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詩213 要らぬ心配

寒い平野のうえで
わたしはコートを着て黙っている、
寒さに耐えて

風になびく 心のひだは
ザラザラした寒さに
やがて剥がれ落ちてしまいそう

ハチドリのように
自由自在に
空へと飛び上がりたい

ジリジリと
低く聞こえる低周波の音は
救助の応援を求める無線の音だ

どこから発せられた電波か わからず
わたしは徐ろに辺りを見渡す

わたしの目には
小高い丘がゴソッと映ずるだけで
風は知らぬ顔で わたしの顔を撫でながら通り過ぎてゆく

ハチドリのように
好きなだけ蜜をなめて
1日を終えてみたい

羽を動かしつづけるハチドリの胸筋は
さぞかし立派なことだろう

筋肉が強張こわばって
上手く風をとらえられなくなりはしないか

耳が痒い。
電波の音が耳をかすめる度に
痒くなる


わたしは、
不定ふじょうな寒さに負けない。
耳をいじめる電波に負けない。
飛べないという自らの境遇に負けない。



寒い平野で
要らぬ心配をするわたし、
負けぬように ただ
自らを鼓舞していれば
それだけで
善い、
満たされる。

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