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風鈴の音(雑記)

 田舎町の隅っこにある自動販売機。二、三台程度車を停められそうな空間。
 錆びたガードレールと、それに絡まる蔓の葉と緑。
 風はぬるく、けれど心地いい。
 地面のひび割れを眺めながら歩く。時々空を眺め、木々に落ちる日差しと木漏れ日の間を縫うように進んでいく。
 速度制限の看板すら、蔓の波に飲まれて宙に浮かぶように存在している。
 数字が時々、蔓の葉で隠れて、その度に、夏の速度が加速していくような気がする。
 聞こえもしないはずの風鈴の音が、茂みの中から耳に届く。
 植物の葉が短冊のように揺れて、誰もいない町の片隅にだけ風鈴市がひらかれている。
 


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