私的考察「人間理解 ―うつ病の『私』は,『私』なのだろうか―」

 高いコミュニケーション能力が求められる社会。

 様々な人々と上手に関わることができることをコミュニケーション能力が高いというのでしょうか。学校教育関係の資料でも,コミュニケーション能力の育成という言葉は,よく目にします。

 私のように数学に関わるところにいると,コミュニケーションと連動して「論理」という言葉が想起されますが,論理一辺倒な活動ではコミュニケーション能力の育成は図れないようです。コミュニケーションにおいて情報や知識とともに「感情」の分かち合いをしていかなければよいコミュニケーションを図ることは困難であると,とある教育学者は述べています。多くの場合,「感情」は無意識的に分かち合われていますから,「コミュニケーション=論理的な情報交換」といった認識で,友達との会話に苦しんでいる子どもたちがいるかもしれませんね。私はそういう子でした。

 コミュニケーションにあたって,相手を理解することの重要性は疑い得ないことでしょう。そこで「人間を理解する」ということについて考えてみます。

 このことを考えるにあたって,すごく難しくかつ重要なこととして「人間性の問題」なのか「うつ病をはじめとした精神疾患の問題」なのかの判別があると思います。「この人,ヤバい人だな」という印象を受けたけど,実は,その人は精神疾患の病で苦しんでいたということもあるかもしれません。
 精神疾患というと何か特殊なもののように感じられますが,少なくとも私にとっては身近なことであると考えています。
 様々な要因から,医学や心理学を専攻していない私のような立場の人間が精神疾患について簡単に語ることはできません。
 しかしながら,簡略的な手法で理解をすること(専門知識がなくとも対応の仕方を分かりやすく知ること,その機会を得ること)が必要であると考えます。
 それは私という人間とそこに関わる人間を理解する1つの観点を得るためです。
 腕を骨折した人には,優しい言葉をかけることができるのに,心が骨折した人に適切な言葉をかけられないのは,心苦しいことではないでしょうか。

 精神疾患は,なんとなく大人がかかるもののように思われますが,子どももなり得る病気のようです。教員養成課程の講義でも,子どもの症状を教師が見抜いてあげてほしいということを聞いています。子どもたちがそういった状況であるなら、すぐに見つけてあげたいと思います。しかし,実際は人間性の問題として片づけられてしまうことがあるのではないかと推察します。どのようにしたら, そういった状況を避けられるのでしょうか。
 
 人間性と精神疾患の理解に関する問題の課題は「差別的印象」と「人格の連続性」を私は考えます。前者については,共感してもらえるのではないかなという思いから,今回は割愛します。

 「人格の連続性」(筆者の定義)
 私たち人間は,生まれてから死ぬまで,人格については変化をしながらも連続したものであると考えられます。このことを人格の連続性と呼ぶことにします。
 
 例えば,うつ病について考えてみます。
 うつ病の発症の一説には,神経伝達物質の量の変化が挙げられています(http://utsu.ne.jp/about_know/)。この神経伝達物質が,何かをきっかけに通常と異なる量が流れたとします。すると,それに伴って思考が変化することは,明らかなような気がします。ここで考えたいのは,神経伝達物質が通常量流れているときの「私」と,異常量流れているときの「私」は,同一であるとみなすのかということです。
 もし,不連続(離散)的に,その人の人格が変化した(突如性格が豹変した)ならば,対話者は「この人に何かあったのかもしれない」と感じることができるでしょう。
 しかし,私たちは暗黙的に「人格の連続性」のような概念で,人間の性格を見ているような気がします。この概念が存在していると,人間性の問題などとして捉えてしまうことの一因になるのではないでしょうか。この症状を発症した人の立場に立って考えてみれば,ここに人格の連続性を適用することは,つらいことのように思います。
 みなさんは,どのようにお考えになるでしょうか。

 人間を理解することってとても難しいですね。教育というジャンルで人間を意識するようになって,よく考え,迷走することが多くなった気がします。人間でありながら,人間を十分に知り得ないというのは,なんだか不思議な感じがします。
 ここしばらくずっと考えていたことを書き記してみました。よろしければ,ご指導ください。

 最後までお読みいただきありがとうございました。

※「人格の連続性」は,筆者が独自に考えたものであり,心理学や精神医学で述べられているものとは異なると思います。そちらの専門的なことは,機会を作って勉強してみたいと思います。
※心の問題について触れましたので,何か不適切な表現等ありましたら,ご指導ください。

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