわきあが

    • 野菜が育ち、届くまでの民主的な道のり

      いろいろあったはずなのに、印象的だったことが、どうにも思い出せない。そんな1年だったのが2021年だ。1年前と言われて思い出そうとすると、うっかり2020年のことを挙げそうになる。時間の感覚が崩れてしまっているのはコロナのせいか、歳のせいなのか。 それでも、そういえばと思えることが1つある。野菜だ。2021年の夏ぐらいから、毎週末、1つの農園から野菜を定期購入するようになった。 僕が参加することになったサービスは、その名をへーレンブーレンと言う。ヘーレンブーレンは、オラン

      • 情報としての英語から、思考のための英語へ:『NPR Throughline』を聴く

        高校生のとき通っていた高田馬場にある英語塾のK先生は、授業の合間に色々と持論を披露をしてくれるタイプの先生だった。そのうちの1つで覚えているのが「英語はやればできるようになるんだ。だから、入試だけじゃなく、入社試験でも英語が課されたりする。努力した程度を確かめているんだ」といったことを言っていた。そんなものなのかなぁと思っていたが、高校時代は一向に英語の成績がよくなることも、得意だと思うようになることもなかった。そして、予定どおり浪人生になった。 浪人生になって、一時期、ア

        • 書評:ザリガニの鳴くところ

          物語の舞台は、アメリカはノースカロライナ州の小さな村からさらに森の奥に入っていたところにある湿地だ。時代は1950年代から1970年。主人公のカイアは、湿地の森の中で両親と兄姉たちと暮らし、学校にも通うことなく育った。湿地には、借金から逃れたもの、奴隷から逃れたものなど、訳ありの人たちが住み着いていた。戦争で傷ついたカイアの父親とその家族も似たような存在だった。湿地に住む白人たちは「ホワイトトラッシュ(白い屑野郎)」と蔑まされていた。 酒を飲み、家庭で暴力をふるう父親に耐え

        個人的な人生の意味を探せば、幸せになれるのか問題

          海がきこえるのは、本を読んだからかもしれない

          スタジオジブリが1993年に制作した「海がきこえる」は、数あるジブリ作品の中でも特殊な位置づけがされることの多い作品だ。特殊なのは、当時の若手中心に制作されたこと。また、テレビアニメ用に制作されたので大々的には劇場公開されていないこと。ファンタジー要素が入っていない青春ドラマであるところも、他の多くのジブリ作品とは雰囲気が異なる。 僕は「となりトトロ」を劇場公開時に観てから(当時、9歳。初めて2歳下の弟と二人だけで映画館にいった。カップリングされていた「ほたるの墓」との二本

          海がきこえるのは、本を読んだからかもしれない

          インタビュー:母が魔女になった頃の話を聴いた

          あやしげな魔女の会僕が少年だった頃の印象的な思い出のひとつが「魔女の会」だ。その会は、年に1度だか2度ぐらいの頻度で実家で行われた。夕方になると数名の魔女だとされる女性たちが集まってきて、食事をしながら談笑していた。幼いながら、彼女たちの個性的な洋服やしぐさ、微笑みにただならぬものを感じていた。「私は魔女4号なの。1号、2号って呼び合っているのよ」と母は僕たち兄弟に説明していた。4名の魔女たちが楽しげに過ごしているのを横目に、子どもたちはもう遅いから寝なさいと寝床に向かうのが

          インタビュー:母が魔女になった頃の話を聴いた

          聴く人がいて、ストーリーは生まれる

          その長い旅行で、一番の思い出は何でしたか? 南米をバックパッカーで旅をしていた時に買ったアルパカの毛糸で作った帽子の話をした後に、対面に座っていた女性が質問をしてくれた。僕は少し意表をつかれた。それでも、ひと呼吸おいてすぐに浮かんできたのはボリビアのマディディ国立公園の側でエコツーリズムを実践するローザマリア・ルイス女史の姿だった。ややマンネリ化しかけていた旅行の途中に、ボランティア活動先として縁ができたのが彼女の運営するエコビレッジだった。ボリビアで最初の国立公園を作った

          聴く人がいて、ストーリーは生まれる

          5分で8コマ漫画を描く

          新しい事業をつくる人、と聞いてどんなイメージを持つだろうか?好奇心旺盛な人、強い意志を持っている人など、ポジティブなイメージを持つ人が多いかもしれない。僕もそう思っていたところがあった。でも、新しい事業をつくる研修プログラムの運営に関わる中で、事業をつくる人について少し異なる印象を持つようになった。 僕は、7年ほど前から昨年(2020年1月ごろ)まで、毎年のように20〜30人の社会人が集まり、新たな事業アイデアをつくる研修プログラムの運営に関わっていた。 ある地方自治体が

          5分で8コマ漫画を描く

          異国で移民となり、母国の移民のことを考えた

          昨夏、家族で日本からオランダに引っ越してきて暮らし始めた。あたり前だが、仕事の仕方も、食べるものも変わった。朝の生活パターンも変わった。毎朝、7歳の長女を学校に送るのは僕の役割だ。7歳ということもあるが、学校までの距離もそれなりにあるので、毎日のように自転車で送り迎えをしている。 その学校は人口30万人ほどの中堅都市圏の郊外、5階くらいの団地が並ぶエリアの中にある。近くには、小さなショッピングモールや緑地もあり、雰囲気も良いのだが、一戸建て住宅と並ぶエリアと異なるのは移民の

          異国で移民となり、母国の移民のことを考えた

          小さな農園の静かなる革命

          知人から教えてもらって、最初はそこまで強く興味をひかれたわけではないのに、見たり調べたりしているうちに、大きなターニングポイントとなる。そんなことがたまにある。だから、友人知人が教えてくれることには、なるべく謙虚に注意を向けるようにしている。 今年8月、年配の知人から「君なら興味を持つかもしれない」と、とある農業コミュニティを教えてもらった。早速ウェブサイトを見る。確かに、最近ヨーロッパに引っ越して、サステナビリティやまちづくりについて取材したいと思っていた自分の興味と重な

          小さな農園の静かなる革命

          ひさかたぶりの新シーズン

          9月に入り、僕の新しいシーズンが始まった。ほぼ8年ぶりの復帰戦でもある。何かと言えば、フットサル。オランダに引っ越す前からボールを蹴る習慣を再開したいと思っていたのだ。幸いなことに、引っ越してすぐに知り合った知人が参加するフットサルに混ぜてもらえることになった。毎週水曜日の夕方。家からは自転車で5分の地域のコミュニティジムにて。 今年の集団スポーツは、新型コロナウィルスの影響もあり世界中どの競技のどのリーグも波乱含みだ。僕が参加する小さなフットサルサークルも大きな影響を受け

          ひさかたぶりの新シーズン

          グッドラックと彼は言った

          それは新しい世紀に入ったばかりの2001年2月頃のこと。その日、僕は当時交換留学生として滞在していたオランダのマーストリヒトという街から1人でベルギーに日帰り旅行に行っていた。マーストリヒトは、オランダの南端にある都市で、首都アムステルダムよりも隣国ベルギーの首都ブリュッセルの方が近い場所に位置している。そして、ベルギーはオランダに比べてご飯が美味しい。 その日の帰り道、乗り換えのホームをまたいで次に乗る電車はすでに満席ぎみだった。列車の入り口の階段をのぼりながら、自分が座

          グッドラックと彼は言った