見出し画像

詩378 心の噴火

歩いて 歩いて
空に向かって叫ぶ
「あぁああぁあぁ!」 と
言葉にならない 心の噴火
自分の内と 空だけに 響く
この胸の奥は 蒸れて痒い

走って 走って
雲をバラバラに裂く
「あぁああぁあぁ!」 と
大声の散りゆくほどに 心の火花
いつ振りに 見たろうか 陽射しが痛く眩しい
目の前のマシュマロが また今日も我慢できない

跳ねて 跳ねて
山を舞う如く越えてゆく
「あぁああぁあぁ!」 と
力を入れる度に 心の風邪
持つべくも在らざる物 強請ねだる分だけ 背丈が縮む
土をこてで均せば 落ち込むことはもうなかろう

浮かんで 浮かんで
海をふんわり叩き割る
「あぁああぁあぁ!」 と
旅路を急げば 心の殺気
毒々しい冷気が 福々ふくぶくしい体内を 這いながら溶かしてゆく
草と葉とが風に揺らぎ サワサワこすれ合っている

滑って 滑って
カタツムリが休むのをじっと観る
「あぁああぁあぁ!」 と
不自由を嗜めば 心の放電
手拍子が フラッシュバックしながら 反射した
ページを繰る毎 無知になる

転んで 転んで
虫食いが札束を貫く
「あぁああぁあぁ!」 と
膝から崩れ落ちたら 心の回生
時は 流れつづけて 忙しない 
聞いた振りして お金を殖やす

漕いで 漕いで
乳児のかく汗は濁らない
「あぁああぁあぁ!」 と
遺伝子はふやけて 心の変異
金縛りが おしゃぶりを 無碍むげにする
この眼が弾く筋肉は 丸でゴムの如し

伸びて 伸びて
刀が隙間に挟まり震える
「あぁああぁあぁ!」 と
不穏分子は遮られ 心の解毒
失敗した性交は 芳香にまぎれて ふにゃふにゃする
抑え切れない怒りやうらみは 精魂せいこんを分断して碁を

止まって 止まって
バックパックの背いた鋳物いものは欠けて振り切れる
「あぁああぁあぁ!」 と
煮え切らなくて 心の冷却
ねじれた軽合金は 糊熟こじゅくした枸橘からたちの実に頼りっきり
割れて飛んだ波の繁吹しぶきが バシャバシャと甘ったるく打ち付ける

ここから先は

0字

¥ 130

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?