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美しさを求めて、またヘンテコな旅に出る。



はじめに

思えば大学時代から随分と旅に出ていた。
所属していた大学合唱団のサークルでは夏に必ず2泊3日で学年で旅行に行くというお決まりがあった。仲間と岩手や静岡、石川なんかにぶらぶらと出かけたこともあったし、夏と春に1週間ずつの合宿(広義の意味で旅だと思う)にも行っていた。

ここまではまだ普通の旅をしていたと思う。

社会人になる前の最後の3日間、僕は逃げるように就職先の東京から離れ、新大阪を目指した。そこで自分の中での旅というテーマがガラッと変わってしまった。


学生時代最後の旅行

新大阪から大阪観光を始めたのだが、「せっかくなので」と関西出身の後輩に連絡を取ったところ、即座にディープな大阪情報がLINEになだれ込んできたのだ。しばらく後輩にラジコンで操作されるように、おすすめスポットを巡回し、観光ガイドに載っていないような日本橋(にっぽんばし)〜難波周辺の細か過ぎる魅力の数々に心が踊らされたのを覚えている。

「どうやらメジャーな僕は観光スポットだけに心を惹かれる訳ではないみたいだ」というのが自分の中での気付きだった。

その後、後輩と合流し道頓堀で夕陽を見ながら食べた激エモでめちゃ美味なたこ焼き。


翌日は後輩と別れて再び一人旅モードで奈良をぶらぶら。歩いていると後輩から「大和西大寺駅は絶対に見てほしいし、平城宮跡(平城京の跡地)にも行ってほしいです。551の豚まんは絶対に食べてください!」と連絡が入る。

律儀にアドバイスを守り、大和西大寺駅の近鉄デパートで豚まんを購入。平城宮跡まで散歩して豚まんをパクり。どでかい原っぱで教科書でしか知らなかった奈良時代を感じながら食べる豚まんがもう異様な美味しさ。こんなヘンテコで楽しい観光を他に誰がやっているんだろう。そう思うと不思議と笑みが浮かんだ。

平城京の跡地のど真ん中を貫いて走る近鉄電車。スケールの大きさが好き。

その後は案内されるがままに若草山へ。奈良市内について最初にやることがハイキングで良いのかなと思いつつ登ってみると、これまた素敵な景色で楽しくなる。

まずは奈良市内が一望できるところに案内して、その後じっくり観光を楽しんでもらおう。
とか後輩は考えていたのだろうか。…たぶん考えてないと思う。

奈良を観光した後は特急に乗って三重に向かい、社会人になる前日(3月31日)の朝を伊勢市で迎え、伊勢神宮を参拝した後は名古屋経由で実家に帰宅。

この2泊3日でヘンテコな旅の面白さに気付いた僕は、最後の最後まで学生でいられたことにも満足して(何かに一矢報いてやった感があった)、翌日にはスーツを着て入社式に参加した。若さってすごい。


またヘンテコな旅に出よう

社会人になってからは家族を旅行に連れていったり、サークルの仲間とも定期的に出かけたりしているが、一人旅となると「閉塞感を打ち破りたい」とか「現状を見つめ直すために少し自分を違う場所に置いてみたい」といった、楽しみたいという動機からは少し離れたきっかけによるものが多かった。(結果的に楽しんで来ることにはなるのだけど)

色々なことが一杯一杯になってきたタイミングで、絶対行くスポットを一箇所だけ決めて、後は心惹かれるままにぶらぶらする。必ずメジャーなスポットに行くわけでもない旅のスタイルはあの2泊3日の関西旅行の延長線上にあると思う。

「(他人にとって)くだらなくても自分が素敵だなと思える心を失っていないか」

自分のなかにある「美しいものを見つめるまなざし」や「バカバカしいことをバカバカしく楽しむためのものさし」の状態を確認することが、一人旅の目的となっていた。もしかすると、確認だけでなく自己の回復のような意味合いもあるのだろう。それは誰かが羨むような「映える旅行」とは対極的なところに位置するのかもしれない。

人生観を変えたいとかそんな大それたものではなく、僕にとっての一人旅は不足していたものを補って、有り余っていたものを削ぎ落とす。きっと、それだけのものだ。

昨年末から現在にかけて5ヶ月ほど、(自分で言うのもあれだが)とにかくがむしゃらに働いていた。担当する仕事や考えるテーマはどんどん増えるなかで、自分の生活を蔑ろにして向き合わなければいけないこともあった。

「少し疲れたけど、君は変わらずに自分自身でいられているかい?」
そんな問いかけをしながら、そろそろまたヘンテコな旅に出たい。



おまけ:旅先で見つけた美しいもの


高知城で出会った野良猫の瞳(この後からあげ棒の取り合いになりケンカ)


秋晴れの淡路島(岩屋港の防波堤にて)


22時、誰もいない東大寺二月堂


20年ぶりに再会したゴーヤーマン(国際通り)


三崎で立ち寄った中華料理屋さん


仏様の生まれ変わりみたいなあほあほな子供(善光寺)

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