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ホラー映画メモ(2024年8月末~9月初)

最近観た映画について書いてみます。

①Poochandi(タミルホラー)Netflix
②Influencer(米ホラー)Amazon prime
③Nanny(米・アフリカホラー) Amazon prime
④Stree 2(ヒンディーホラー)インドの劇場
⑤Alien: Romulus(米SFホラー)インドの劇場

Poochandi

2022年公開、インド・マレーシア製作、タミル語
※Poosandi Varanのタイトルでインド公開
あらすじ
超自然現象や民話を調べる記者ムルガンは、マレーシアを訪れ、最近恐怖体験をしたという男、シャンカルを取材する。シャンカルは友人のグル、親戚のアンブと共にコインを使ってマリカと名乗る霊を呼び出したところ、次々と恐ろしいことが起きたと語り、ひどく怯える。やがてムルガン達はそのコインの出所とマリカの死の真相を探り、数年前にアンブにコインを売った、マリカの恋人ディーパクを訪ねるが…。

感想
インドのホラーって怖くないじゃないか!!と散々書いてきたが、これは怖く作られていたので満足した。マリカの死の真相や相次ぐ超常現象の描写が、マレーシアとインドにまたがるヒンドゥー・タミル人の雄大な歴史に流れ込み、見応えがあった。

怖い描写をストーリーとどう絡めるかが面白いホラー映画かどうかの分かれ目なんだね。それは、韓国のユーチューバーが日本のホラーについて語ったことでもあったけど。

Influencer

2022年、アメリカ製作
あらすじ
旅行ブロガーのマディソンは、旅先のタイでCWと名乗る女性と知り合う。美しい土地を回り、リッチなホテルに泊まった後、CWはマディソンを離れ小島に連れて行き、彼女を置き去りにしてしまう。

感想
外国に出たアメリカ人が如何にひどい目に遭うかという系譜のホラーとして観ると、悪役であるCWの側から物語と事件が展開していくのが変則的で面白かった。

CWに対し、「こんなやつ、とんでもない目に遭いやがれ」という観客の薄汚い欲望を煽られる。CWの背景や過去や動機は何一つ語られないからこそ、そのザマミロ展開を望んでしまうのだ。

旅先で人を信用してはいけませんね。

Nanny

2022年、アメリカ
あらすじ
シングルマザーのアイシャは、一人息子をふるさとのセネガルに残し、アメリカに移民、NYに息子を呼び寄せるため、ベビーシッター兼家政婦の仕事をしている。裕福なハヴ家の娘ローズの世話をする仕事を得たアイシャは、雇い主夫婦との関係や仕事にストレスを感じる。また、悪夢や幻覚に悩まされるようにもなった。

感想
アフリカの民話を題材にとり、夢か現か分からない映像がきれいだった。観た直後は「これで終わりなのかー」と軽く感じたが、その夜私もかなり重い内容(だったと思う)の夢を観たのでやっぱり心にずしんと来ていたみたい。

アイシャが見る精霊は、いい方法によっても、悪い方法によっても生きる力や励ましを与えてくれる存在なのだという。そこがとても面白かった。アイシャを待ち受ける試練は過酷だが、祖国を離れ、家族と離れ離れになってでも新しい社会で暮らすのだと覚悟を決めたら、周りの環境に呑まれて自分が誰なのかを忘れない限り、そのつらさに耐えねばならないのである。

本作は移民に対する差別を描いているわけではない。雇い主は時折支払いをすっぽかしたりするものの、あくまで対等な人間として向き合っているかのように演出されていた。当然のことながら両者の間には圧倒的な立場の違いがあるのだから、アイシャは個人として強くなる必要があると読めた。

白人で裕福なハヴ家の夫婦関係の中に様々なアメリカの今が滲んでいる気がした。MeToo時代を経ても尚、働く母親の苦しさとストレスは変わらず、写真家の夫は浮気を繰り返しているふしが見えるが、両親はそれぞれ娘ローズのことは愛しているのだ。

また、写真家の夫は先進国の都市暴動を撮影して社会派を気取っているわけだが、「暴動に理はあるのか」というような問いかけも出て来ていた(匂わせ程度だが)。

更に、夫の政治思想的な面での偽善性がさらりと浮き彫りにされる。暴動の中で撮られた黒人青年の写真を眺めながら得意げに「この人はもう亡くなったんだ」とにこにこしながらアイシャに説明する様はお見事。

ブラムハウスがゆっくり方向転換をしたいのがよく分かった。

Stree 2

 2024年、インド製作(ヒンディー語)
あらすじ
前作(2018年)の最後で彼女と別れ別れとなったヴィッキーは失意の日々を過ごしており、時折彼女の幻影を見ては落涙。そんなとき友人ビットゥの彼女が行方不明に。新たな怪異の出現に一同は再び終結、解決の道を探る。そこへ彼女が戻って来た!

感想
前作より予算もストーリーも拡大、最近公開された複数のホラーコメディ作品をまたぐ「モンスター・ユニバース」の一翼を担う作品で、現状、2024年のインド興行収入第二位。

『Shaitaan』と併せて二作のホラーがトップ10入りの快挙!めでたい!!今年はマラヤーラム映画『Bramayugam』もヒットしたし、ホラージャンルの記念すべき年として記憶することにする。

お笑いもロマンスもダンスもモンスターもバトルシーンも大物俳優のサプライズ登場もすべてが大盤振る舞いの娯楽大作で満足した。これこそボリウッドの喜び。作品の印象としては、1984年のアメリカにおける『ゴーストバスターズ』みたいな感じかもしれないね。

ダンスシーンの中ではタマンナーのこのシーンは画期的。女性のダンスを半裸の男性ダンサーがくねくね踊る!!!

どう見ても姐さんたち!!!!

このゲイネスをメジャー作品で取り入れた上、いいシーンに仕上がっているというのが素晴らしい。私もこのダンス真似してるもん(痩せたい)。

社会的な意味からも面白かった。

伝統的な衣装で暮らす中年以上の女性たちが祠で儀式をする横を、最新ファッションに身を包んだ若い女性たちが笑いながら通り過ぎる。二つのグループは完全に別の世界を生きているようにも見える。

また、その田舎町から「モダンな若い女性」がどんどんいなくなってしまうという状況を踏まえている。就職や進学、そして望む相手との結婚など、それが単なる口実であったとしても、女性には地元を出ていくメリットがあるのだろう。その現実を受け入れるよりも、彼女らは怪異にでも攫われたのだと解釈する方が「残された」地元社会や家族にとって受け入れやすいのかもしれない。

対する男性は、既存の社会システムのゆっくりとした変化の中で生きていても別に困らないため、却って時代に取り残されていく。おそらくは若いモダンな女性への反発も潜在的にあるのだろう。主人公達が、何となく冴えない男達なのも効いている。

映画の中では悪鬼に憑かれた男性たちが女性たちを家の中に押し込めようとするのだが、それは怪異にさせられたことであると同時に彼らの隠された一つの本音なのであろう。

そのような潜在的な葛藤を下敷きにしつつも最後は「インドの母親パワー」で押し切った。新しいものと古いものが混ざりながら共存したり、反発し合っている最新のインドの状況を反映しているものと思った。

シュラッダー・カプールは、バトルシーンもなかなかよかった。彼女ってダンスが男っぽいんだよね。もし次回作あるならば、もっとばっしばし戦った方がいいと思う。年取って貫禄出て来たし、かっこよく決まると思う。それでいて薄幸なボリウッドのハ・ジウォンな感じもあり。

日本なら木村多江のハ・ジウォンポジション。呪うわよ?

Alien: Romulus

2024年、アメリカ
あらすじ
ノストロモ号の事件からいくらか経った頃。ある植民星の若者達が、他の星に移住を画策、それに必要な冷凍睡眠ポッドを得るため、軌道上を漂う廃棄された宇宙ステーションに潜入する。ところがそこはエイリアンがひしめく地獄だった…。

感想
全てのエイリアンシリーズの集大成に相応しく、ファンを楽しませてくれる出色の出来の作品。フェデ・アルバレス監督の好きな「若造虐め」とそこからの脱却がエイリアンの攻撃や生態と共に描かれており、最後の最後まで飽きさせず、閉鎖空間の地獄絵図を楽しめる。あんまり感想は無いのだが、続編製作の可能性もあると見た。

書き出してみるとどの作品に思い入れがあるかがわかるね。

③と④が好きだったな。
①Poochandi(タミルホラー)💛💛
②Influencer(米ホラー)💛💛
③Nanny(米・アフリカホラー)💛💛💛💛
④Stree 2(ヒンディーホラー)💛💛💛💛
⑤Alien: Romulus(米SFホラー)💛💛💛

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