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言葉の覚え書き

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2022年6月の記事一覧

「行かざるおえない」?

「行かざるおえない」ではなく、「行かざるをえ(得)ない」。 こう書いてしまう人は、「行かざる」「おえない」というふうに、そもそも語の区切りを誤認しているものと思われます。 正しくは、「行かざる」「を」「得ない」。「得ない」は「やむを得ない」と同様、「得る」の否定形。通しで、「行かざる」ことができない、すなわち「行かないわけにはいかない」という意味になります。

「矮小化」

「矮小化」とは、過度に小さく取り扱う、些細な問題とみなす、という意味です。ところが、音が似ているからでしょうか、事実をゆがめるという意味の「歪曲」と混同されている例が時折あるようです。 「矮」は、低い、高さが足りないといった意味です。すなわち、「矮小」は似た意味の字を2つ重ねた熟語ということになります。

「犬吠崎」?

関東平野最東端にある千葉県銚子市の岬は「犬吠埼」。「さき」はやまへんの「崎」ではなく、つちへんの「埼」です。 他に「埼」のつく岬として、和歌山県の日ノ御埼などがあります。

「ミネストローネ『スープ』」?

イタリア語のminestroneは、「スープ」を意味するminestraと指大辞(語義を拡大する接辞)の-oneが結びついたもので、この語自体がスープを表しています。意訳すると「中身の詰まったスープ」になります。 minestraの語源はラテン語のministro「提供する」です。コース料理の初めに出されることから、主人が与えるものという意味合いがあるそうです。

「ヨガ」「ヨーガ」

語源は、サンスクリットで「軛」「結びつき」などを意味するयोग [joːɡɐ]です。 サンスクリットには日本語と同じく[ア][イ][ウ][エ][オ]の5つの母音がありますが、このうち[エ][オ]は長母音でしか発音されませんので、「ヨーガ」が原語に近い表記です。

「ひらがな『標記』」?

この場合は、文字や記号の書き表し方、または書き表したもののことですから、「表記」。 「標記」は、見出しやタイトルのことです。

「冒す」と「犯す」と「侵す」

「冒す」は、危険なことを敢えて行うこと。また、体や物を損なうこと。 「犯す」は、規則や道徳に背く行いをすること。 「侵す」は、他者の権利を損なうことです。

「非難轟々」

以下にもあるとおり、通常は「非難囂々」です。 「喧々囂々」の「囂々」ですね。 「囂」は、騒がしい、かまびすしいという意味です。 もっとも、「囂々」も「轟々」も、連綿語という一種のオノマトペであり、用いられる漢字は「表音的使用にしか過ぎ」ません(『全訳漢辞海』第四版、1684頁)。ホウフツの表記が「彷彿」「髣髴」など多岐にわたるのと同様です。 あくまで「囂々」と書くのが習慣だということです。

「足蹴りにする」

口語文法に従えば「足蹴りにする」ですが、ひどい仕打ちをする意の慣用句としては、文語文法に沿って「足蹴にする」が一般的です。 「足蹴」の「蹴」は、下一段活用の文語動詞「蹴る」の連用形が名詞になったものです。 口語では「蹴り」となります。

「梨下に冠を正さず」?

よくある誤変換のようです。「梨」ではなく、「李」。 スモモの木の下で冠を直すと、スモモの実を盗んでいるように見られかねないことから、疑わしい行いはするなという戒めの慣用句を「李下に冠を正さず」と言います。

「回答」と「解答」

「回答」は、質問やアンケートなどに答えること。 「解答」は、問題を解いて答えを出すことです。

「対称」と「対象」

「対称」は、互いに釣り合っていること。 「対象」は、動作の目的となるもの。 なお「対照」は、照らし合わせる動作そのものをいいます。