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言葉の覚え書き

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#誤用

『言葉の覚え書き』目次

【第1部 表記】組版右横書き 文体口語体と文語体 常体と敬体 能動と受動 文のねじれ 「べき止め」 「さ入れ表現」 可能の表現 助動詞「れる」「られる」 可能動詞 「ら抜き言葉」 用言の活用と音挿入 改行・段落改行と段落 文字種日本語の文字体系 全角と半角の使い分け アルファベット、アブギダ、アブジャド ギリシャ文字 Unicodeについて ヘボン式ローマ字 漢字常用漢字 同音の漢字による書きかえ 字体・字形 仮名現代仮名遣い 「じ」「ず」と「ぢ」「づ」 漢語に続

「1箇所で『寸断』」?

「寸断」とは「きれぎれに断ち切ること。ずたずたにきざむこと」(『広辞苑』第七版)ですから、本来は複数箇所が断ち切られる場合に用いる言葉です。

「印章」「印影」「印鑑」

「印章」は、文字などが彫刻された、手に持つ本体のこと。 「印影」は、紙などに残る、印章で押した跡。 「印鑑」は、印影の真偽を見分けるための照合用の見本。印鑑登録で役所に保管される台帳がこれに相当します。「鑑」は見分けるしるしの意。 したがって、素材に彫刻したもの(印章)を「印鑑」と呼ぶのは本来は誤りです。

「オンプレミス」?

最近では、インターネットなどを介して外部のコンピューター設備を利用するクラウド・コンピューティングが滲透していますが、従来は構内にサーバーなどの機器を設置して情報システムを運用する、オンプレミスと呼ばれる方法でした。 ところで、この「オンプレミス」という言葉、ちょっと変です。確かにpremiseには「敷地」「構内」という意味がありますが、その場合はpremisesと複数形で用いられます。単数形でpremiseと言うと、「前提」「根拠」という別の意味になってしまいます。 し

大統領は「宰相」?

「宰相」とは、もと古代中国で「天子を助けて政治を行なった官」(『日本国語大辞典』精選版)のこと。あくまで元首の輔佐役、というわけです。したがって、国家元首たる大統領に用いるのは適切ではありません。 一般に行政府の長を指す「首相」も、首席の宰相を表す語です。これも、元首が別にいるからこそ成り立つ表現です。

「水菓子」

「水菓子」とは、水羊羹やゼリーなどの水分の多いお菓子のことではなく、フルーツ、果実類のことです。 そもそも「菓」という字は果実の意で、「菓子」はくだもの全般を指す言葉でした。それが、江戸時代になると、和菓子など嗜好本位の食品と区別するために、くだものを「水菓子」と呼ぶようになったのです。

「むしゃぶりつく」

「むしゃぶりつく」は、「貪りつく」の転じたもので、勢いよくしがみつく、の意。 食べ物に激しく食らいつく、という意味ではありません。

「放射能漏れ」?

ある物質から放出される粒子や電磁波のことを「放射線」といい、放射線を出す物質を「放射性物質」といいます。 「放射能」とは、本来は物質が放射線を出す現象または性質のことなので、「放射性物質」は放射能を帯びた物質ということになります。 よく、「放射能漏れ」のような言い方をされることがありますが、これだと放射性物質から出る放射線だけが漏れているのか、放射性物質そのものが漏れたのかの区別がつきません。螢の光が漏れることと螢自体が外に出ることぐらいの違いがありますので、両者を混同す

「1パーセント引き上げ」?

カナダの中央銀行が政策金利を1.5パーセントから2.5パーセントに引き上げました。 これを「1パーセントの引き上げ」としている国内のニュース記事が散見されますが、誤りです。 パーセントの変動幅を表すには、ポイント、またはベーシスポイント(ポイントの百分の一)を用いなければなりません。1パーセント分の幅は1ポイント、または100ベーシスポイントです。 カナダ中銀の発表には、「100 basis points」とちゃんと書いてあります。 なぜ変動幅にパーセントを用いてはい

「矮小化」

「矮小化」とは、過度に小さく取り扱う、些細な問題とみなす、という意味です。ところが、音が似ているからでしょうか、事実をゆがめるという意味の「歪曲」と混同されている例が時折あるようです。 「矮」は、低い、高さが足りないといった意味です。すなわち、「矮小」は似た意味の字を2つ重ねた熟語ということになります。

「満面の笑顔」?

「満面」の「面」とは顔のことなので、「満面の笑顔」だと意味が重複してしまいます。「満面の笑み」が適切です。 同様に、「満天の星空」も不適切です。

扁桃「腺」?

かつては「扁桃腺」と呼ばれていましたが、現在では「扁桃」に改められています。 「腺」とは、涙腺、汗腺などのように、何かを分泌する器官、組織のことをいいます。扁桃はリンパ節の集合体であり、何かを放出する器官ではないので、厳密には腺に該当しない、というのが改められた理由です。 ちなみに、扁桃とはアーモンドの別名です。形が似ていることからこう名付けられました。

「春秋に富んだ老人」?

「春秋に富む」とは、生い先が長いという意味で、年齢が若いことを言います。 なお、「春秋高し」と言った場合は、高齢であることを表します。

「花粉の当たり年」?

「当たり年」とは、作物がたくさんとれる年、物事がうまくいく縁起の良い年という意味です。 厄介な年、災難の多い年といった、ネガティブな意味合いで用いるのは適切ではありません。