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詩360 短詩輯8

2 - 89 スマホを無表情で見詰める女の唇が赤い

2 - 90 歩き疲れてボーッとして、意識薄れて夢うつつ。刻一刻、絶対時ぜったいじが失われる

2 - 91 ピンクに染まった髪を棚引かせ、おにぎりを喰らう女 ──── 見上げた先で風に揺れる梢を、目で追いながら。上下左右するその像が、角膜,前房,瞳孔,水晶体,硝子体しょうしたいを通過して、イキイキとした網膜上に清らかに映じる。エレキを背負って、ベンチに腰掛け、一時いっとき・一服

2 - 92 カナリヤと悲しさが似ている。昨日どこかで聞いたような

2 - 93 フレディ・マーキュリーの歌声を聴き、田舎の散歩道を行く………愛犬を連れたその日々は、私の青春だった

2 - 94 寝癖を直す気にならない。君に会いに行く途中

2 - 95 時のまにまに。波の隨に。風の隨に。漂いすぎて目が回る

2 - 96 ふっくらしている。美味しそう………興奮する

2 - 97 ふっくらした山に触れ、快楽の海へ捩じ伏せて………ベッドに上がった。すぐ横になれるよ

2 - 98 旅のお供に焼肉のタレ。宝箱に閉じ込め隠し持つ。ステップに合わせて揺れる音。瓶からピチャピチャと

2 - 99 人権は護られるべきものでない、とする輩と対峙する。むっくと四肢、自リツする

2 - 100 アダルトチルドレンの自助グループに巣食い、安心に住まう。彼ら彼女らの言葉に、自己肯定する勇気を得る

3 - 2 ヘッドライトは生クリーム、テールライトは苺のムース:高速道路は流れるケーキ

3 - 3 自分を肯定できない ──── 自分を否定することなら、ずっと簡単なのに

3 - 4 今日もこれから職場へ向かう。朝のご飯は柿一個

3 - 5 アダルトチルドレン、自分のなかに揺るがせぬ決まりがある。それの破られることが、何よりの苦痛である

3 - 6 朝のせわしさに、昨夜の君との憩い、恋しくなる

3 - 7 誰かと、猛烈に話がしたい ──── 私の愛の在り処が忘れ去られる前に

3 - 8 今日も、着ている青シャツは、ボタンが一つ欠けたまま

3 - 9 カバンのなかを整理する。物を全部出して入れ直す。結局、紙クズ一つが減っただけ。それでもコレが、気持良い

3 - 10 誰からも通知が届かない。スマフォを見る必要なし

3 - 11 街中にはキレイな人がいっぱいいるのに、私はキレイじゃない。私だけ、違う

3 - 13 現在の所持金2,658円。給料日までのつつましやかな生活は、数的に制限される;今日は卵だけ買って帰った

3 - 14 朝起きて、隣に君がいる。それが、何よりの幸せ。君に、伝わっているかな

3 - 15 シンプルさとは、真似されやすいものなのか。個性はどこに、表せるのか

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