エプロン座(ショートショート)
涼しい夜にジョギングする。
今日は月がとても綺麗だ。いつもよりも、その色が濃いような気がする。
月を見る視線をずらしていくと、四つの星を繋いだ縦長の台形を見つけた。
あれは何になるだろう。何に見えるだろう。
短冊。引っ張ったプリン。いや、違うな。
エプロン。そう、エプロンだ。
もしも夜空でできたエプロンがあったら。
例えば、夜空を加工する工房があるとしたら、そのエプロンを使わなければいけない。そうしないと、服に夜空がこびり付いたときに、洗い落とすことができなくなってしまうのだ。
夜空の寸法を測って、切って、星ビスで止めて。
その上から塗装したり、皮のようになめしたり。
そうして作られた加工品が、世界のどこかには出回っているのだと空想すると、なんとなく楽しい。
今日の空に浮かぶ月もどうにか加工できないだろうか。
月のコースター。悪くないかもしれない。
飲み物を下からやさしく照らして、おいしそうに見せたり、適度に冷やしてくれる。
夜空を加工するときに使うエプロン。そんなものがあれば、きっと何気ない日常も少し面白くなる。
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