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勝手に今年の日本アカデミー賞最優秀賞決定。

※朝から興奮気味で目覚め、下記の内容をfacebookにひり出した。ごめん。他でも本作について書いたんだけど、内容重ならないから許して!

東京国際映画祭で昨日見た『ある職場』(2020年/舩橋淳)、私にとっては今年の日本映画というかここ数年の日本映画で最高の作品ではないかと感じた。

実際に起きたセクシャルハラスメントの事件をもとに、実際に言われたり聞いたセリフから再構成したと思われるドラマ。淡々と、日本人であれば当たり前だと思うような些細なことの積み重ねによって、絶望的でがんじがらめの中に落ちて行く女の社員を描きます。怖い。「会社なんてそんなもん。気にしたらダメ」と、個人の苦痛より会社の味方をする人が多い日本において、セクシャルハラスメントのみならず、パワーハラスメントが無くなる訳がない。我々一人一人が加担してるのだ。何なら被害者ですら問題の延長に加担してしまう矛盾。これが普通に起きている日本の日常こそがホラーだとちゃんと感じられるように描いてあった。

モリカケ問題とか、最近流行の学術会議の話とか、私はちゃんちゃらおかしい。国会で追及したり、マスコミは騒いでさぞ気持ちいいだろう。「忖度」という日本の職場の中にある皆が見ないフリしてる様々な慣例を探し当てたまではよかったのに、そのやり方こそが色んな人を苦境に追いやって苦しめている…ということを追及したマスコミも政治家も聞いたことがない。心底レベルが低いと軽蔑した。

もう本当の本当に支持政党が無い上、鬼滅の刃でも見るか、と思ってたら、ようやく見るに値する社会派日本映画が来た。あ、『新聞記者』?あれ観てない。アレも安倍政権叩いてれば気持ちいい人たちのための映画でしょ?馬鹿馬鹿しい。そんなの叩いても、セクシャルハラスメントやパワハラ、他にもある職場の中の不快な出来事…本作で出ているような男性社員の女性社員に対するつきまといとか…は無くならない。目ぇ覚まして?

日本映画の良さは日常の些細なことを丁寧に描くことにあるの。

ダイナミックな汚職事件とかはバブル期の伊丹十三で終わったの!!

社会派映画というのは、ときの政治家を叩けばいいのではないと思うよ。見てて誰もが加害者と被害者の気持ちが理解できて、観ててお腹痛くなるようなのが、社会派なんではないの。みんなやってることだからよくはならないよ、セクハラもパワハラも付き纏いもアウティングも、無くならないから我慢しようよ、暗い話やめようよ、そんなこと話すために集まったんじゃ無いんだから、もっと笑顔で、おじさんを利用してやればいいのよ…

その言葉をラストシーンに投げつけることのできるあなたがいる限り、日本的な職場の、極めて不均衡な感情労働の問題…これは仕事の業務内容と全く関係が無いのが面白いの…は改善されないばかりか再生産される。そういう痛さのある映画が、クラウドファウンディングで映画祭でしかお目にかかれないような国だから…映画の興行成績ナンバーワン映画が少年漫画原作のアニメっていう年が何年も続く。それで悪い事は何も無いが、高校生男子の一方的な恋愛映画しか無いから、そりゃあ当然、付きまといみたいな問題も治らないよね。だってそういうの持ち上げてるんだもん。最近のメジャーな日本映画は。一方的な好意が相手にとってはホラーだと想像できないのは単純に幼稚です。

それから、ゲイカップルが自然な感じで、むしろ癒し系として登場するが、彼らが問題になっているセクシャルハラスメントの問題に対して全く理解が無く、むしろ叩く側に回ってしまっていると描いたのは偉いと思った。彼女とゲイの立ち位置の温度差…カミングアウトが怖いとか言ってるゲイってちゃんちゃらおかしいわ、という感じで押し流されていく最後の方の怒涛の流れ。「アウティング…」と小さな声を出しても全く説得力がないそこがいい。だってゲイは所詮「男性」なんだもんね。クラウド・ファウンディングの中に結構著名な方のお名前を見て、そこはいい意味でえらいと思った。

本当に不快で怖い映画だったので、多分日本ではウケないでしょう。すごく残念。私は全力で推すが、今会社にいて苦しんでる人や苦しませている人にとっては観たくないだろう。だって毎日あの中で過ごしてるもんね。だから日本の大半の人は観ないふりをするだろう。いつもと同じように。

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