詩332 スズメの鳴き声
背負ったリュックを下ろして
切り株に腰をかける
「もうぼく、頑張るの疲れちゃった」
「だ~れもいないもんね」
見上げた青空に
スズメが3羽舞っている
キレイな宝石を手に取るように
腕を伸ばすけれども
空気が掌を 目一杯 包むだけ
リュックのなかに
水とお菓子と寝袋がある
「遊べるの、なぁんもないね」
「もう歩きつかれちゃった~」
スズメのチュンチュン鳴く声が
風の随に透き通る
「かぜは自由だね~」
太陽の光が照らす木々の枝が
細い陰を作って揺れている
「ぼくはひとりだ~」
「お母さん、どうしてるかな」
「お父さんは、どうしてるかな」
砂地の道中
斜めに滑るが如し
「もう疲れたよ………」
「もうぼく、歩きたくない」
水もお菓子も寝袋も すべて常温のかたまり
スズメの鳴き声が遠ざかってゆく
「チュンチュン、チュンチュン
………チュンチュ………」
「遊びたかったな」
「もう………いないの?」
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