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家族ゲーム

家族カーストの中で、私は最下位だった。

単に2人兄妹の末っ子だから、ということなのかもしれない。
年子の兄は出来が良く、妹のほうは女だし、虚弱だし(確かに乳幼児の頃に命の火が危ういことがあったらしい。らしいって、自分では覚えていないもの。) 
空想癖のあるボーッとした子だった。

「自伝的なもの」の中でも書いたように思うが、出生の頃の私の入院騒ぎで、家族が散々だったということを聞かされて育った。
産後の母は倒れてしまい、その心身の負担がトラウマとなって、後年なにかと私に当たるのだと理解していた。
様々な経緯を経て、それは理解され、許し、浄化され、母はもうこの世にいない。

母が亡くなると同時に、四十を過ぎて自分も母になって、新たな親子関係を辿っていく中で、改めてなるほどと思うことも多々ある。


母と娘の関係性においては、思春期を迎えた娘と口喧嘩することはあるが、モヤモヤとした不安や違和感は特にないのだ。


ところが、パートナーシップにおいては、まあ、身から出たサビとは言え、裏切られっぱなしなのである。

まさに、思ってたんと違う、、、なのである。


当の本人と向き合おうにも、逃げるか、追い詰めると逆切れするかで、そちらへ向かうのはやめてしまった。
変えられるのは自分だけだと悟り、とことん自分に向き合い始めた。


母との確執の時にも、世代も価値観も違う母とはまともな話し合いにはならなくて、結局早々に家を出て自立し、2年ほど仕事以外は引きこもり、何をしていたかというと、そうとは気付かず自分と向き合うということをしていた。

そうして、何年か経て、私は母に謝ってもらうという通過儀礼が必要に思い、嘘でも演技でもいいから謝れと迫ったのである。

そう、ずっとずっと、母だけが敵だと思い込んでいたのだ。そこだけをクリアすれば、空が明るくなると思っていたのだ。

夫との関係を悩んでいると、妙なことに、父親と夫との共通点が多いことに気づき始めた。


なんてこった!
母との関係をクリアしたものとばかり思っていたが(だからこそ結婚を決意したのだ)
父親そっくりの相手を選んで、トレースしちゃってるじゃないか。

離婚、が何度も頭に浮かびながら、もう少し娘が大きくなるまでと、誤魔化しながら生活している、、、そう言われても否定できないのが現状だ。
表面上は言い争いすることもないし、狭い家なので極力場の空気が悪くならないように、時にはそれぞれが外で自分の時間を持つなどして、棲み分けをしている。


それがいいのか悪いのかわからないままに過ごしていると、最近、父親絡みのトラブルが増えた。

本人は至ってマイペースなのだが、一番近くに住んでいる動ける家族は私なので、何かと巻き込まれるのだ。
そんな中で、話す機会があって接していると、ラスボスはこの人なんじゃないかという気がしてきたのだ。

父は、穏やかで勤勉で、手を上げられたことはもちろん声を荒げられたこともない。
ヒステリックな母に叱られ時には叩かれたり外に締め出された時に、そっと家に入れてくれるのは父だった。
優しい父親、子供の頃はそう思っていた。

思春期になって、ちょっとした父の言動にイライラするようになった。思春期だから当たり前と言えばそうなのかもしれないが。

母が更年期を迎えた頃、ちょっとかわいそうと思えるぐらいにヒステリックになった母を、娘ではどうしようもないと悟った私は、彼女のパートナーである父に、病院に連れて行って欲しいと懇願したことがある。
父は、嵐が過ぎ去るのを待つようにジッとしてたら、その内治るからと言って逃げるようにどこかへ行った。
母が当たり散らすのは主に娘の私だった。
兄には絶対にしない。
父はほとんど家にいない。
つまり、私に生贄になれということか。


母親はわかりやすく今でいうところの毒親だったが、父親は一見優しくてよく働いて家族への責任を果たしているようで、実は事なかれ主義で、家族に対しても大した思い入れも何もないんじゃないか、、、この人も毒親じゃん、、、


両親ともにまったく当てにならないどころか、この人たちに自分の将来や人生をどうにかしてもらおうなどと思っていてはダメだ、自立しないと。
そう腹の底から感じた私は、おかげさまで早くから自立させてもらった、この点においては感謝している。

今から思えば、家を出てからの父親はまったく空気のように消えていた。
実家を離れてもなおキーキー言ってくる母親の影に完全に隠れて。

私が籍を入れた直後に、母は意識不明となり、その間に私の妊娠発覚、そのことを知らないままに他界した。
やがて娘が生まれ、兄も遅い結婚をし、兄夫婦、私家族、父で定期的に会う機会が増えた。
それまでは極力疎遠にしていたのだが、一人になった父をつい不憫に思い、家族ごっこを再開してしまったのだった。


そんな中で、母親の言っていたことと、父親の言うことが違っていたり、長年私についていた嘘がバレたり、また、家族カースト再開と言わんばかりに、私を下げるような発言をしたり、改めて父親というよりも、この人物という感じで客観的に、この人どうなの?と、思ってたんと違う感が増してきたのだ。


夫に対する感覚とまるで同じだ。


なんなんだ、これは。


2人とも、決して悪人ではない。
彼らなりに愛情も思いやりもある。
ただ、言えることは、まるで子供みたいだと言うことだろう。
母親を求める子供みたいなところがあるのだ。


母親に甘えられず、早くに自立せざるを得なかった私には、男性に対して母性を発揮するということは、なんかすごく腹が立つのである。
自分で立てよ!
私だってひとりで立ってきたんだよ!と。
しかもあんたらがしっかりせんから、おかーさんも私も泣いてきたんだろうが、、、


ああ、そうだそうだ。
そう叫んで泣きたい気分だ。


私はこの気持ちを、彼らに伝える気はない。
ただ、そうなんだと眺めていたい。
泣き終わったらさっぱりと、忘れようと思う。


ああなんと複雑で長いゲームだったんだろう。
もう、伏線は全部拾ったと思いたい。
そうして、このゲームは終わりにしよう。

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