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5G線上のアリサ【第4章#8話】叫び

#8話:叫び



【視聴時間=03:50】


「人生につまずいて、ネットに逃げ場を求めて、ずっとその中に隠れていただけ……」

「ですが、今再び起き上がりました」

「炎上は大炎上に変わったが、晴れ晴れな顔をしとるがな」

「そうや、自己愛の呪縛を克服したやん」

現実のあなたリアルは私たちが一番知っているからーーー」
清水/加護/池田/井口/平野

―――愛利沙は自分自身と向き合い折り合いを付け認めだせた。

過去の自分を許す気持ちを今なら持てると確信をした。

フォロワーの炎に囲まれながら「自分にしてはよくやったわね」と、嬉しさ半分。

悲しさ半分。

そして残りを振り絞るようにーーー

「―――幸せを求める場所を間違えていたの。たぶん、あたしはどのG線上にいても一人ぼっちを選んでいた。どこへも行っていなかったの。1Gの自転車に乗っても、2Gの原チャリに乗っても、どんな時代のG線上ネットにいても誰とも出会えなかった。なりたい自分になれなかった……」

メガネを外し、涙を流し、自分の弱さをすべて受け入れ、変わることへの不安と焦り、自分に怒りを覚えた愛利沙。

一人が好き。

でも人は一人で生きていけないと認めながら―――

「―――それがまた、5、6年後に訪れる6Gになろうと、20年後の7、8Gになろうとも! あたしはずっと一人ぼっちなの……それが怖くて堪らなかったのよ!」

池田町で居場所をなくし、ネットの中にも居場所をなくす。

これからどうして生きれば良いのか分からぬ愛利沙は炎上をした、VR世界と向き合うために赤いメガネをはめて答える。

「どのG線上にいても、あたしの居場所なんてなかったのよ!」

シンレデラでありツンデレラでありヤンデレラである彼女は予測不能な思考回路を持って老人たちを困らせている。

この時、この場に愛利沙がいないと困る男は覚悟を決めて―――

「―――清水先生、私はこれからあなたにとても嫌われるようなことをします。だから、清水先生も恐れないで私を傷付けてください。私もあなたを傷付けますから」

「加護さん?」

「どうしたんや、加護さん……」

愛利沙を想い炎上騒ぎの鎮火手段が見える加護はーーー

「―――最後のけじめを付けます。明日、この場所で。二時にすべてを打ち明けようと思います」

国会中継同時刻へと合わせ加護はお願いをした。

加えまるで餞のような言葉を添えてこう言った。

「みなさん、この5年間、本当にお世話になりました。私にとって最高のパソコン教室はこの場所に違いありません。感謝をしています」

加護はアリサ炎上の件に決着を付けるために帰った。

彼は彼なりに自分にできるジジイのGGエンドに向けて、一人、密かに覚悟を秘めつつ上司に旨を伝えて去った。


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『”Ambitions and Dreams”perfomed by Evan MacDonald,used under license from Shutterstock』

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