海砂糖（ショートショート）

「海で採れる砂糖、ですか？」
　私は思わず首を傾げる。ドライブがてら立ち寄った、海辺の道の駅。
「海から採れるのって、塩ですよね？」
　続けて、疑問に思っていたことを口にする。それに対して店員さんは答える。
「はい、確かに、一般的に海からは塩が採れます。ですが、この近辺の海からは砂糖が採れるんです」
「砂糖が……」
　私は相変わらず、狐につままれたような、今まさにその最中みたいな声で呟く。
「正確に言うと、サトウキビなんですけどね。海中で育つ」
「海中で育つサトウキビがあるんですか？」
「はい。これがそうです」
　店員さんは、もう何度も同じやりとりをしているためか、流れるような動きでそれを取り出す。
　確かにそれはサトウキビだった。砂糖に加工される前の、見た目は竹のような姿。
「サトウキビ、ですね……」私のつぶやき。それに対して店員さんは、元気よく首を振る。でしょでしょ、というような、ハリのある動き。
「このサトウキビを使った砂糖は、少しだけしょっぱいんです。味のイメージとしたら、みたらしみたいな感じですかね」
「……へえ、ちょっとおいしそうですね」
「でしょう？　結構いろんな料理に使えるので、おすすめですよ」

　この砂糖もしかしたら、もしかしなくても、スイーツなんかに合わせたらいい感じかもしれない。
　最初は本当にそんなものあるのか？　と疑念を抱いていたけれど、今はどんな食べ物に使ってみようかと想像が止まらない。