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ほんのり創作を

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現実と創作のはざま 全てが未完成
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隠しきれない04

隠しきれない04

バーを出て急に喧騒から隔離されたような廊下を歩く。

はじめて自分の好意を意識したのはあのとき。よく覚えている。

職場が同じになってはじめの頃、フォンさんに業務を教わることが多かった。自然に二人で話す時間も多くなった。

館内ではスタッフ同士が大声で話さないよう控えにしているので、ついつい歩きながらの質問が聞き取れなかったらしい。

そのときの、その仕草。
背が高い人特有の、相手の顔の高さまで耳

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隠しきれない03

隠しきれない03

職場では内線をかけることが多い
受付スタッフやカウンタースタッフなど、基本的にその場を動けないことが多いためだ

彼女へ内線をかけたときの、あの電話口の緊張した声色
そして名乗った電話の相手が自分だと分かったときの、ふわっと吐息が聞こえてくるかと思うほどの安心感

そんなとき自分は絶対に口許が緩んでいる

そんな反応、自分にだけだろうか
きっとそんなはずはないというのにほんのり期待してしまう

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隠しきれない02

隠しきれない02

「あーきたきた!こちらでーす」

「おつかれさまです」

「じゃあまた乾杯しましょうか〜」

とりあえずビールを2つ頼んで、席に着く。
隣室で泊まっている花さんには、行くとき声かけてもらえますかとお願いしていた。

私にはこういうところがある。
ひとりでどこにでも行けるのに、他人に任せてしまうズルいところが。

ホテル内のバーなので、おおよその時間を決めて直接お店に集まり、自由に飲み始めるスタイル

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隠しきれない01

隠しきれない01

彼女がはじめて挨拶に来たときのことをよく思い出す

「精進します」
と言っていた
たぶん緊張していたんだと思う

「自分あの…中国の方の…」
「いや…あ…フォンです、よろしくお願いします」

みたいな挨拶をしたと思う
ぶわっと顔が熱くなったことしか覚えていない

あれから2年経って同じ場所で働くようになった

先月の納涼会の前、明日の飲み会行くんですか、とつい声をかけてしまった
いやたぶんハッキリ

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隠しきれない00

隠しきれない00

「ではまたのちほどー」

バタンガチャン、というドアが閉まる音とオートロックが閉まる音がエコーのように続いている。
いい年した大人だけの、仕事でのホテル泊はある意味で気が楽で良い。各々シングルルームに隠れる。夕食・朝食もつき、ホテル内のプレゼンホールに終日通い詰める。
息が詰まる、という同僚もいるが、私はホテルから一歩も出ずにすべてが済んでしまう環境がなかなかに好きだ。職場の人たちが一緒だという緊

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お客様は大泥棒_02

お客様は大泥棒_02

また会った
彼女もすぐに私に気が付いた

定期的に通っている産婦人科からの帰り
彼女には私の姿がどう映っているっているのだろうか

コンビニとファミレスの前を素通りするバス停から乗ってきて
大きな駅まで行かずに早々に降りていく私を

「前に話したときのことなんですけど」

急に以前の会話の続きを始められると思ったほど
私が彼女のことをよく覚えていることを彼女が感じ取ったことを肌で感じた

「どんな

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魔法少女にあこがれて

魔法少女にあこがれて

誰にも見えない、わたしにしか見えていない
自分の頭上近くを飛び回る妖精
わたしの話し相手

そんな小さな妖精を伴って日々歩いていた
自然と口元がゆるみ、周りを見渡したくなる

一緒に空を飛べたらいいのにといつも願っていた
ふわふわでうすい羽をキラキラさせながら自由に

ずっと忘れていた
あの妖精ちゃんはなんだったのだろう
思春期の私の頭の中にいた妖精ちゃん
具体的な思い出があるわけではない
けど密

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お客様は大泥棒_01

お客様は大泥棒_01

通院の帰りのバスの中だった
何度目かのバスの中で
彼女は営業をしていると私に打ち明けた
きっかけは私が新しい職場への不安を口にしたことだった

私も昔営業してましたよ、と言いつつ
どんな営業してるんですか?と話題をふる

泥棒を職業にしてる人が顧客の営業をしてるんです
と彼女は言った
それも結構大きめな規模の泥棒をしている方を

不覚にも興味を持ってしまった

それ以上のことは聞けないまま、先にバ

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出発前のディベートパーティ

出発前のディベートパーティ

実物は触れた瞬間に溶けた
パーティは立食だ
ピンヒールが光っている
こっちだって長い間我慢していた
腰に手を当てる特権を持ちながら

姿勢を保ってきた腰は
唇に触れられた瞬間に保っていられなくなった
身体が溶けるのと同時に視界が歪む
もうだめだ
ずっと耐えていたのに
こっちだってずっと甘えたかった
ピンヒールもシャンパングラスも投げ捨てて

一応ポーズとして驚いていることにしているが
さっきお手

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15年久しい夢十夜

15年久しい夢十夜

こんな夢をみた。

あ、、忘れた、、
昔の親友はなんと言った??覚えているのは、もしかして私は嫉妬しているのか?という思い。思い出したい。だからできるだけ早く書き始めようと思ったのに、十分早く書き始めたと思ったのに。

思い出した。
昔の親友は私のクラス、同じクラスだけど後輩という謎、のとても美人な新入生と仲良くなれて嬉しいと言っていた。美人な新入生には姉がいて、もちろんその姉もとても美人で周囲の

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