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言葉の覚え書き

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#慣用句

『言葉の覚え書き』目次

【第1部 表記】組版右横書き 文体口語体と文語体 常体と敬体 能動と受動 文のねじれ 「べき止め」 「さ入れ表現」 可能の表現 助動詞「れる」「られる」 可能動詞 「ら抜き言葉」 用言の活用と音挿入 改行・段落改行と段落 文字種日本語の文字体系 全角と半角の使い分け アルファベット、アブギダ、アブジャド ギリシャ文字 Unicodeについて ヘボン式ローマ字 漢字常用漢字 同音の漢字による書きかえ 字体・字形 仮名現代仮名遣い 「じ」「ず」と「ぢ」「づ」 漢語に続

「つば競り合い」?

「せり合い」の「せる」は「迫る」で、少しずつ間隔を詰める、少しずつ前に移動するの意。相手の刀を互いに鍔(刃と持ち手との間にある板状の部分)で受け止めて押し合うことから、激しく争う意の「鍔迫り合い」という言葉ができました。 よって、「つば競り合い」の表記は好ましくありません。

「足蹴りにする」

口語文法に従えば「足蹴りにする」ですが、ひどい仕打ちをする意の慣用句としては、文語文法に沿って「足蹴にする」が一般的です。 「足蹴」の「蹴」は、下一段活用の文語動詞「蹴る」の連用形が名詞になったものです。 口語では「蹴り」となります。

「梨下に冠を正さず」?

よくある誤変換のようです。「梨」ではなく、「李」。 スモモの木の下で冠を直すと、スモモの実を盗んでいるように見られかねないことから、疑わしい行いはするなという戒めの慣用句を「李下に冠を正さず」と言います。

「花粉の当たり年」?

「当たり年」とは、作物がたくさんとれる年、物事がうまくいく縁起の良い年という意味です。 厄介な年、災難の多い年といった、ネガティブな意味合いで用いるのは適切ではありません。

読めますか?──「端倪」

タンゲイ。 「端」はいとぐち、「倪」は田の境の意。物事の始めと終わりのこと。 また、動詞としては、見通す、予測するという意味で用います。「端倪すべからず」は、容易に計り知ることができないことを表す慣用句です。

「気が置けない」

2012年度の「国語に関する世論調査」では、「気が置けない」の意味として、「相手に対して気配りや遠慮をしなくてよい」と答えた人の割合が42.7パーセント、「相手に対して気配りや遠慮をしなくてはならない」が47.6パーセントという結果でした。 「気が置ける」とは、何となく遠慮の気持ちが出てしまうの意。したがって、「気が置けない」とは、遠慮が要らない、気を遣う必要がない、ということになります。

「予防線を『引く』」?

「引く」ではなく、「張る」。 「張る」には、たわみがないように引き伸ばす、また、構える、配置するという意味があります。 後で付け入られないための策を表す「予防線」は、もと警戒や監視のために構える区域のことです。

「類が及ぶ」?

「類が及ぶ」ではなく、「累が及ぶ」。迷惑がかかる、巻き添えになるの意。 「累」は、巻き添え、わずらいという意味です。ちょっとしたトラブルのことを「小累」といいます。

「怨み骨髄に達す」?

「怨み骨髄に達す」ではなく、「怨み骨髄に徹す」。心の底から恨むこと。 「徹」には、人名の「とおる」に使われるとおり、貫通するという意味があります。ここでは、奥深くまでしみ通ることを表しています。 「怨み骨髄に入る」ともいいます。『史記』「呉王濞列伝」には「怨入骨髓」のかたちで記述されています。

読めますか?──「骨を埋める」

「ほねをうずめる」と読みます。 「埋」の訓読みには、「うめる」「うまる」「うもれる」の他、「うずめる」「うずまる」という読み方もあります。

「満を辞して」?

「満を辞して」ではなく、「満を持して」。 「満を持する」とは、弓をいっぱいに引いて構えること。十分に準備をして機会を待つという意味です。

「喧嘩をしてしまい、『目覚めが悪い』」?

自分の行いを後悔する、過去の行為を思い出して良心がとがめる、という意味の慣用句は「寝覚めが悪い」です。

「天下の宝刀」?

いざというときの最後の手段は、「天下の宝刀」ではなく、「伝家の宝刀」。 代々家宝として伝わる刀、という意味です。