見出し画像

【歴史本の山を崩せ#027】『ルイ14世とリシュリュー』林田伸一

《ルイ14世はいかにして絶対王政の代表者となりえたか》

山川世界史リブレット人シリーズの一冊です。

ルイ14世といえばフランス史上の絶対王政を代表する王。
では、絶対王政という体制は彼自身が作りあげたものなのか…?
この本で彼とともに主人公となっているリシュリューという男に、その答えのカギがあります。

リシュリューはルイ14世の父であるルイ13世に仕えた宰相です。
威厳を備え、巧みな政治手腕と胆力をもって宮廷改革に臨み、絶対王政の土台を用意した人物です。
近代でもその名は戦艦のネームシップとされるほど。
彼が作りあげた土台があってこそ、ルイ14世が絶対王政の代表的君主として、歴史に名を刻むことができたといっても過言ではないでしょう。

歴史には時間の流れ、そして繋がりがあります。
古今東西、名君と称えられる偉大な事績や、暗君と蔑まれるような失策は数多くありますが、その多くが実際のところ、名君・暗君のみの功績・責任に帰せられるものではありません。
彼らがバトンを受け取る前に積み重ねられた土台の上に、彼らの成功・失敗が結果として表れていることが多いです。
ちょうど、このリシュリューとルイ14世のように。

そういった視点からも、単にルイ14世だけを主人公にしなかったこの本の長所が表れています。
時間の流れと、繋がりによって紡ぎだされる歴史叙述があります。

約90頁の前半でリシュリューの、後半でルイ14世の生涯を非常にコンパクトに読みやすく書かれています。

『ルイ14世とリシュリュー』
著者:林田伸一
出版:山川出版社(山川世界史リブレット人)
初版:2016年
定価:800円+税

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?