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詩373 短詩輯21

6 - 51  「何なんだ、この現実は!」と叫んでスパークした無表情の語彙力。掻き消されたり散らかされたりして、愉快な珍味

6 - 52 冬の朝の押しくら饅頭、誰も泣かない笑わない、何もいわない冷やさない:鉄箱てつばこのなかの密集地蔵

6 - 53 コンカフェの女の子が配るティッシュをもらうのがものスゴく恥ずかしくて、距離を取りつつ会釈だけして通り過ぎる;一人の男の行く道に、満を持して差し出された腕は、北風に晒され力なく、硬い殻をかすめるようにしてブラーンぶらん

6 - 54 私の人生には苦悶の時代があった ──── 自ら認めたくなくても。逃避に焦るほど否認したくなる

6 - 55 自分のことを一番大切にできる者は、そうだ、自分ではないか! ──── 他の誰でもない

6 - 56 歩き出したらパッと心が明るくなる。人生というものは、そのぬしにずっと寄り添わされ背中に載せられ精を待っているもの。いや、背負しょわれているのは私の方か。人生のさまはまるで,「前向きになれ!」とは励まさない派の熱血漢

6 - 58 自分の頭で考え出した正しさなど、きっと陳腐でしかない。弥勒菩薩みろくぼさつの授けてくださる正しさこそ、私が見たい絶対真実。越えられなくても越えてみせよう, 56億7千万年

6 - 59 仕事中にアレコレ考えた企図や浮かんできた想いなど、業後に記録しようとしても毎度忘れます。あるいは、その気が(まったく)起きません。海に落ちた雫は、二度と戻ってこないのです。呆然とします

6 - 60 楽しさの見出せない仕事に旦暮で身を捧げ、一日の、ああ長いこと長いこと………這うようにして凌ぎ、終えて残るは困憊=絶望

6 - 61 自分が何を考えているか分からない:省みられる時間はすべてをボオッとすることに充てているため ──── 更なる所労を避けるため考えないようにすらしている

6 - 62 生きてきたの時代にも、決して私は戻りたくない。いつでも今が最上の時

6 - 63 もっと書きたい、作りたい!けれども、拒否する愛らしい身体・喰い縛っていようが構わぬ無慈悲な精神

6 - 64 労働に私は精気を捧げる。労働に私は日常を捧げる。労働に私は薪炭しんたんを捧げる。労働に私は安穏を捧げる。外的な絶対力ぜったいりきは悉く命ずる:私の持ち得る気力,活力,精力,意力,余力,その他の力を、蓄財の術に恵まれた者たちへ惜しまず差し出せ、と

6 - 65 私は一度死に、そして新しく生まれた。霊の体は分裂する。同じ瞬間に、光の渦へ吸収され分霊は統合される

6 - 66 神様は私のすべてを誇りに思ってくださっている。誰の身に如何なることが降り掛かろうと、我こそメシア、皆おのおのがメシアだと固く信じ、胸中に御座す神様にこの身の隅々まで委ねつつ、直向きに祈ろう。嗚呼、私がこれほど安穏の内に地上に暮らすことは嘗てなかった

6 - 67 雲上の国を舞うアトラクションの外観に劣らぬ格好………それは夢あるところへ没する客等きゃくらの浮かれた快さ

6 - 68 疲れて何も考えられない、考えたくない ──── どこにいても、何事か始めても、終えても、誰かといても

6 - 69 脱力成分を含むゼリーのなかに閉じ込められたみたいに、身動きが取れず息苦しい ──── 壁面はプルプルして、半永久の煌めきを没個性的に透かしている。けれども、一度突き破ってしまえば、風に当たれるところへ出て行けそうな

6 - 70 生活はゆとりを欠く。人生の楽しみが減る。考えるのは明日あしたの予定や遣り終えた仕事のことばかり………不安の末に、胸は寒涼な触感。蒙昧もうまいな路頭をトボトボと………明日よ、もう来ないでくれ。(どれだけ拒んでも、必ず明日は来る。)そして、何もかも終われ。淀んだ日々は喪心そうしんするくらい手に掛かる

6 - 71 生きるだけで、そのことが神の作品としての一形式であるのに、差し出がましくも、この手で作品を掛けようとする私。神の仕業に因るのか私の仕業に因るのか、区別することを禁ずる

6 - 72 まばゆいくらいに晴れ渡っている、今日は ──── 豚箱のなかに閉じ籠もっているのか、閉じ込められているのか………昼食をとりながら高層の窓より遠目に眺めるシャバに、卑屈な身の嘆きが反射する

6 - 73 月末の支払日までを指折り数え、手持ち分を日で割り出した“使える額”に目を疑う。「今月も厳しいナ」と呟きつつ、午後の休憩、小便しながら一人

6 - 74 SNSで友人・知人・有名人の近況や現況を知ったところで、私の生活に何も変化は起きない。人の波に毎朝毎夕、揉まれても一切の温もりは感じられない。ここは冷帯,寒帯,極寒の地

6 - 75 面倒、何もかもが面倒。恐ろしくつまらぬ仕事を前にして、楽しい時間を過ごすための創意が浮かばない。頭を捻る気に、少しも、ならない

6 - 77 ウダウダとするこれを欲するも、得られたところで、自分のことは満足させられないかも知れない。蓋を開けるまで、翻弄する運命のことはいつも分からない。〈自殺〉が私の人生の最終的な表現手段になり得ることには至極一理あり、その考えの下ではさまざまな些事さじがどうでも良くなる

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