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出来立ては美味しくない料理、発酵食。

「丁寧な暮らし」
その言葉を作るきっかけとなったのは、無印の存在も少なからずあるように思う。

ここのところ、家から近くにある無印良品の糠床を作って、漬物を作った。普段の平日は、作り置きの料理かもしくはスーパーの弁当しか食べないような自分が、こんなに手の混んだようにも見えることを作ろうと思ったのか。発酵という概念が面白いと思ったからだ。

糠床自体も、既に出来合いのもので、ジップロックのような袋の中に野菜を入れればそれで終わる。袋を開けるなり、むわっと匂いが立ち上がってくる。手についている糠はなんとなく独特の匂いを放っていて、瞬間的に眉間にシワがよってしまう。同時にいつも出来合いの物しか食べていない人間からすると、こんな工程自体が人間らしさを取り戻させてくれるんだよなとふと思ったりする。

ぬか漬け自体は、作業はシンプルで、面倒くさがりの人でも簡単にできてしまう。糠に一定時間浸かってから取り出して水洗いすれば、すぐに食べられる。

発酵食品の面白さは、時間を置いてからの方が美味しさが増してくるという点だ。大抵の食べ物は、出来立てが一番美味しい。今回は株と大根を漬物にして、1日たってすぐに食べた。その時は、あまり美味しいと感じられなかったけれども、翌日に食べきれなかった分を食べたら、断然味わい深いものになっていて深い感動を覚えた。某牛丼チェーンではないが、早い、安い、美味いの世界で暮らしているから、その対比でグッと来てるのだろうか。

我々は、料理というものは、作りたてが美味しいという環境の中で、暮らしている。絶対的な価値観を覆される瞬間が好きだ。自分の考えや世界が拡張されていく感覚を持つ。知的好奇心を刺激される。

これを書きながら、今は味噌を作ることで頭がいっぱいだ。味噌はどうやらもっと時間がかかるものらしい。どんどん興味事が時間がかかるものになっている。

手間がかかるものは、機械によって自動化された。面倒な工程の多くが生活から切り取られることで、手触り感のない無味無臭で味気のないくらしになってしまったのかもしれない。

肌感や手触り感というものが、都会生活の中にあると少しホッとした気持ちになる。

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